第136話 歓迎会と、模擬戦と、重い体
「では、リラ君の加入を歓迎して祝うのだ」
おも研の部室でエミッタがそう宣言して、歓迎会が始まった。
「お菓子を用意したから、好きに摘まんでよ」
そうアキシャルが言う。
見ると花の形をしたクッキーとラスク、それにやっぱり花の形をした砂糖菓子。
紅茶にも花びらが浮かべてある。
アキシャルらしいおもてなしだな。
食べたが、味は普通だった。
形で美味い訳じゃないから当たり前だけど。
「きゃっ、可愛いー。アキシャル先輩、今度、買ったお店を教えて」
リラはいつも通りハイテンションだ。
「そろそろ、順位戦が始まるのだ。タイト以外は全員参加するのだ」
「何でタイト先輩は出ないんですか? リラ、先輩とお手合わせしたかったな」
「俺は去年優勝したから、出ても意味が無いんだよ」
卒業の成績に加味されるのは最高順位なので、1位を取った人間はもう一回出ても意味がない。
優勝者が出ると枠が一つ埋まる。
実力を誇示するみたいに取られるので、通常は出ないらしい。
俺もやっかみを受けるのは勘弁してほしいから出ない。
「えー、つまんない」
「その代わり、マイラが受講生資格で出る」
「リラ、マイラ先輩には負けないもん」
「弱い奴ほど負けないとかほざく。スラムの常識」
「では歓迎会が終わったら、腹ごなしに手合わせするのだ。タイトも模擬戦なら良いと思うのだ」
「喜んでみんなの練習台になるよ」
歓迎会も終わり、みんなで修練場に行った。
リラとマイラがやるみたいだ。
仲が悪そうだけどこれがガス抜きになったら良いと思う。
「では始めなのだ」
エミッタが声を掛けて始まった。
マイラがリラの耳元で爆竹みたいな音を鳴らす。
リラは音を気にせずに突っ込んで来てマイラの腹にボディブローを叩き込もうとした。
マイラが避ける。
「きゃはっ、避けられちゃった」
マイラが姿勢を低くしてリラの斜め後ろから電撃魔法を撃つ。
リラは振り返りもせずに避けて、火球を放つ。
火球は誘導されてマイラを追う。
マイラはバリアを張って火球を受け止めた。
リラはバリアに火球とボディブローを重ねる。
熱くないんだろうか。
バリアはボディブローで砕け、火球がマイラを襲う。
マイラは足元に電撃を放った。
いつの間にかマイラは水をリラの足元に撒いていたようだ。
リラが感電するのとマイラに火球が当たるのは同時に見えた。
「引き分けなのだ」
エミッタがそう言って戦いは終わった。
「次は勝つ」
「わーい、引き分けだ。嬉しい」
マイラを治療する。
リラを治療する為にバックアップの有無を確認したら、バックアップがあった。
リラは魔導師と付き合いがあるのだな。
「リラは魔導師と付き合いがあるのか」
「リラ、持病があるの。でも死ぬようなのじゃないから。定期的に回復魔法掛けてもらえば、ばっちり」
嘘を言っているようには見えないな。
さて、次は俺とリラだ。
「では始めなのだ」
俺は電撃の誘導弾を3つ放った。
リラは水の盾で次々に防いだ。
水の盾を使うと足元が濡れて不利になるぞ。
俺はリラの足元に電撃を撃ち込んだ。
リラはぴょこんと跳び上がると、石の壁を地面と水平に出した。
なるほどな。
これなら確かに防げる。
俺はウインドカッターを誘導させて放った。
リラはウインドカッターを石の盾で防いだ。
そして、石の盾を俺に向かって投げた。
戦いなれているな。
俺も石の盾を出すと横に回り込まれる。
バリアは素手で破られるから駄目だ。
脳内で素早く計算を立てて俺は剣山の魔法を放った。
俺からリラに向かって剣山の道が出来る。
石の盾は剣山弾かれた。
剣山の進みは遅いが、これは追尾するんだよ。
リラが横に避けると、その方向に剣山の道が出来る。
リラは俺に向かって走るとジャンプして俺の頭の上に乗ろうとした。
頭上に炎の壁を作る。
リラはそれに突っ込んだ。
リラは炎の壁を突き抜けて俺と揉みくちゃになった。
苦しい。
上になったリラが重い。
マイラがリラを蹴飛ばそうとした。
リラが素早く跳ね起きる。
「やーん、マイラ先輩に蹴飛ばされそうになっちゃった。ひどい、ぷんぷん」
「タイトは私の婚約者。その資格はある」
「本気になっちゃ嫌」
「タイトの勝ちなのだ」
「しくしく、負けちゃった」
気になった事が一つある。
リラが重い。
何であんなに重いんだ。
俺は身体強化の魔道具も起動してたんだぞ。
あんなに重いんだったら、もっと太ってるはずだ。
太ってたらあの動きは出来ないな。
リラには聞かない方が良さそうな気がする。
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