第122話 元締めと、卒業試験と、通信拒否
「元締め、ノッチはまだ見つからない?」
「見つからないな。本当に王都にいるのか?」
「うーん、それらしい人を見かけたというだけだから、あやふやだけどね」
「年齢がお前さんぐらいと腕にある鳥の形の痣で、ヒントは十分だ。人は絶えず行き来しているからな。そのうち見つかるかも知れん」
「商売の方はどう?」
「魔法陣に押されているな。灯りと生水とコンロは2割ぐらい減った。性能では負けてないが、コストがな」
魔法陣の利点は大量生産が容易だって事だ。
魔力の蓄積量はだいぶ少ない。
時計みたいなのを除き、使用1回分の魔力しか入らない。
だが、材料の魔石はクズ魔石でも何でも良い。
ネズミのモンスターのでも良いぐらいだ。
とにかく安くてお手軽だ。
「商会が苦しいようなら言ってよ」
「まだ、大丈夫だ。売り上げが8割減っても暮らしていける。それより見ない間に急に育ったな」
「まあね」
レクティにもノッチの話を聞く事にした。
「ノッチは見つかった?」
「今のところ、報告はありません。工房の見習いの数は、そんなに急激に増えたりしませんから、見込みは薄いですね」
うーん、こっちも駄目か。
意外な所にいるのかもな。
スラムはマイラの庭だから、こちらに来ればすぐに分かるようになっている。
見習いぐらいの歳だと、暮らしていくのも大変なはずだ。
養子にでもなったのかも知れない。
それだと、発見は難しいな。
養子になった人は稀に名前を変える人もいる。
出自を隠したい場合などはそうだ。
これは中々に難問だ。
せめて神秘魔法名が分かればな。
学園は試験期間に突入する。
この学園は単位制だから、試験は1科目ずつ並行せずに行われる。
3週間かかるがそんなもんだろうな。
授業を受ける人間はみな気合が入っている。
魔法学園を卒業できればエリートコースだ。
気合も入ろうというものだ。
俺は卒業しなくてもいいから、気楽だけどな。
教室に見ない顔が来たと思ったら偽ニオブだった。
今度はなんだ。
「試験で僕と勝負だ。君のからくりは分かっている。はぐれ魔導師に通信魔法を使わせてカンニングしているのだろう」
「してないが。まあ、証明する方法はないな」
「いや、ある。僕の魔法を受け入れれば、答えははっきりする」
「そんな事を言って隷属の魔法でも掛けられたたら、たまらん。話にならないな」
「やっぱりな。そんな事だと思ったよ。僕はタイトをカンニング容疑で告発する」
「好きにしろ」
俺は学園側から呼び出されて痛くもない腹を探られた。
嘘判別魔法も拒否した。
魔導師は信用できない。
結果、俺は試験を受けられない事になった。
別に良いんだが、癪にさわる。
偽ニオブにしてやられたような気がするからだ。
舐められたらいけない。
偽ニオブの神秘魔法名を鑑定する。
神秘魔法名は『ミラカソク』だった。
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
void main(void)
{
system("attrib +R ミラカソク"); /*偽ニオブに通信魔法が届かなくする*/
}
普通にこれをやると、拒否される。
なので、俺の魔力を偽ニオブに混ぜるのを、この魔法の先頭に付け加えた。
一瞬なら魔力の波長も書き換えられないだろうと思ったからだ。
俺はぶっつけ本番ではやらない。
マイラに実験台になって貰おうかと思ったら、生憎いなかった。
「レクティ、実験に付き合ってよ」
「ええ、構いません」
「【レクティ、通信拒否】。うん、駄目だ。失敗した」
「ただいま。なにしてるの?」
マイラが帰ってきた。
「実験だよ」
「私にもやって」
「えっと、魔法を作って【マイラ、通信拒否】。あれ今度は成功した。何でだろ? これはサンプルが要るな」
おも研のメンバーに頼んだところ、成功したのはマイラだけだった。
もしかして。
俺は自分の通信拒否の魔法を作って、魔道具にしてマイラに掛けてもらった。
成功した。
この事から分かるのは、魔力の少ない者は掛かるという事だ。
魔力の波長の書き換えが、魔力量が多い者ほど早いのだろう。
魔道具で魔力量をブーストしても波長の書き換え速度は速くなってないらしい。
なるほど、この知識は表に出せないな。
俺とマイラの的確な弱点になる。
偽ニオブはどうだろう。
駄目元で魔法を掛けると。
くくくっ、成功だ。
偽ニオブも魔力量は少ないらしい。
これで偽ニオブには通信魔法は届かない。
試験が終わり、結果が張り出される。
どの科目の単位取得合格者にもニオブの名前はない。
「お前が僕に呪いを掛けたのか!?」
偽ニオブが俺に詰め寄る。
「何の事かな? 俺は何もしてない」
「くっ、覚えてろよ」
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