第135話 入学式と、リラと、新人勧誘

 今日は魔法学園の入学式だ。

 首席入学が誰なのか見物に行く事にした。


 式が進み代表が進み出る。

 あれか。

 名前はリラか。

 平凡な名前だな。

 銀髪でツインテールにしている。

 眼鏡っこだな。

 年の頃は17歳ぐらいか。

 小さい子がツインテールにしていると可愛いと思うが、十代後半だと少し痛いような気がする。

 まあ顔が童顔だから、普通の十代後半より似合っている気はするが。

 俺はファッションセンスがない方だからとやかくは言うまい。


 でも、何か引っ掛かる。

 何だろう?

 思い当たらないという事は、それほど重要ではないって事かも知れない。


 まあいいや。

 見物は終わったので、おも研でやる新人勧誘に合流した。


 チラシは複写の魔法で何百枚と作ってある。

 アキシャルは相変わらず魔法で花を作って配っていた。

 エミッタは空で爆発を起こしている。


 俺とマイラとレクティとセレンはチラシを配る役だ。

 人はそこそこ来た。

 アキシャルの花が好評で、それには女子の列が出来た。


 今回のアキシャルの花は、色々な色に染めた紙を材料に作っている。

 暖かい感じが去年の石や鉄とは違う。

 それに香りまでついている。

 進化しているけど、こういう方面には手を抜かないとは、アキシャルらしいな。


 だが、入部したいという人はいない。

 変わり者の集まりだと噂が立っているせいだ。

 俺ってそんなに変わっているかな。

 魔法を抜けば普通だと思うんだけど。

 他のメンバーは変わっているとは思う。

 俺をその仲間に入れるのは勘弁してほしい。


 俺の前に女の子が立った。

 それはあのリラだった。


「入部したいの。きゃっ言っちゃった」

「変人の巣窟にようこそ。言っとくけど俺は普通だから」


「知ってる。反乱を鎮圧した英雄でしょ。凄かった。オーラ満載。爆発してた」

「パレード、見てたのか」

「すごく見てたよ。目が痛くなるぐらい」


「入部希望者の君には花をあげよう。名前を聞いてもいいかな」


 アキシャルが花を差し出した。


「リラでーす」


 リラは花を受け取りにっこり笑った。

 違和感を感じてよく見ると、目が笑ってない。

 一癖ぐらいはありそうだ。

 やっぱり変人だな。

 類は友を呼ぶって事か。


「素晴らしい。花の名前だね。たしか、白いリラの花言葉は無邪気だったはず。確かに君はそんな感じだね」


 そうか、違うと思うけど。


「入部ありがとうなのだ。どんな面白魔法を使いたいのだ」


 エミッタがそばに来て尋ねた。


「魔法で可愛いーペットを作りたいな」

「それは面白いのだ。モンスターでないゴーレムの研究は、他の部でもやっているけど、可愛さに主眼を置くとは侮れないのだ」

「名前ももう決めてあるの」

「何なのだ? 言いたまえ」

「ペットを作った時まで教えなーい。だって、いま言ってしまうと価値が下がりそうなんだもん」

「そのこだわりも良いのだ」


 リラがおも研に入る事になりそうだ。

 あの見せかけの無邪気さ奥に何を隠しているのだろう。

 だけど、ペットを作りたいと言った時には目が笑ってた。


 動物好きなのだと思う。

 ダイナと気が合ったりしてな。


 俺はゴブリンの毛で魔法を使いぬいぐるみを作った。


「寮でペットは飼えないけど、これなら大丈夫だよね」


 ぬいぐるみをリラに渡した。


「ありがとね」


 目が笑ってない。

 生きた動物の方がいいのかな。

 でもペットを作りたいって言ったんだよね。

 ぬいぐるみも好きそうだと思ったんだけど。

 人の心は難しい。


「へぇ、この子が入るのか」

「マイラ、年上だよ。この子はないと思うけど」

「新入りは下につく。スラムの掟」


「むーっ、この子じゃないもん。リラだよ」

「私はマイラ。先輩だから、さん付けで呼ぶように」

「えーっ、そういうのは好きじゃない」


「マイラ、仲良くしてやりなよ」

「そうね。仲良くしましょ。さん付けは別にいいわ。スカートの右側が乱れているわよ。それと上着の左側」

「えっ、変じゃないけど。何の事? 分かんない」

「それなら、別に良いわ」


 何か意味深な台詞だな。

 マイラにさっきのあれ何って耳打ちすると、そのうち分かると言われた。

 何か問題児が入ってきたみたいだ。

 マイラとはひと悶着ありそうだな。

 殺し合いになったりはしないだろうと思いたい。

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