第137話 順位戦開始と、1回戦と、キメラ
順位戦が始まった。
俺は出ないので呑気に観戦してられる。
1日目の予選の的当ては、おも研のメンバー全員が、勝ち抜く事ができた。
いよいよ本選だ。
2日目に1回戦が始まる。
1回戦は同時に行われるので、誰か一人しか見に行けない。
どちらに行くかレクティとマイラで揉めたが、じゃんけんで勝負はつき、マイラの方に先に行く事になった。
「マイラ、頑張れ!」
マイラがほほ笑みながら手を振る。
開始の合図と共にマイラが相手に突っ込んで行き。
目前で爆竹魔法。
後ろに回り込み背中に火球を食らわせて終わり。
一瞬で勝負がついた。
ダイナが観戦している俺にお茶を淹れる。
俺はお茶を一口飲んだ。
マイラが俺のもとにやって来る。
「見てた?」
「うん、お見事。一瞬だったね」
「大物ぶって余裕を見せる奴は負ける。スラムの常識」
「そうかもね。じゃレクティの様子を見に行こうか」
レクティの戦いの場所に到着した。
状況はレクティが魔道具をばら撒いている所だった。
あれは地雷か。
だとしたら諫めないとな。
そんな物は作らせたらいけない。
対戦相手は魔道具によって行動範囲を狭められ、レクティの火球で勝負はついた。
終わった後、レクティがやってきた。
「あの地面に撒いた魔道具はいただけないな」
「嫌ですわ。あれはただのフェイク。効果は何もありません」
「ええっ! 何にも起きないのか」
「意味ありげにばら撒けば、触るのを嫌がるでしょう」
「そうだな。試しに触ってみるわけにもいかないからな。でも、そんなのありか」
「レクティらしくて、嫌らしい手」
マイラがそう言って眉をひそめた。
「マイラにそれを伝えて良いのか? 不利になるんじゃないか」
「虚実です。偽物の中に本物。マイラは強敵なので迷ってもらいます」
レクティは頭脳派だな。
事情が無ければ、影の管理をする人間として推薦したい所だ。
「本物って地雷を作ったわけじゃないだろ」
「時間が経つと発動する魔道具は簡単に作れます。本物に出来るわけです」
なるほど、フェイクだと思って近づくと、時間で爆発したりするわけか。
虚実だな。
これが切り札というわけでもなさそうだ。
こうやってマイラに聞かせているのも心理戦なのか。
本当に凄いな。
やっぱりマイラは豹でレクティは蜘蛛だな。
リラは何だろう。
肉弾戦が得意だけど、力任せというわけでもない。
今一つ性格が読めないからな。
「マイラ、リラを動物に例えると何だと思う?」
「キメラ」
んっ?
キメラ。
どこにキメラの要素が。
「私もそれがぴったりだと思います」
レクティも同意見らしい。
「ちなみに俺は何?」
「地竜」
「言い得て妙ですね」
地竜っていうと大人しいけど怒らせると恐いみたいだ。
俺はそんなに怒った事はないけど。
まあいいや。
地竜は草食だと聞くし、草食系というのならそうかも知れない。
「他のメンバーの戦いを見に行くか」
エミッタの所に行くと戦いは既に終わっていた。
エミッタはいなかったので、アキシャルの所にいく。
アキシャルは去年と同様に石と鉄の花を沢山作り陣を作っていた。
相手は攻めあぐねているようだった。
守りが堅いからな。
アキシャルから攻撃しないのかと見ていたら、花が一斉に散った。
花びらが対戦相手を360度の方向から切り刻む。
これで決着がついた。
凄い制御能力だ。
全部の花を支配下に置いているのだな。
「やあ、応援ありがとう」
「凄い制御能力だな」
「あれかい。植物というのは得てして根っこで繋がっているものさ。沢山に見えて一つという事があるんだよ」
あれは全部一つの魔法なのか。
なるほどね。
アキシャルが時間的に最後だったらしい。
エミッタとセレンとリラがこっちに歩いてきた。
「みんなどうだった?」
「ばっちりなのだ」
「苦戦しなかったわ」
「ぶぃ」
リラがVサインを出した。
リラのどこがキメラなのか少し分かった気がする。
今も笑っているけど、目が笑ってない。
そういう得体の知れなさがそう思わせるのかも。
俺なら狐と言ったところか。
この世界は狐が化かすという話はない。
言ってもたぶん他の人は分からないだろう。
この世界ふうだとキメラかもな。
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