第157話 デートと、強さの秘密と、マイラと仲直り

 リラがおも研に顔を出した。


「タイト先輩、リラとデートして下さい。きゃは、言っちゃった」

「くっ、このキメラ女が」


 いきなりそんな事を言われた。

 どういう風の吹き回しなんだろう。


「後でマイラともデートしてやるから」

「それなら発言だけは許す」


「順位戦優勝のお願いを使うという事でいいのかな?」

「はい」


「何歳ぐらいの俺が良い?」

「18歳でお願いしようかなっと」

「分かった。要望に応えよう」


「見たい。18歳のタイトが見たい。でもデートは許容できない」

「マイラ、デートだって考えるからいけないんだ。食事を一緒にしたってだけだ。セレンとご飯を食べに行った事もあるだろう」

「そうだけど」


「私が代わりに見張っておきます」


 そうダイナが申し出た。

 護衛だから付いてくることは確定している。


「不埒な事をしそうになったら止めて。お願い」

「ええ」


 部活が終わってから、寮で18歳の体になって着替える。


「素敵」

「そうですね」

「これは護衛が大変そうです」


 マイラとレクティとダイナが話している。


「じゃあ、行って来る」

「行ってらっしゃい。ダイナ、くれぐれもよろしく」

「行ってらっしゃいませ」


 リラの寮の前で待つ。

 女の子の視線が鬱陶しい。

 鏡を見て、もてそうな顔だなと思っていたが、過小評価だったらしい。


「待った?」

「それほどでもないよ」

「そこは、ううん来たばかりだよって言わないと」


「時間が惜しい。行こう」

「もう、ムードがないと減点しゃうぞ」


 リラと何故か腕を組んで歩いている。

 マイラが見たら怒るだろうな。


 適当なレストランに入り夕食を注文した。

 料理はまずまずだった。


「じゃあ、演劇を見てから帰ろうか」

「るんるん、楽しみ」


 演劇は喜劇だった。

 だが、笑いのツボが、現代人の記憶がある俺とずれているために、笑えない。


「タイト先輩、面白くなかった?」

「正直笑いのセンスがずれていた」


「今日は帰りたくないな」

「帰りたくないって夜通し飲むのか」

「ううん、このままどこかに連れ去ってほしい」


 リラの表情は真面目だ。

 口調も茶化した感じがない。

 内容は誘いを掛ける女性の言葉だが、色っぽい感じはない。

 生活に疲れ果ててどこかに逃げたいという中年サラリーマンの悲哀を感じる。


 よく中年サラリーマンが家に帰りたくないとベンチに座って呟く様な感じだ。


「体、そんなに悪いのか?」

「死にゆく老人を見るような目をしないで」

「すまん」

「タイト先輩は何でそんなに強いんです?」

「強くないさ。魔法の腕は自信があるけど、そんなのは本当の強さじゃない。本当の強さは、守りたい人を命を捨ててでも守るような人だ。それこそ全力の何倍もの力を発揮してな」

「私には守りたい人はいないなぁ。タイト先輩は?」

「守りたい人なら一杯いる。リラも含まれているぞ。裏切らない限りはな」

「そっかあ。そこが違うのか。それは勝てないね。ただでさえ強いのに、何倍もの力をだされちゃね」

「俺が何倍もの力を出せるかは分からないが、そうありたいと思う」

「リラがピンチでそうしてくれるの」

「もちろんだ」


 リラは何かしら思ったようだ。

 その思いが良い方向に、向かえば良いと思う。


 ほっぺにキスされて、リラがほほ笑む。

 寂しそうな微笑みだった。


「キスはお礼。私にも大切な人が出来たみたい」

「ストップ」



 ダイナが割って入った。


「ぷんぷん、いい所だったのに。もうちょっとでタイト先輩を落とせるかなと」


 いつもの茶化した雰囲気のリラが戻って来た。


「良い子は寝る時間です。帰りましょう」

「そうだな帰ろう」

「今日はありがと」


 リラを寮の前まで送って、考えた。

 リラは組織から抜けたいのかな。

 俺に背負えるかな。

 でも、人体実験するような組織は潰したい。


「タイト、お帰り。デートはどうだった」

「報告します。ほっぺにキスされていました」

「タイトの浮気者」


「あんなの挨拶だよ。デートは普通だったよ」

「腕を組んでました」


 ダイナはこの状況を楽しんでいるな。

 全く、性格の悪い奴だ。

 お仕置きしてやりたいところだ。

 俺の部下じゃないから出来ないが。


「食事会じゃ、腕なんか組まないでしょ」


 めんどくさくなったので、マイラの口をキスで塞いだ。


「むぐっ。えへへっ、許してあげる。でも、これっきりよ」


 めんどくさいけど、マイラのそういう所も可愛いなと思う。

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