第156話 お見舞いと、襲撃と、髪の毛
リラがおも研に顔を出さない。
やっぱり酒じゃなかったか。
俺とマイラはリラのお見舞いに行く事にした。
途中、セレンとすれ違う。
「セレンもリラのお見舞いか?」
「ええ、行ってきたところ。風邪だって」
「そうか風邪か」
絶対に嘘だと思う。
でも面会謝絶じゃないんだな。
会話ができるという事は、そんなには悪くないのか。
セレンと別れて角を曲がったら叫び声。
セレンの声だ。
俺達は元来た道を、駆けて戻った。
セレンが白い仮面の人達に囲まれている。
石つぶてが遥か上空から落ちたようだ。
着弾して土埃が上がる。
マイラは仮面人物の足を斬って回る。
ほどなくして立っている奴はいなくなった。
仮面を取ろうとしたら死んでいるのに気が付いた。
後始末が厄介だな。
「王家の影の方、後始末お願いします!」
これでいいな。
セレンに怪我がないか見ると、虫が一匹、腕に付いていた。
芋虫かな。
細いから尺取り虫か。
手で摘まむと、それは金髪だった。
だが、普通の髪の毛じゃない。
不気味に蠢いている。
寄生虫のような働きをすると厄介なので、魔法で跡形もなく燃やす。
匂いは、やっぱり髪の毛を燃やした匂いだ。
この不気味な髪の毛は誰の物だろう。
リラは銀髪だから、違うな。
「セレン、しばらく俺達と行動を共にした方が良い」
「そうね。そうさせてもらうわ」
セレンとマイラと俺の三人でリラの部屋に入った。
「具合はどう?」
「てへっ、風邪ひいちゃった。セレン先輩はまた来てくれたんだ。うれしい」
「ええ、タイトと会ったからまた来たの」
「リラも風邪ひくのね」
「もう、馬鹿は風邪ひかないって言いたいの。ぷんぷん。それよりセレン先輩の腕に虫が付いていたけど、今はないなぁ」
「それなら魔法で燃やした」
「リラも虫嫌い」
「じゃあもう行くから。お大事に」
「お大事に」
「また来るわね」
「じゃあね、ばいばい」
リラの部屋を後にして、あの髪の毛を燃やしたのは失敗だったかと思った。
でも、分析すると嫌な事になる感じがするんだよな。
触らぬ神に祟りなしだな。
分析する魔法ってどうやるんだ。
ちょっとやってみたくなった。
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
extern char *analysis(char sample);
cahr test_piece; /*試料*/
void main(void)
{
char *str; /*結果の文字列*/
str=analysis(test_piece); /*試料を分析*/
printf("%s",str); /*結果表示*/
}
こんな感じかな。
土を試しにやってみる。
『土』とだけ表示された。
俺を馬鹿にしているのか。
これはあれか。
知らないから、表示されないって事か。
土の成分なんか知る由もない。
元素記号ですら忘れかかっている。
だぶん、ケイ素とか窒素とかあるんだろうなぐらいしか分からん。
土は土だろとしか分からんもんな。
分かっている事しか分からんのは、使えるのか、使えないのか。
せめて重量ぐらい分かれよと言いたい。
それは秤になるから別魔法だろうな。
作らんけどね。
せっかく作った分析魔法の活躍の場はあるのだろうか。
魔道具にしても、俺のイメージが書き込まれるのだよな。
じゃあ、意味がないように思う。
そう言えば、前に毒検知作ったよな。
あれは俺の知らない毒も検知してた。
そうか、あれは味から毒かどうか判断してた。
俺が舐めたという事を想定した魔法なのか。
その結果で、体がどうなるかで、結果を出したのだな。
俺の体にとって毒かで判断したんだ。
ハイテクなのかローテクなのか分からん。
味で成分分析をすると酸味があるとか、苦いとか出てくるのだろうな。
やっぱり意味ないじゃん。
くそう、無駄骨はなんか悔しいな。
その道の専門家が分析の魔道具を作るとチート並みの物が出来るに違いない。
だが、出来ないものは仕方ない。
諦めよう。
この魔法は、お蔵入りだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます