第113話 姿隠しと、赤外線と、さよなら

 進入路の問題は方がついたので、増税の証拠を押さえる事にした。

 深夜、姿隠しを使い、役所に入る。


「父から聞きましたが、姿隠しは便利ですね。暗殺者が使うと考えたらぞっとしますが」

「これ貸してほしいです。ありのままの猫を見てみたい」


「猫は気づくかもな。マイラも気づいていたし」

「普通は気づくよ。気配は消せない」


「誰か来ます」


 巡回の兵士のようだ。

 光の魔道具を持って、歩いている。

 雑談をやめて俺達はやり過ごした。


「ここからは、お喋りなしでいこう」


 役所の扉の鍵をドリルで穴を開けて壊した。

 どうせばれるのだから、時間を優先した。


 金庫もドリルで対処した。

 灯りはさすがに不味いので、赤外線を使う事にした。


extern MAGIC *infrared_lamp_make(float mana);

extern int mclose(MAGIC *mp);


void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 mp=infrared_lamp_make(0.000005); /*赤外線ランプを作る*/

 while(1); /*無限ループ*/

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

}


 これが赤外線で。


extern infrared_eye(void);


void main(void)

{

 infrared_eye(); /*赤外線を見る*/

 while(1); /*無限ループ*/

}


 こっちが赤外線ゴーグルの代わり。

 これの魔道具を使って、書類を見ると白黒で見える。

 文字もはっきりと見えた。


 関係ありそうな書類は根こそぎ収納魔法で奪う。

 これでミッションコンプリートだな。


 あとは帰るだけだ。

 サイラの家に戻るとサイラが家の前で待っていた。


「行っちゃうのね」

「また来るよ」

「そうそう、飛べば早いから」

「お世話になりました」

「猫によろしく言っておいて下さい」


「サイラは猫を飼っていたのか」

「ううん、野良を可愛がっていただけ」

「猫好きだものな。そうだエレクの子供が産まれたら1匹もってくるよ」


 サイラとの出会いも猫を助けていたんだよな。

 あと1年もすればエレクにも子供が出来るだろう。

 お嫁さんを探してきてやらないとな。


「うん、期待してる」


 サイラと別れて、文字通り飛んで王都に帰った。

 ランシェの所に顔を出す。


「増税の証拠は、ばっちり盗ってきた」

「大儀である。でどうだったのであるか」

「戦争待った無しというところだね」

「そうであるか」


「進入路の地図を作ってきた。使わないのに、越したことはないけど」

「であるな。ご苦労であった。ゆっくり休むがよい」


 寮につく早々、ダイナは真っ先にエレクのところに行った。

 マイラは知り合いに土産物を配りに出かけた。


「赤外線の魔道具。安く売ってくれない。うちの装備にしたいの」


 レクティが甘えるような声で迫ってきた。


「駄目だよ。ランシェの所に持って行ってからだ」

「意外にけちですね。でもうちの工房でも何とか作れそうです。赤外線について詳しく教えて下さい」

「それぐらい、良いか。光は目に見える範囲以外にもあるんだ。目に見える光に近いのは紫外線と赤外線で、赤外線は暖かく感じるんだ」

「熱って事ですか」

「そう、熱を発する魔道具と、熱を見る魔道具という事だ」

「ええと、光らないで熱だけ発するんですか」


「例えば石を温めたりすると、石は光らないけど暖かいだろ」

「そう言えばそうですね」


「手を近づけても暖かさを感じる事ができるはずだ。空気も温められているけど、赤外線も出てる」

「なるほど。作れそうですね。肌で暖かさって感じ取れますもの。イメージし易いですね。暖かさが分からない職人はまずいないですから」


「簡単だろ」

「そうですね。でも、暖かいのが光でもたらされるなんて、考えもしなかったです」

「太陽の光がなぜ暖かいのかそれで説明ができる」

「物知りですね。勉強になりました」


 数日経って、ランシェから報せが届いた。

 タンタルに召喚状を出したが、頼んだ商人のいう事には盗賊に盗られたと。

 嘘なのは分かっている。

 分かっているが、じゃあ軍を差し向けようとは中々ならないらしい。

 軍を動かすには金が掛かるからだ。

 賛成派と反対派が拮抗しているとの事。

 難しいものだ。

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