第153話 サイラ&ノッチと、ロボットと、月光草

 板に乗って魔の森に向かって出発。

 マイラはちゃっかりクッションを用意してた。

 石の板は固いし冷えるからな。


 途中の街でみんなもクッションを購入。

 俺も猫の柄のクッションを買った。


 そんなこんなで、魔の森近くにあるソレノイドの街に着いた。

 サイラとノッチに会っていこう。


「遊びに来たよ」

「いらっしゃい」

「道中大変だったでしょ」


 ノッチとサイラは俺達を暖かく迎えてくれた。

 二人とも元気にやっているようだな。


 ノッチの工房を見学する。

 工房の棚にはサイズの違う義手や義足が壁にずらっと並んでいた。


「重力の話は為になったよ。今、義手を思念で動かせられないか考えているところ」

「俺にも難しいな。でも作ろうと思えばきっと作れるさ」

「そうだね。やってみない事には進まない」


 簡単なロボットみたいなのを魔法で再現するのは出来る。

 関節ごとに角度を設定して動かせばいいだけだ。

 だけど意味のある動きをさせるのは、難しい。


extern int think(FILE *fp);

extern void joint_move(int angle);


void main(void)

{

 int angle;

 FILE *fp; /*魂の定義*/

 fp=fopen("神秘魔法名.soul","r"); /*魂を開く*/

 angle=think(fp);

 joint_move(angle);

}


 とりあえず動かすだけならこんなのでいけるはずだ。

 魂からなら思考のデータを読み取れると思う。

 でも全部の関節のX、Y、Zの回転データがいる。

 それに関節によっては軸が少ないのもあるし、可動範囲も設定しないといけない。

 これをプログラムでなくて言葉で表現するのは骨が折れる。

 やって出来ない事はないが、大変だ。


 パワードスーツが作れるけど、べつに要らないな。

 身体強化の魔法があるからだ。


 でも巨大ロボットは作ってみたい気もする。

 乗り心地最悪だろうけど。

 そこはエアクッションとか浮遊で改善できそうだ。

 出番があるか考えて、たぶんないだろうなと思った。


 そういえばリラはペットを作りたいと言っていたな。

 魂さえ入れれば、ペットロボットは作れるはずだ。

 ただ、神秘魔法名の秘密があるんだよな。


 これを知っている者を魔導師は生かしておかない。

 ノッチに関節を動かす呪文を教えないのもこれがあるからだ。

 俺はとっくに奴らのブラックリストに載っているから良いけど、ノッチが巻き込まれるのは見たくない。


「へぇ、月光草というのを探しに来たのね」


 雑談に入ろうとして会話に耳を傾けたら、サイラがそう言った。


「うん、そうなんだぁ。見つかるかなぁ」


 とリラ。


「案外モンスターのくそから生えてたり」


 とマイラが言う。


「ひどーい。絶対、綺麗な湧き水の近くに生えているんだもん。天使が湧き水を飲んでその時に、こぼれた水が月光草になるの」

「鳥のふんの後に草木が生えるのはよくある事さ。鳥によって空を運ばれると考えたら素晴らしい事だよ。生き物の流転の形だと思えば、それもありだと思う」


 とアキシャルが言う。


「実が爆発する植物もあるのだ。きっと月光草も爆発するのだ」


 エミッタが言った。


「強い魔力の影響で発芽するなんて設定だったら、面白いな」


 そう俺が言った。


「隕石の跡に生えるのだったら、伝説でもおかしくない」


 そうセレンが言う。

 まあ、滅多にないってことだとそれぐらいの確率かな。


「そうですね。ドラゴンの死骸に生えるのはどうでしょうか」


 レクティがそう締めくくった。


 ドラゴンの死骸はまずないだろう。

 どうしてかというとドラゴンは何年か置きに産まれると思う。

 たいてい仔竜のうちに命を落とすのかも知れない。

 生存率が高ければ、ドラゴンだらけになっているはずだ。


 だからドラゴンの死骸はありふれている。

 恐竜並みに5個ぐらい卵を毎年産んでも不思議はない。

 そんなに死骸が多ければ、月光草も多いはずだ。


 俺としては魔力が結晶化された場所に生えるを推したい。

 明日になってドラゴンのアルゴに会えば、はっきりするはずだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る