第165話 海と、メッセージ入りの瓶と、敵襲

 魔法陣ラジオでアムリタの情報を探す広告が流れた。

 レクティに聞いたところ沢山の情報が集まったらしい。

 アムリタって確かインドの神話だよな。

 どうも胡散臭い。

 案の定集まった情報は海の底にあるという話だ。

 海底が深くなければ、重力で海水を持ち上げて、海の底は拝めるけど、ガセだろう。


 過去に転生者がいた事は間違いない。

 そいつは神話とかに詳しかったみたいだ。

 海は楽しいから行く事にするがな。

 ちなみにアキシャルはランシェに保護されている。


 浄化の魔道具はリラにとって、対症療法にしかならないみたいだ。

 常に治療方法を求めているらしい。

 魔導師の動きは沈静化してるとランシェが報せてきた。

 その分、レジスタは活発に動いている。


 空飛ぶ板に乗って海まで、ひとっ飛び。


「青い空、打ち寄せる白波。これで夏なら文句ないのだ」


 エミッタが残念そうだが、まだ夏は遠い。

 みんな波打ち際で波と戯れている。


 ちゃっちゃとやりますか。

 重力の魔法で海の底を見る。

 それらしい物はない。


 発見出来たら、取るのが一苦労だったから、残念ではない。

 なぜなら重力をしている間は人間も宙に浮かぶからだ。

 海の底のお宝を取るなら、空気のボールを作って、潜らないといけない。

 まだ冷たい海に入るのは勘弁してほしいと思う。


 男は俺だけなので、果物を買ってきて、身体強化魔法を使って絞る。


「美味しいね」


 とマイラ。


「遊んだあとのジュースは格別なのだ。飲み終わったら、お宝を探すのだ。砂浜にはお宝が眠っているのだ」


 砂浜にあるのは瓶の欠片とか、貝殻ぐらいだろう。

 あるとすれば銅貨ぐらいか。


 みんなで、砂をかき分けて何かないか探す。

 俺も童心に帰って砂と戯れた。


 10分ほどやって飽きた。

 塩を作る魔法は前に作ったから、それで塩を作る。

 その塩使い、砂浜に白亜はくあの城を作ってやった。


「見つけた」


 マイラが何か見つけたようだ。

 どれどれと見に行くとあったのは栓をした陶器の瓶だった。


「早く開けるのだ」


 マイラが栓を抜くと、中には羊皮紙が入っていた。

 ええと、『ここに生きた証を残す。ルーフ』とある。


「面白いのだ。我々も真似してやるのだ」


 エミッタが面白がって真似をする事になった。

 どんな言葉を書いて入れよう。

 俺は『プログラム的魔法は偉大だ。タイト』と日本語で書いて入れた。


 みんなが入れ終わって、砂に埋めた。

 いつか誰かがこれを読むのだろうか。


 今日は砂浜でキャンプだ。

 持って来たテントを張って、焚火の用意をする。

 魔道具の警報も設置した。


 焚火に火を点け、魚に塩をすり込み、串に刺して炙る。

 魚から油が出て、香ばしい匂いが立ち込め始めた。

 焼けたな。

 はふはふ言いながら魚を齧る。

 みんな良い笑顔をしている。


 やっぱりみんなで行く旅行は楽しいな。

 アキシャルは残念だった。


 日が暮れたのでテントに入る。

 夜中、俺は起き出した。

 エッチな事をする為じゃない。

 どうしてもリラがなんて書いたのか気になったのだ。


 赤外線の魔道具を使い、夜の砂浜で瓶を掘った。

 リラの瓶は覚えている。

 たしか赤い丸がついた奴だ。


 他の人間に見つからないように掘り出す事が出来た。


「にゃあお」


 後ろから猫の鳴き声が聞こえた。

 振り返ったら、マイラとダイナが立っていた。

 この二人は気配に敏感だからな。

 やっぱり気がついたか。


「しーっ」


 俺は指を唇に当てた。

 二人が頷いたのが分かった。


 リラの書いた言葉は、『愛しいあなた。どうか生き残って』だった。

 むっ、アキシャルの事じゃないよな。

 俺の事でもないようだ。

 リラには想い人がいるのか。

 謎だ。

 まだリラには謎が多い。


 目的は達したので、瓶をまた埋めておいた。


「汗かいている。拭いてあげる」


 マイラがタオルで俺の顔を拭く。


「おっと」


 掘り返したので、砂に柔らかい部分が出来て、俺は足を取られた。

 マイラと抱き合う形になった。

 不味い。

 いろいろと不味い。


「いちゃついているところ、申し訳ないのですが、敵襲です」


 ダイナがそう言った。


「モンスター?」

「いいえ、人間です」


 俺にも誰かが歩いてくるのが分かった。

 顔には仮面がある。

 またこいつらか。

 しつこい奴らだ。

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