第177話 情報と、小屋襲撃と、霧
拠点の情報をいくつか持ち帰って、マイラとリニアが帰って来た。
一番手ごわいのは、使ってない猟師小屋を拠点にしているグループだ。
容易いのは常に移動しているグループ。
だが、見つけた位置にはもういない。
ここは間をとって、樹を拠点としているグループか。
「一番手ごわいのから、攻略するのだ」
エミッタの指示は、そういう事だった。
まあ良いか。
別に命が掛かっているわけじゃない。
失敗してもそれはそれで楽しい。
「襲撃メンバーはどうするんだ?」
「道案内にマイラ君。攻撃役の3人には全員、行ってもらうのだ」
順当だな。
マイラの道案内で猟師小屋を目指す。
猟師小屋がなぜ難敵かというと、視認できない場所での魔法は維持が難しいからだ。
四方を囲まれた室内は良い盾になる。
攻撃する為に窓やドアが開いているし、スナイパーを屋根に配置出来たりする。
現場につくとまずは観察だ。
やっぱり屋根に人が配置してある。
腹ばいになっているので、胸の位置の的は狙えない。
頭に付けた的だけだ。
格闘は許されている。
接近戦で起こして胸の的を射抜くのはありだ。
だが、近づくまでに蜂の巣にされるのは、目に見えている。
「魔法を遠隔起動させましょう」
レクティがそう提案。
遠隔起動とは魔力の塊を遠方に移動して、そこでいきなり魔法を発動する事だ。
やられた側はいきなり魔法が目前に現れる。
ただし、欠点もある。
魔力の塊の移動が遅いのだ。
なので、奇襲にしか使えない。
「目標は?」
俺が聞くと。
「ドアと窓と屋根の狙撃手、全部いっぺんにやりましょう」
そうレクティが答えた。
「派手でいいな」
セレンが賛成。
「宣戦布告は盛大にかます。そうすると相手はビビる。スラムの法則」
マイラも賛成のようだ。
レクティが指揮を執る。
俺達は各場所に魔力を忍ばせた。
「いま!」
合図と共に魔法が起動する。
俺の魔力は窓の前で光になって飛び込んでいく。
セレンの魔力はスナイパーの頭上にあったらしい。
頭上から光になってスナイパーを襲う。
マイラの魔力は光になってドアの入口から飛び込んだ。
「敵襲!」
「くそっ、やられた」
屋根のスナイパーが脱落。
頭上からの攻撃が見えなかったらしい。
窓とドアから光球が撃ち出される。
「【水盾】」
俺達は盾を出して光球を防いだ。
ここからが問題だ。
いや手はある。
ちょっとしたフラッシュの魔法を室内に放り込めば事足りる。
けど、これはプログラム的魔法の効率ありきだ。
力技というより他はない。
アンフェアだ。
「セレンがありったけの魔力を使い、光を室内で発生してもらう。どうだ」
「力技ですね。それですとセレンさんがアウトになったのと同じです。それよりも盾を維持して、壁に張り付くのです。それから魔法で壁に穴を開けましょう。中の様子が見えるはずです」
「張り付くまでが至難だな。まあでも方法はある」
俺は飛ぶ板を出してみんなを乗せた。
その上で腹ばいになり、滑るように近づいた。
頭だけ守れば良いので、だれ一人欠ける事無く壁に張り付けた。
ドリルの魔法で壁に穴を開ける。
レクティはそれを覗き込み、手で合図した。
攻撃しようと窓から顔を出した、敵に至近距離から光球を浴びせる。
「くそう、やられた」
二人目脱落だ。
レクティが残り3人とハンドサインを出す。
敵は打って出るようだ。
ドアの前に3人が集まった。
出てくるタイミングを合図されたので、俺とマイラとセレンが光球を浴びせる。
ドンピシャだ。
3人ともアウトになった。
室内に入り旗を取る。
「穴を開けて観察してやがったのかよ。油断したぜ」
覗き穴の前にいるレクティを見て、敵がそう感想を漏らした。
小屋に頼りすぎなんだよ。
あれっ、霧が出て来たな。
嫌な予感がしたので、毒感知を使ったが、毒ではなかった。
でも、霧が出る様な天気じゃないはずだ。
生徒が魔法を使ったにしては、大規模すぎる。
嫌な感じだ。
たぶん白衣の連中の仕業だな。
そんな予感がした。
リニアが危ない。
早く拠点に戻らないと。
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