第139話 遠距離戦と、魔法考察と、賭け

 今日は3回戦だ。

 何となく気になったのでリラの試合を見に行く事にした。

 今日のリラの相手は女生徒だ。

 肉弾戦とはならないだろう。


 案の定、開始の合図と共にリラの対戦相手は飛び退いて距離を取った。

 リラも距離を詰める事をしないようだ。


 遠距離魔法の応酬が始まった。

 リラの手数が圧倒的に多い。

 手数は多いが複数の誘導弾を同時に操れるという事はないようだ。


 誘導弾は魔道具に頼っているみたいだ。

 腰に着けた魔道具に触る度に誘導弾が飛ぶ。


 魔法は打ちっぱなしだが、その数は圧倒的だ。

 対戦相手が作った石の壁が瞬く間に削られる。


 対戦相手が防御一辺倒になった。

 リラの魔法攻撃が石弾のみになる。


 横から攻めたりはしないのだな。

 退屈な試合展開だ。

 壁を壊すのを見ているだけ。

 そして、対戦相手が魔力切れになってギブアップした。


 壁の魔法は物凄く魔力を食う。

 1メートルの大きさで5センチの厚さの石の板を出すには、熟練の魔法使いでも400魔力ぐらい必要だ。

 10センチの石の塊を出すのに必要なのは10魔力。

 10センチの塊があれば5センチの壁は壊せる。

 40倍の魔力を使っているのに防御が負けてしまう。

 防御の方が不利なのが分かる。


 鉄の壁だと強度は増すが、使用魔力も増える。

 横に回り込まれるとせっかくの壁が無になってしまう。

 全方位を鉄で覆えば防げない物はないだろうと思うだろうが、動けない的になるとどうしようもない。

 大きな物体を当てられると、衝撃で覆っている物が動く。

 中の人間に当たるわけだ。

 簡単に攻略されてしまう。


 ゴーレムみたいなのを生成して、中に乗り込んで戦えたら強いが、実現できた人間は見たことがない。

 ジョイントが無ければロボットは動かない。

 モンスターのゴーレムは液体金属みたいなのをジョイントに使っているようだ。


 とにかく普通なら防御は割に合わない。

 おも研究のメンバーが集まった。

 みんな勝ち進んでいるようだ。


「思い出した」


 突然、アキシャルが会話の脈絡もなしに言った。


「何なのだ?」

「色に関係ないリラの花言葉だよ。『思い出』と『友情』さ。試合も早く終わったし、思い出作りに行かないか」


 賛成の声が上がる。

 こういうイベントをエミッタが無視するわけはなく。

 王都の街に出る事になった。


 クレープ屋に入る。


「リラはクレープ大20個」


 リラが真っ先に注文する。

 相変わらずの大食いだ。

 みんなはクレープ1個を注文した。


「俺が今日はおごるよ」


 俺がさう言うと、ごちになりますと声が上がる。

 リラの胃袋にクレープ20個が瞬く間に消えていく。


「賭けをしないかなのだ? 優勝者はみんなにお願いごとを一回言えるのだ。もちろん無理なお願いは駄目なのだ」


 エミッタの提案に、いいねの声が上がる。

 俺は参加してないから願い事は言えないが、まあいいか。


「優勝したら、タイトにティアラ作って貰おう。みんなにはお姫様ごっこしてもらう」


 そうマイラが言う。

 ティアラぐらい何時でも作るけど、モチベに繋がるのならここは頷いておこう。


「婚約者にしてもらいます。そして婚約パーティを」


 とセレン。


「タイト様に魔道具で暗器を作ってもらおうかしら。皆には材料を調達を頼みたいですね」

「花火大会を開くのだ」

「学園の空いてる花壇に花を植えてもらおうかな」


「リラは何かないのだ?」

「願い事を言うと叶わないって、院長さんが言ったもん」


「それなら、無理には聞かないのだ」


 クレープ屋でひとしきり雑談した後、どこに行くか相談した。

 多かったのは魔法陣機器を扱っている店だった。


「それなら、私の父がやっている店があります。値引きしますよ」


 そうレクティが言うと、行こうとの声が多数上がった。


「リラはアルバイトがあるので、帰ります」

「残念なのだ。でも仕方ないのだ」


 リラだけが帰って行った。

 後ろ姿が少し寂しそうなのは気のせいだろうか。

 行きたかったのかな。

 魔法陣機器は安いからお土産に何か買ってやろう。

 あんなに大食いでは食費も掛かるだろうから、アルバイトもしょうがないのかもな。

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