第161話 花火と、喧嘩と、次の目標

 剣技大会はそっちのけでおも研は花火の用意で大忙し。


「試合終わったよ」


 マイラが報告に駆け込んでくる。


「分かった。打ち上げ。着火」


 俺は花火を持ち上げる魔法で空高く打ち上げた。

 誘導弾の火球で火を点ける。

 花火は爆発。

 落下傘がふわふわと落ちていく。

 上空は風があるのか、少し流される。

 子供達が、落下傘を追いかけ始めた。

 学園の生徒にも追いかけている者がいるようだ。

 年齢制限を掛ければ良かったかな。


 落下傘は屋根に落ちたようだ。

 危険だな。

 これは予想してなかった。


「リラとセレンは屋根に落ちた落下傘の回収をお願い。屋根から拾ったら地面に落としてあげて」

「はい」

「さぁお仕事、るんるん」


 これで、危険は少ないだろ。


「僕は喧嘩が起きないか見張るとしよう」


 アキシャルは落下傘の着地地点に行くようだ。

 エミッタは景品の前で番をしている。


 落下傘を持って子供が駆け込んできた。

 エミッタから、ぬいぐるみを貰って嬉しそうだ。


 俺は花火の残骸を片付けた。

 紙で作った容器からは火薬の臭いがして焼き焦げている。

 別に回収しなくても良いけど、一応念の為だ。


 試合が終わる度に花火を打ち上げた。

 不発弾もあって処理には慎重を期した。

 バリアで四方を囲んだ後に地面に100メートルぐらいの穴を開けて落とす。


 今のところ、これといった問題は出てない。

 何度目かの時に、アキシャルが駆け込んで来た。


「喧嘩だよ。まったく、優雅ではないね。鉄の薔薇で拘束しておいたから、始末をお願いしたい」


 俺が行くべきなんだろうな。

 現場に行くと血だらけの男子生徒が二人、鉄の薔薇に拘束されていた。


 二人は怒り狂っている。

 落下傘はというと漁夫の利で子供がかっさらったようだ。

 すれ違ったから間違いない。


 それもあって揉めているのだろうな。


「はいはい、牢屋で臭い飯食いたくなければ、大人しくするんだな」

「こんなの許せない」

「お前が邪魔した事こそ許せない」

「なにおう」


 駄目だ。

 さてどうしよう。

 俺は3メートルほどの火球を浮かべた。


「君達、喧嘩したいのなら俺が相手になろう」

「ちょっと待て。話し合おう」

「そうだ話し合わないと」


 俺は火球を消した。

 そして鉄の薔薇を借りてきたペンチで切って解いた。


「【完全回復】【完全回復】。傷は治ったな。仲良くしろよ」

「ああ」

「そうとも、仲良しさ」


 二人は肩を組んで去って行った。

 鉄の薔薇は拘束するのにはいいな。

 あれに絡まれたら、痛くて身動きとれないだろう。

 怒り狂うという欠点はあるが。


 俺は花火の発射地点に戻った。


「タイト、決勝が終わった」


 マイラがそう言って来る。

 俺は最後の花火を打ち上げた。

 良かった不発じゃない。

 最後が不発では締まらないからな。


 落下傘は風に流されこのままで行くと学園の外に出そうだ。

 トラブルにならなければ良いが。


「セレン、リラ、最後の仕事だ。落下傘の着地を見届けて来て」

「はい」

「行ってきまーす」


 そして、しばらくしてセレンが猫を抱いて帰ってきた。

 リラは少し離れて歩いている。


「その猫、どうしたんだ?」

「落下傘を捕まえたのよ」

「きゃは、この子にも景品あげないと」


 最後の景品は猫か。

 いい景品があるかな。

 飼い猫なら、遊び道具にぬいぐるみとか良いけど。

 食い物の類はないし。

 魔道具も駄目だし。

 魔法陣製品も駄目だな。


「可愛い猫ちゃんですね。魚の塩抜き干物を食べちゃいますか?」


 ダイナが魚を干した物を猫に与える。

 猫好きなだけあって準備が良いな。

 猫は、魚の干物に夢中だ。


「ダイナ、魚の干物を食えるだけ食わしてやってくれ。それを景品という事にしよう」


 ふう、なんとか終わった。


「次は、聖水銀を探しに遺跡かな」


 リラの次のリクエストは遺跡らしい。

 聖水銀の伝説は知っている。

 皇帝が不老不死の薬として追い求めたという事だ。


 結局、皇帝は偽物の聖水銀を飲んで死んだ。

 偽物は水銀に色を付けた物だったらしい。

 遺跡にはないだろうなと思う。

 広く知られている遺跡なので、冒険者が捜索しつくした場所だ。

 でも行ってみるか。

 面白そうだ。

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