第176話 模擬戦のルールと、開始と、エミッタ勲章

 模擬実戦の為に、王都近くの森に集合した。

 ルールを説明すると、魔法は光魔法しか使ってはいけない。

 頭と胸に光に反応する魔道具の的を付けられ、これに光を当てられるとアウトだ。

 死んだ者扱いになる。

 どれぐらいの光に反応するかと言えば、懐中電灯を至近距離で当てたぐらいの光に反応する。

 太陽光にも反応するので、この葉の影から出る時は要注意だ。


 光の魔法は、進むのが遅い。

 なぜかと言うと光そのものは早いのだが、光源を移動する魔法が遅いというべきだろう。

 風や1Gぐらいの重力でも光源は動かない。


 動かすには魔法そのものを動かす必要がある。

 この魔法を動かすのが遅いのだ。

 今回、レーザーは使わない。

 ズルすると面白くないからだ。


 攻撃に関してはこのぐらいで良いだろう。

 防御だが、水の壁を作るのは許可されている。

 水の盾も同様だ。


 水での防御は維持も大変だし、体が突き抜けるから、突入の防御にはならない。

 あくまで光を防ぐだけだ。

 黒い色の水で魔法を構成するのが良いらしい。


 そして、チーム戦で争うのだが、本拠地に旗があって取られると、大幅マイナスポイントだ。

 逆に取った側は、大幅プラスである。


 ルールはこんなかな。


「ではおも研チーム、集まるのだ」


 俺達はエミッタの下に集まった。

 リニアがやけに女性が持つには大きい鞄を持っている。

 何が入っているんだろう。

 持ち物検査で引っ掛からなかったという事は、罠の類ではないのだろう。

 モンスターが出る可能性もあるので、人に使わなければ武器の使用は許されている。


「私とアキシャル君が拠点防御。マイラ君とリニア君が斥候。タイト君、レクティ君、セレン君が攻撃役だ。それでいいかね?」


 反対意見は出ないようだ。

 やがて講師が開始の合図を出した。

 まだ戦闘は開始されない。

 30分後だ。

 それまでに拠点を定める。


 俺達は魔法陣腕時計の時刻を合わせた。

 チームにひとりずつ講師が付いてくる。

 審判役だ。


 俺達は良さそうな地形を目指して歩き始めた。

 30分で拠点の地を決めないといけない。

 もちろん旗があるところが拠点で、常に移動してても良い。

 だが、守り易い場所を探す方が勝率は高いらしい。


「あそこなんかどうだね」


 エミッタが指差した所は大木があるところだった。

 大木を背に陣を設置するつもりらしい。


「蔦で作った縄梯子を枝に掛けたらどうですか」


 レクティがそう提案した。

 枝の上から狙撃するつもりらしい。


「ふむ良いのだ」


「接近を阻止する為にいばらを刈って、集めておいたら」


 俺はそう提案した。

 その場にある物を利用するのはルール上問題ない。


「見晴らしを良くする為に、ある程度樹を倒してしまいましょう。私、やりますよ」


 そうリニアが提案する。


「みんな素晴らしいのだ。良いと思う事はやってくれたまえ」


 俺達は拠点を整備した。

 リニアが引き抜いた木は、拠点の前に置いてバリケードにした。

 隠れ撃つのにもちょうど良い。

 そんな事をしている間に30分は過ぎてしまった。


「では、マイラ君、リニア君、敵の拠点の偵察を頼むのだ」


 マイラとリニアが偵察に出た。

 俺は光魔法の試し撃ちをする事にした。


「【光球】」


 光の球がのろのろと進んで行く。

 野球のピッチャーの球より遅い。

 こんなの当たるか。


 物量で押し切る事をすれば、楽勝なのは分かっている。

 でもそれじゃ楽しくない。

 1000発もいっぺんに撃ったら反則だろう。

 これは模擬戦だから、チートはなしだ。


「【水盾】」


 次は盾を試す。

 黒い泥が混じった水の盾が出来上がる。


「レクティ、光魔法を撃ってくれ」

「行きますよ。【光球】」


 光が水の盾に当たり消える。

 水で光が消されたわけではない。

 二つの魔力が反発して消えたのだ。


 もちろん光の魔法の方が強ければ、水の盾は制御できなくなって地面に落ちる。

 水の盾は術者の近くにあるので、魔力の供給の面で言えば明らかに有利だ。

 大抵は水の盾の方が勝つ。

 至近距離で光魔法を撃てばこの限りではないが。


 だいたい把握は終わった。

 後はマイラとリニアの帰りを待つだけだ。

 二人は素早いから、光球を当てられてアウトにはならないだろう。


 遠くで鳥が羽ばたいた。

 俺はその方向に意識を向けた。

 樹の間に服の色が見えた。

 マイラとリニアのものではない。


「【誘導光球】」


 光が吸い込まれるように森に入って行く。


「くそっ、アウトになった!」


 声が聞こえた。

 他のチームの斥候役らしい。


「タイト君、あっぱれなのだ。エミッタ勲章を授けよう」


 エミッタから紙で出来た勲章をもらう。

 ピンで服に止めた。

 こういうゲームも楽しいな。

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