第178話 襲撃と、毒魔法の実戦と、お花摘み
途中、先頭を行くマイラが立ち止まる。
霧で方向を見失ったか。
「どうした」
「霧に変な臭いが混ざっている」
「【毒感知】。おお、毒があるな」
「私はゲームの中止を知らせてくる」
審判役の講師が俺達から離れた。
講師の事は放っておこう。
俺は全方位バリアと空気タンクの魔道具を発動させた。
「そこっ」
マイラが投げナイフを投げる。
どさっと何かが倒れる音がした。
「どうやら、囲まれましたね」
レクティがそう言って、俺の後ろに背中合わせに立つ。
「見えないんじゃ、私の出番はなさそう」
セレンがそう言って、スペルブックを開いて構えた。
マイラが投げナイフを次々に投げる。
奴らは霧の効果がないと知って、霧を辞めた。
やっぱりな、ペストマスクに白衣の奴らだ。
前と違っていたのは、ペストマスクが白く塗られていた。
保護色のつもりらしい。
見えていればこちらの物。
腸内細菌を毒に変える魔道具発動。
白衣の一人が腹を押さえ倒れた。
「食中毒か? 体調管理出来ない奴など要らん。よし総攻撃だ」
白衣達は筒を取り出す。
吹き矢か。
「【風圧】」
魔法の風で吹き矢が発射される。
マイラは器用に全てをよけていた。
セレンとレクティと俺はバリアの魔道具で無傷だ。
「痛っ」
セレンが顔をしかめる。
足を持ち上げると靴にまきびしのような物が刺さっている。
セレンがだらだらと汗を流す。
毒排出の魔道具が上手く作用しているらしい。
「おい、毒に発汗作用などあったか?」
「いいや。特異体質だろう」
「毒も効いてないようだぞ」
話しながらも白衣達は吹き矢に弾を込めている。
俺は腸内細菌の魔道具を何度も発動させた。
マイラはというと接近戦に移っている。
「くそっ、集団食中毒か。何でこんなについてないんだ」
セレンは石を頭上高く打ち上げ、隕石のように降らせた。
ほどなくして白衣の男達は全員が死んだ。
セレンを治療してから、俺達は先を急いだ。
拠点に戻ると既に戦闘の真っ最中だ。
白衣の男達の死骸が至る所にある。
霧があるので白衣がどれだけいるか分からない。
リニアは霧の中で戦っているらしい。
戦闘音がする。
アキシャルが魔法で薔薇を出して白衣達を絡めとっている。
エミッタが動けなくなった男達を爆発の魔法で止めを刺していた。
サイリスが動き回って吠える。
そうするとその場所にアキシャルが薔薇を出して白衣の男を絡めとる。
リニアはサイリスを持って来てたんだな。
サイリスは呼吸してないから、鞄に押し込めても窒息しない。
毒は効かないし、活躍したのだろう。
霧もサイリスには関係ないらしい。
匂いを感知する魔道具は優秀だからな。
俺は絡めとった白衣の止めを腸内細菌の魔道具で刺した。
マイラも霧の中で戦闘している。
セレンとレクティは防御に徹するようだ。
セレンは石を浮かべたまま待機している。
レクティは優雅にお茶を飲んでいた。
突風で霧を晴らす事も考えたが、発生源を止めないと焼け石に水だろうな。
マイラとリニアに下手な援護は邪魔になるだけだろう。
止めを刺す作業だけでいいか。
リニアが物凄い勢いで戻ってきた。
残像も見えない。
風が吹いたと思ったら、リニアが汗をだらだら流して、内股になってもじもじしてる。
ぼとりと石が降って来た。
「おい、セレン。危ないじゃないか」
セレンも内股になってもじもじしている。
「二人とも具合が悪いのか。医者じゃないけど診察してやろうか」
「察して、お願い」
絞り出すような、リニアの声。
そうか、毒排出に汗だけでなくおしっこも含めたから。
「大木の裏に行けよ」
「うっ、うー。覗いたら殺すから」
「同文」
そう言って二人は大木の後ろに行った。
リニアは毒を食らったのか。
すっきりした、顔でリニアとセレンが戻ってくる。
「バリアは発動してなかったのか」
「あんなの邪魔よ」
「命は大事にしろよ。お前だけの命じゃない」
「分かってる」
「そういう態度が、いけないのですよ」
レクティに咎められた。
「ええと何が」
「戦闘中に命を大事にしろよなんて言われたら、気に掛けてくれてるんだな。好きなのかもと思ってしまいます」
「大げさだよ」
「私、戦ってくる」
そういうと少し赤い顔をしたリニアは霧の中に消えて行った。
ほどなくして決着はついたようだ。
マイラとリニアが帰ってきた。
霧も晴れたようだし終わったな。
「サイリスは優秀なのだ」
エミッタがサイリスを撫でている。
ダイナが死体を始末し始めた。
魔法で埋めてしまうらしい。
後片付けが終わった頃、審判役の講師が戻って来て、ゲームの続行が伝えられた。
襲われたのは俺達だけだったようだ。
ゲームはもちろん勝った。
マイラとリニアは反則だからな。
それにしても白衣の奴ら、懲りないな。
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