第160話 花火と、落下傘と、傘

 学園は剣技大会の話題で持ち切りだ。

 リラは出ないらしい。

 マイラが少し寂しそうだ。


「剣技大会は、花火をやるのだ」


 エミッタがそんな事を言いだした。


「剣技大会は昼に行われるから。花火は目立たないと思う」

「音と煙で魅了するのだ」

「まあ、そういう花火もあるけど」


 花火が発展すると銃が発明される。

 だって筒で打ち上げるのだから、それの応用で大砲みたいなのを作るのは簡単だ。

 大砲が出来れば火縄銃まで一直線。


 ノッチの話では、魔導師も火薬を使っているから、今更か。

 でも魔導師は銃を作っていない。

 魔法が一番というプライドがあるのだろうな。


 銃が一般的になれば困るのは魔導師だ。

 レジスタ辺りが魔導師を狙撃しまくる未来が浮かぶ。


「とりあえず、魔道具で打ち上げる物を作るよ」


 筒は不味いから重力操作で打ち上げる事にした。


「皆も何か面白い事を考えるのだ」

「お菓子を降らせたら、楽しいかな、るん」

「リラ君、ナイスなのだ」

「爆発で粉々になるし、落ちると当たって痛い」


 と俺が突っ込んだ。


「ふむ、難しいのだ」

「紙で作った花を降らせたらどうかな。紙なら落ちて来ても痛くないだろう」


 前世の花火は落下傘が入っていたっけ。

 子供の頃に追いかけた記憶がある。


「落下傘を入れたら良い」

「初めて聞く名前なのだ」


 俺は紙と糸で落下傘を作った。

 糸の先端に重りを付ける。

 綺麗に折りたたんで、空中に放り投げた。

 紙が厚いので上手く開かなかったが、イメージは伝わったようだ。


「これは面白いのだ。もっと薄い紙なら上手くいきそうなのだ」

「先端の重りの所に、商品の引換券を付けたりすると盛り上がる」

「ふむ、良いのだ。爆発で注目を惹いて、落下傘で楽しむのだ」


 エミッタはやる気になった。

 落下傘を入れる紙のカプセルを試行錯誤して作る。

 爆発に耐えて、尚且つパカっと割れるのを作るのは難しかった。


 それでもなんと作れて2分の1ぐらいの成功率になった。

 これでいいか。

 所詮は素人が作った花火だもんな。


 危険なので打ち上げる場所は運動場を借りた。

 風が無ければ不発弾等は真下に落ちるだろう。

 俺は打ち上げ係になってバリアで身を守る事にした。


 花火の準備はこれで良い。


「私も剣技大会に出ない」


 マイラも剣技大会には出ないそうだ。

 リラをライバル視してたのかな。


「ふむ、ではみんなで落下傘の告知をするのだ」


 落下傘を拾った方には景品を贈呈とのビラを配る。

 学園の生徒は落下傘の絵を見て質問してきたりした。

 さすが魔法学園だな。

 知識欲旺盛だ。

 サンプルの落下傘を手で丸めて投げる。

 その落ちる様子を見て、しきりに感心していた。


 パラシュートを作って高い所から飛び降りる奴が出ないと良いのだが。


「タイト君は凄いのだ。私も知っていない落下傘などという物をどこで知ったのだ」


 むっ、エミッタは鋭いな。


「タンポポの種だよ。あれにヒントを得た」

「おお、君も植物を良く観察しているね。タンポポは花も可憐なんだ」


「言われてみれば似ている。傘という言葉はどこから来たのか」


 セレンまで突っ込み始めた。


「キノコの傘だよ」

「なるほどなのだ。落ちていく傘で落下傘なのだね。上手い名づけ方なのだ」


「ちなみに、雨具の傘っていうのもある」

「ふむ凄いのだ。キノコの傘状のものを作るのかね?」


 傘の魔法が作れるな。


#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>

#include <conio.h>

extern MAGIC *gravitational_field_make(float mana,int image);

extern int mclose(MAGIC *mp);

void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 mp=gravitational_field_make(0.0005,PARASOL); /*重力で傘を作る*/

 while(1){ /*無限ループ*/

  if(kbhit()) break; /*何か入力されたら止める*/

 }

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

}


 魔道具にしてみた。

 俺が魔道具を起動。


「ジョーロで水を掛けてくれ」

「僕に任せて」


 アキシャルがジョーロを借りて来て俺の頭上から水を掛ける。

 重力の傘が水を弾いた。


「面白いのだ。水を掛けると傘の形がよく分かるのだ。傘の形なのは水が溜まらないようにする為なのだね。うんうん、植物観察も馬鹿にならないのだ」

「キノコはカビの仲間で菌類だけどね」

「なんと、タイトは博識なのだ」


 また一つ商品を作ってしまった。

 これも売り出すか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る