第144話 準決勝と、絶技と、セレン

 5回戦、準決勝だ。

 リラはセレンとの対戦だ。


 始めの合図と共に、セレンが石つぶてを10個ぐらい宙に投げた。

 石は落下せず宙に浮いている。


 そのうちの一つが落ちてくる。

 上からの攻撃は避け辛いんだよな。


 リラが動き出したのを見て、セレンは次々に石を落下させる。

 リラは上を見ないで避けながら接近。


 至近距離になった所でセレンが降参した。

 今回も速攻で方が付いたな。


 二人が舞台を降りて、こちらに来た。


「二の手がないわけじゃないのよ。必殺技ってのは破られたら終わり。それが美学というものよ」

「きゃは、リラにはその気持ち分かんなーい」


「セレンは、上からの攻撃だけでなく。同時に横からとか、後ろからとか、考えたらどうだ」

「隕石魔法は最強なんだ。組み合わせとかそういうのは、弱者がやる物。もっと隕石魔法に磨きをかける」


「そうなると、重さだな。威力を上げるには重さだ。スピードを上げるなら重力だ。命中率を上げるなら回転だ」

「参考になる」


「詳しくは、今日寮で話そう。人が多い所で、魔法の秘訣を教えたくないんだ」

「ぶー、リラ、仲間外れ」

「リラは近接戦闘が得意だろ。そっちのテクニックはマイラとダイナだな。二人が教えてくれるなら頼んでみろよ」

「リラ可愛いから、嫉妬されたらやだなぁ。その時は、お、ね、が、い。きゃ、タイトに甘えちゃった」

「少しぐらいなら、口を利いてやるよ」


 次の試合が始まる。

 次はマイラとアキシャル戦だ。


 開始の合図と共にアキシャルは石の花を咲かせた。

 そして散らした。


 石の花びらがマイラを襲う。

 マイラは魔法を使い石でナイフを作り出すと、花びらを叩いた。

 花びらが花びらに当たり、連鎖して軌道が変わる。

 凄いなマイラ。


 空間把握の能力がすごすぎる。

 俺はマイラの絶技に見惚れた。

 観客も声が出ない。


 マイラは瞬く間にアキシャルに接近。

 アキシャルは石のナイフを首に突き付けられ降参した。

 ひと際大きな歓声が上がる。


 こっちも、速攻で方が付いた。


「負けちゃったな。でも美しい負け方だ」


 アキシャルは、負けて少しも悔しそうではない。

 決勝はマイラとリラか。

 両者とも接近戦だな。

 決勝は明日だ。


 今日はエミッタもどこかに行こうとは言いださない。

 俺は寮に引き上げた。


 寮に戻ると一緒についてきたセレンが、さっそくレクチャーをせがむ。


「重さっていうのは重力が影響している」

「重力って!」

「文化祭で軽くする出し物をやっただろう。あれの逆だ」

「分からないんだけど」


「ジャンプしてみろよ」

「ええ」


 セレンがぴょんぴょん飛び跳ねる。


「下に引っ張られるから、落ちるんだ」

「落ちる力が働いているのね」


「今まで浮かすのはどうやっていたんだ?」

「風でやってたのよ」

「制御が大変だろう」

「ええ。中々難しいから、初めは失敗してたわ。石に皿みたいな空気を固定するのよ。それを風で浮かすの」

「重力で浮かしてから、重力で重くして落とすと良い」

「やってみる」


「次は回転だ。物を投げる時回転させると軌道が安定する」

「それだと曲がってしまうんじゃない」

「進行方向に回転の軸が行くようにするんだ」

「なるほどね」


「風でパイプを作って中を通すのも良いかもな」

「パイプなら押し出す動きを加えれば、更に加速するわね」


 加速させるのなら、発射する物体を鉄にして、磁力でやるという手もある。

 磁力の説明をするのはめんどくさいから、さっき教えた技術で行き詰ったら教える事にしよう。


 マイラとダイナが鍛練から帰ってきた。


「マイラ、勝てそうか?」

「力だと負けるから技で対抗したい。勝負は分からない。けど、勝つ。キスして」

「みんなの見てる前では照れ臭いな」

「キスされたら、勝てるような気がする」


 意気込むマイラ。


「落ち着けよ。後でみんなの居ない所でな」

「うん」


「羨ましい。私もタイトとそんな関係になりたいな」

「セレンはもてるだろ」

「女の子にね。女扱いしてくれるのはタイトだけ」

「そんな事もないと思うけど」


 マイラがセレンを睨んでる。

 マイラの嫉妬は可愛いものだ。

 ヤンデレ素質が少なくて良かった。

 ヤンデレだったら、レクティとセレンは速攻で消えてたな。

 セレンの事は、なるようにしか、ならない気がした。

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