第158話 精霊の雫と、花召喚と、魔石拾い

「精霊の雫を一緒に探しに行ってほしいの」


 リラがそう切り出した。

 例によって例のごとく、エミッタが賛成。

 精霊の雫があるという草原は近場だったから、週末に行く事になった。


「懐かしいな。マイラとウルフ狩りに来たんだよな」

「それでキングウルフが出て、タイトが格好良く片付けたのよね」

「タイト先輩の武勇伝、聞きたいな」


「武勇伝なんて恰好の良いものじゃない。魔法、撃って終わりだよ。解体の手間が大変で苦労したのが印象深かった」


 マイラと一緒にお風呂に入った話はしない。

 プライバシーに関わる事だからな。


「精霊はどうやったら来てくれるのだ?」

「もちろん花に寄って来るのさ。そういう物語が沢山ある」


 他の意見は出ない。


「アキシャルの言う方法しかないようだね」

「じゃあ花を呼ぶのだ」


「【花召喚】」


 咲き誇った花がアキシャルの魔法で呼び出された。

 みんなも花を召喚しはじめた。


 草原の一角が花畑になる。


「ピクニックしている気分だわ」


 そうセレンがほほ笑みながら言った。


「セレン君も花の良さが分かったようだね。花は人を笑顔にさせるんだ」

「あら、ウサギが」


 レクティがウサギを捕まえて抱き上げる。

 みるとウサギの大群が来ていた。


 凄い数だな、千はいそうだ。

 もっともウルフの大群がいたのだから、餌となるウサギがこれぐらいいても不思議じゃない。


 象の大群が移動するような足音が聞こえてきた。

 ウルフの群れが来るのか。

 音のする方に目をやると、体長が4メートルはあるウルフの大群が迫ってきていた。


 この大きさは覚えがある。

 キングウルフだな。

 その大群が発生したのか。

 そんな情報はなかったぞ。


 こんなのが村を襲うと大惨事だ。

 手っ取り早く片付けよう。


「【火球フルパワー】」


 600メートルもの火球が草原に落ち、キングウルフの群れと草原の草を焼き尽くした。

 クレーターが出来ている。

 それをマイラとレクティとセレンはうっとりとした目つきで眺めた。


「さすがタイト恰好良い」

「タイト様にとってはキングウルフの群れも一撃ですね」

「メテオ魔法はこれぐらいの威力が目標だな」


「爆発でもこれぐらいは容易いのだ」

「エミッタ、対抗しなくていいからな。大爆発なんか近くで起こされたらしゃれにならない」

「美しくない魔法ですね。僕が後始末してあげましょう【花の種召喚】」


 アキシャルが花の種を召喚する。

 このクレーターは花畑になるのだろうな。

 ウサギが俺達にすり寄ってきた。

 みんなもウサギをモフモフしている。

 ウサギは助けてくれたのを分かっているようだ。


「精霊さん、来ないなぁ。リラの事嫌いなのかなぁ」

「このウサギが精霊って落ちじゃないよな」

「可愛いけどただのウサギ。リラには分かる」


 レクティが冷えたクレーターの中に入った。

 そして魔石を拾い始める。


「貰ってもいいですよね」

「ああ、いいよ。皆も好きなだけ採って」


 クレーターで魔石拾い大会になった。

 焼け残った骨が散乱して、拾いづらい事この上ない。


 一瞬、魔法で魔石を探そうかと思ったが、エミッタがこんな事を言い始めた。


「魔石拾い競争なのだ。優勝者には魔法陣ラジオで好きな宣伝が出来るのだ」


 エミッタはオルタネイト伯爵といつ接点を持ったんだ。

 よく、枠を取れたな。


「鉱山の岩盤をエミッタさんが粉々に砕いたんです」


 そう、レクティが耳打ちした。

 火薬を正しく使っているな。


「勝って、花火大会の告知をするのだ」

「僕は花の素晴らしさを宣伝したいな」


 俺は何かあるだろうか。


「お世話になった人への感謝の言葉かな」

「愛の告白」

「きゃっ、マイラ先輩大胆。リラはアムリタのある場所を聞きたいな」

「私は、魔法陣製品の宣伝ですね」

「隕石の所有者と連絡を取りたい」

「私も参加していいのなら。猫愛を叫びたいですね」


 そうダイナが締めくくった。

 競争なら、ずるは駄目だな。

 目を凝らして骨の間を移動する。


 あったという声が次々に上がる。

 みんな、結構拾ってるな


 コツみたいな物はないのか。

 白い骨の間に赤い魔石だから目立つはずなんだが。

 焦げた肉がこびりついているから黒いんだよな。

 地面との見分けがつかない。


 時間は刻一刻と過ぎる。


「終了なのだ」


 結果はリラが優勝だった。

 案外楽しめたな。

 みんなも喜んでいるみたいだ。

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