第115話 8位と、初恋の思い出と、話し合い

 魔法舞踏祭はマイラの協力もあり、なんとか8位に入る事が出来た。

 出来たが、物言いがついた。

 カンペは反則じゃないのかと。


 反則じゃないらしい。

 別に扇子を持って踊っても、それはそれで良いとの事。

 美しく見えれば問題ないみたいだ。

 確かにカンペを使うと視線が固定される。


 盆踊りは前を向いてほとんど視線は動かさない。

 カンペを使うのならこういう踊りになるわけだ。

 とにかく反則は無かったとされた。


 おも研のメンバーでセレンだけが、10位以内ではなかった。


「罰ゲームなのだ。初恋の思い出を語るのだ」

「どうしてもやらないと駄目?」

「可愛く言っても駄目なのだ」


「あれはこの魔法学校の実技試験の時だ。彼は私の後で実技を行ったのだが、その魔法の見事さに胸を打たれて、キュンとなった。そして、魔法知識の交換をして別れた」


 おいおい、これって俺じゃないか。


「それでどうなったのだ」

「彼とはちょくちょく会っている。告白はしてないけど」


 今、告白しているような物じゃないか。

 マイラを見ると目つきが鋭くなっていた。


 これは話し合う必要がありそうだ。

 後でちょっととセレンの耳元に小声で囁いて、それからマイラとレクティにも声を掛けた。


 寮の部屋で4人、同じテーブルに着く。


「聞きたいんだけど、セレンが言った話は本気? 本気だったら、話し合わないといけない」

「何の事か分からないので、私に説明してくれますか」

「泥棒猫が出たってだけよ」

「ああ、そうですか」


 レクティは雰囲気で事態を察したらしい。


「それで、セレンは本気なのかな?」

「ええ、本気よ」


「正妻の私としましては、あまり女性が増えるのは感心しません。トラブルの元になりますから」

「私も反対」


「タイトはどう思っているの」

「俺かぁ。俺としてはまだ若いから相手は決めたくない。でも将来は一人に決めたいな」


「私にもチャンスがあるって事よね」

「未来は分からないから」


「最低ですね」

「うん、最低」

「はっきりしろって言うんだな。分かったマイラを選ぶ」


「やった!」

「振られてしまいました。婚約を破棄すると言われてましたが、こうはっきり言われるとショックですね」

「私のチャンスはないって事ね。でも諦めない」


「そうですね。私も諦めません。では3人で食事にでも行きましょう」


 レクティがそう言って3人で行ってしまった。

 何を話しているのか気になったが、しばらくして3人で戻ってきた時は、ギスギスした雰囲気はなくなっていた。

 どうなったのか教えてほしい。


 夜、マイラの部屋を訪ねた。


「ごめん」

「謝らなくていい。タイトが魅力的なのは罪じゃないから」

「俺はそんなに魅力的ではないと思うけど」


「怒るよ。タイトは魅力的。強い所も、素直な所も、優しい所も」

「そうかな」


 二人の間を沈黙が支配した。

 何と言ったら良いんだろ。

 歯の浮いた台詞を言ってみようかな。


「マイラは俺にとって、最初で最後の女だ」

「うれしい」


 マイラが抱きついてきた。

 マイラが俺の体を撫でまわす。

 これはやばい。


「ちょっと」


 マイラを引きはがす。


「私の事嫌いになった?」

「そうじゃない。俺は7歳でマイラは11歳だ。この年齢にふさわしい付き合い方をしよう」

「それってどんな?」


「ええと」


 小学2年生の恋愛ってどんなだ。

 交換日記したり、一緒に漫画読んだり、アニメ見たりかな。

 この世界でやるとしたら、劇場は行ってもいいけど、あれって大人の娯楽だよな。

 昔の子供の遊びをやったらいいのか。

 メンコとか竹馬とか縄飛びとかそんなのか。


 何だかマイラがやるのはしっくりこない。

 一緒に冒険している方が楽しいと気がついた。


「冒険しよう。二人だけでだ。未知を探索しよう」

「いいね。約束。絶対だよ」


「約束する」


 二人で冒険するって言ったら、レクティとセレンは猛反対するだろうな。

 どう言って説得しよう。

 うるさい、女性との付き合いは俺の勝手にさせろと言えたらどんなに良いか。

 もしかして、レクティとセレンはショタなのか。

 二人とも年上だ。

 レクティとセレンは共に13歳だ。

 中学生が小学2年生を好きだと言ったら、確実にショタだな。

 よし、年齢操作の魔道具で12歳になろう。

 これならマイラより一つ上で釣り合いも取れるし、二人がショタなら俺に見向きもしなくなるだろう。


 中学ぐらいが着る制服なら、購買で売っている。

 シャツも売っているし、学園で過ごすなら服は揃う。

 ちなみに、今着ている制服は特注だ。

 小学2年生の年齢で学園に受かる奴はいない。

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