第159話 仮面と、浄化魔法と、精霊

 キングウルフの骨の中に、マイラが白い仮面を見つけた。

 金属で出来ているから焼け残ったんだな。

 ここでもあいつらの影があるのか。

 たしかにキングウルフの大群はおかしい。

 あんなのが自然発生するわけはないと思う。

 それにしても食われるとは間抜けな工作員だ。


「花は駄目だったのだ。他に精霊を呼ぶ方法はないのかね?」

「精霊は清らかな物に惹かれると思います」


 さすがレクティ物知りだな。

 でも、清らかな物って何だ?

 やって出来ない事はないけど。


extern MAGIC *magic_purify(float mana);

extern int mclose(MAGIC *mp);


void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 mp=magic_purify(1.0); /*浄化*/

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

}


 浄化魔法を作ってみた。

 何が汚い物で、何が綺麗な物か、いまいち分からないが。

 とにかく醜い思念を浄化すれば良いとの思いで作ってみた。


「【浄化魔法】。上手くいったのか?」


 なんか清々しい気分だ。

 精神が安定するってだけの魔法なのかもな。


 近くにいたリラが驚いた表情を見せる。


「タイト先輩、もう一回やってみて」


 必死な顔で詰め寄られて、魔法をもう一度使う。


「きゃは、元気になったみたい。今なら何でも出来そう。ねぇもう一回」


 リラにせがまれて何度も魔法を使う。

 リラは怨念にでも取り憑かれていたのかも知れないな。

 まさかな。

 この世界、アンデッドの類はいない。

 リラが怨念を抱いていたのだろうか。

 まあいい、浄化出来たんだから。


 そして白い光の球が沢山集まって来たのに気づいた。


「ほわっ、綺麗なのだ」

「花には及ばないけど、美しい。美しい物は良いね」


 白い光にみなが手を触れる。

 白い光は手をすり抜けた。


「これは実体ではなさそうです。悪い感じはしないですが」


 そうレクティが言った。


「これがきっと聖霊。リラには分かる」

「亡霊かもよ」


 たぶんだけど、魔力で出来た生命体なんだと思う。

 手をすり抜けるエネルギーが魔力ぐらいしか思いつかない。

 マイラが言う通り魂の残滓かも知れないが、たぶん魔力だ。

 この物体からどうやって、雫を採るんだ。


 何となく魔法を作っても搾り取れないような気がした。

 リラは一生懸命、瓶に入れようとしているけど、光がすり抜けてはがっくりきている。


「私が思うにこれは自然現象ではないのかな。浄化魔法に何かが反応しただけだと」

「セレン君は夢がないのだ」


 分析の魔法を掛けてみるか。

 おっ、答えが魔力とでた。

 やっぱりな。

 魔力の塊だったか。


 分析魔法が初めて役に立った。

 いや待てよ。

 俺がたぶん魔力だと思ったから、魔力と出たのかも知れない。

 やっぱり分析魔法は役に立たないな。


 リラが何とか光を持ち帰ろうと飛びまわっている。

 俺はリラの顔色が良くなっているのに気づいた。


「リラ、浄化魔法がきっと聖霊の雫なんだよ」

「うん、そうかもね」

「魔道具に作ってやるから持って帰れ。あまり役に立ちそうにない魔法だったけど、リラの病気には効きそうだ」

「プレゼント、貰っちゃった。嬉しい」


「タイト、こんな奴にやらなくて良い」

「マイラにもあげるよ。ぜひ精霊と仲良くなってくれ」

「それなら許す」


「わたくしにも下さいませ」

「猫にも効きますか?」

「猫には試してみないと分からないけど、効かなそうだな。猫は邪念とかなさそうだから」


「喧嘩している猫の仲裁に使えるのでは」

「そうかもね。じゃあ、おも研のみんなに渡すよ」


 精神安定剤みたいな魔法だから、落ち込んだ時とか、色々な場面で使えるだろう。

 後で売り出すか。

 オルタネイト伯爵が喜びそうだ。


 こうして、精霊の雫探しは終わった。

 たまに色んな所に行くのは良いかもな。

 新しい発見がある。

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