第166話 襲撃と、恋人岬と、ペットの謎

 暗闇の中を物凄い勢いで何かが動いている。

 風が止んだと思ったら、仮面の男達は全員倒れていた。

 息のある奴にダイナが止めを刺していく。


「やったのは、リラだよ」


 さすがマイラ、夜でもリラの動きが見えているらしい。

 さあ寝ようか。

 テントに入ると続いてマイラが入ってきて抱きついた。

 ちょっと!

 まあいいか。

 お休み。


 いつの間にか朝になり死体は消えていた。

 たぶんダイナが所持品を検めてから、海に流したのだろう。


 みんなが起きてきて、ダイナがベーコンを焼く匂いが辺りに立ち込めた。

 レクティがスープを作る。

 近所の市場で貝を買ってきたらしい。


 リラは相変わらず10人前ぐらい食べる。

 俺はリラの愛しい人が誰か気になっていたが、聞けないでいた。

 マイラが俺の脇腹をつねる。

 リラを見すぎだって事ね。

 俺はリラから視線を外した。


 リラの愛しい人の名前が分かるようなイベントはないだろうか。

 あればエミッタに相談するのに。

 エミッタなら乗り気になるはずだ。


「レクティ、頼みがある。恋人岬というのをでっち上げてくれ」

「ちょっと惹かれるそれは何です?」

「何でも良いんだが、岬に恋人の名前と自分の名前を書いて物を納めるんだ。そうすると結ばれるという設定だ」

「誰かの恋人を知りたいのですか?」

「ああ、リラの想い人を知りたい」


「なるほど。密偵に手配させてみます」

「頼むよ」


 俺はエミッタの所に行ってこう言った。


「恋人岬ってのがあるらしいぞ。意中の相手の名前と、自分の名前を書いたある物を納めると、結ばれるらしい。レクティが市場で聞き込んだ」

「面白いのだ。みんな、恋人岬に行くのだ!」


 しばらく経って、レクティから準備が出来たと耳打ちがあった。

 レクティの案内で岬に行く。

 細い道を上がり断崖絶壁に出る。

 木が二本植えてあって、その間に鎖といくつもの鍵が付いていた。

 木の植え替えた跡も隠してあるし、鎖と鍵もさび付いている。

 こんな古いのどこから持って来たんだ。

 レクティのところの密偵は優秀だな。


 鍵を見ると名前が二つ書いてある。

 鎖と鍵とはなんか束縛されそうだ。

 偽物だからまあいいか。


 みんながレクティが用意してくれた鍵に名前を書く。

 俺はマイラと自分の名前を書いた。


「わたくしの名前も書いて下さいませ」


 レクティにせがまれ、レクティの名前も書く。

 鎖に鍵を取り付ける。

 俺は何気ないふりでその場を後にした。


 喫茶店に入り、お茶を注文する。

 レクティが中座してしばらくして帰って来た、

 そして、俺に耳打ちしてくる。


「リラさんのお相手はあなたです。ちなみにセレンさんのお相手もあなたです。もてもてですね」



 そんな馬鹿な。

 確かに君を守るなんて言われたら、告白だと勘違いするよな。

 でもリラから告白されて俺はオッケーしたわけではない。

 愛しいあなたには、あたらない気がする。

 それに現在の俺は窮地でも何でない。


 もしかして、愛しいあなたというのは家族にあてた物か。

 それなら分かる。

 でもリラは孤児だ。

 本当の名前だと睨んでいる人物も孤児だ。


 守りたい家族がいるのか。

 孤児院での妹分か弟分か。

 分からないな。


「それとエミッタさんはアキシャルさんでした。ダイナさんはエレクです」


 ダイナらしいな。

 エレクを書くなんて。

 待てよ。

 愛しいあなたはペットかも知れない。

 ペットゴーレムを作りたがってた。

 前にペットを飼っていたのかも。


「リラ、もしかして前にペットを飼っていたか?」

「ううん、家族ならいたよ」

「すまん、ペットは家族だよな」

「きゃは、いいの」


 やっぱりだ。

 もう少し踏み込んでみるか。


「その家族はどうなったんだ」

「絶対に出られない檻の中。でもいいの。いつでも会えるから」

「そうか解き放たれてリラと一緒に散歩できるといいな」

「うん」


 謎が解けたような気がする。

 リラのペットはどこにいるんだろう。

 仮面の男達に捕まっているのか?

 いいや、今は仲違いしているはずだ。

 何時でも会えるか。

 やっぱり謎だな。


 レクティにリラのペットの情報を集めるように言っておこう。

 何か分かるかも知れない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る