第116話 12歳と、お絵かきと、発明

 朝になり12歳になってみた。


「タイト、好き」


 マイラが俺に抱きつく。

 マイラには好評だ。

 年上なのを気にしてたからな。


「素敵になられて、私も抱きつきたいところです」


 あれっ、レクティにも高評価だぞ。

 ショタじゃなかったのか。


「旦那様、お替わりはどうですか」


 ダイナの様子も変だ。

 旦那様なんて言われた事は今までないぞ。

 まあ、ご飯のお替わりは貰ったが。


 みんなの見る目が違う。

 授業に出ると、セレンが。


「タイトよね。素敵じゃない。魔法でやったの」


 あれ、セレンにも好評だ。

 授業が終わり、おも研究に赴く。


「タイト、男っぷりが上がったのだ。面白い魔法を知っているのだ」

「ライバル登場って所かな。タイト君には負けないよ」


 もしかして、俺って歳をとるともてるようになる。

 イケメンなのか。


「ぐぬぬ。歳をとるのを禁止と言いたいけど。私との釣り合いも。もってけ泥棒。タイトはこれから12歳でいて」


 マイラが葛藤の末に答えを出したようだ。

 後5年すれば今の姿になるんだけど、早くても構わない。

 前世では大人だったから、この方が違和感が少ない。

 みんなの態度には違和感ありまくりだが。


 マイラはお絵かきを始めるようだ。

 絵の具で何を描いているのか、分からない物を描き始める。

 これ何とは聞けない。


 しばらく見ていたら、絵がぼんやりと光った。

 えっ、今の何?


「マイラ、光の魔法を使った?」

「使わないけど」


「まだ光ってる」

「うん、そうだね」


 ええと、どういう事だ。


「もしかして、特殊な絵の具を使ったとか?」

「うん、魔石を液体にしたのを作ったでしょ。変わった色が出るかと思って、あれに色々と混ぜたの」


「混ぜた材料を教えてくれる」

「いいよ」


 絵の具の調合を教わった。

 それで俺も描いてみたが、何も起こらない。

 不思議だな。


 考えてみた。

 創作物の中に魔法陣というのがいうのがある。

 形で魔法の代わりをするものだ。

 マイラの絵が偶然、魔法陣になった。

 あり得る事だ。


 俺はマイラの絵のパーツを抜き出して一つ一つ描いていった。

 あるパーツを書いたら、ぼんやりと光った。

 これだ。

 この形が光の魔法陣なんだ。

 もっと色々あるに違いない。


「面白そうな事をしているのだ」

「絵とは美しい」

「光る絵の具は確かに面白いと思う」

「商品になりそうです」


「皆もやってみる?」


「やるのだ」

「花を描こう」

「何を描こうかな」

「私は風景がいいですね」


 検証の結果、単色では魔法陣にならない事が判明した。

 反応したのは、どれもモンスター由来の物を混ぜた絵の具だ。


 小さい火とか水とか色々出たが、まさか放射線とか出てないよな。

 魔道具で考えつく限りの測定器を作る。

 良かった放射線は出てない。

 電波を出しているのは何種類かあった。


 電気を計測するテスターも作る。

 電気も出ているな。


 みんなの協力もあり、形と現象の色んな組み合わせが出来た。

 これは学問になるぐらい奥の深い物になりそうだ。

 形とか現象とかの種類はまだまだ増えそう。


「マイラ、大手柄だ。魔法陣の発見者として、マイラの名前は永遠に残ると思う」

「でたらめに絵を描いただけなのに。嬉しいような恥ずかしいような」


「初めて光った絵は、博物館に所蔵されるかもな」

「ちょっと止めて。恥ずかしすぎる」


「でも仕方ないよ。歴史的発見だから。風呂に入って発見した人もいるんだ。それで裸で走り回ったらしい。それに比べたらどうって事はないよ」

「本人じゃないから。言えるのよ」


「と言う事で、この絵は俺が大事に保管しておくよ」

「えーやだ」


「よく見たら味のある絵なのだ。何を描いたか分からないのが良いのだ」

「会長もそう言ってるし」


 それにしても大ごとになった。

 これは一大産業が興るな。

 国家的プロジェクトにするのが相応しい。

 流民にでたらめな図形を描かせて、新たな機能を発見したら、懸賞金を払うといった事を始めてもいいかもな。

 誰に話を持っていこう。


 オルタネイト伯爵辺りが適任なような気がする。

 レクティとの婚約が、ますます断りづらくなるような気がする。

 たぶん、あの人の事だから、マイラも一緒に抱き込んでしまえと言うだろうな。

 それにしても魔法陣か。

 考えてなかったな。

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