第102話 通信と、税率と、潜入
サイラから通信の魔道具で報せが来た。
『こちら、サイラ応えて』
そう文字が表示される。
『こちら、タイト。どうぞ送って』
『ノッチは見つかった?』
『残念ながら』
『そう、こちらは大幅に税率が上がって大変』
『それは人に言わない方が良い』
『両親もそう言ってる』
『それが利口だ』
『じゃあまたね』
サイラの両親はバリアブル領に住んでいる。
なぜここかというと、ちょっと前までここが魔道具の一大生産地だったからだ。
そして現在は、王都とオルタネイト領とバリアブル領で横並びだ。
サイラにはバリアブルを出た方が良いとアドバイスを送ったが、商会の拠点を移すのは大変らしく、実現には至ってない。
通信の内容は問題がある。
ノッチの件は仕方ないとして、問題は税率が異様に上がったという報せだ。
税率は勝手に変えられないようになっている。
昔、無茶苦茶をやった領主がいて、それからは王の許可がないと出来なくなっている。
きな臭い話だ。
情報を集める為に、冒険者ギルドに行ってみた。
「バリアブル領の情報ある?」
「久しぶりね。また、やらかすのかしら」
「何で?」
「バリアブル領がおかしくなっているからよ。情報料は銀貨1枚ね」
「情報料が安いね」
「ええ、ろくな情報がないから。バリアブル領と現在は行き来が出来ないのよ。だから情報がない。人の行き来も手紙の行き来も駄目よ。行き来できるのは、領主がやっている商会の荷馬車だけ」
「何で行き来できないの?」
「盗賊のせいって事になっているわね。でもおかしい。そりゃ領主の荷馬車は兵士の集団が護衛しているけど、密偵まで行き来できないのはおかし過ぎる」
バリアブル領への手紙の配送が出来なくなっているらしい。
こちらからも送れないし、あちらからも届かない。
理由は盗賊のせいだという事になっている。
ますます、きな臭い。
「みんな、行くよ。じゃ、また」
掲示板を見ていたマイラ、レクティ、ダイナに声を掛けてから、冒険者ギルドを出た。
そして、次の目的地の王宮に足を向けた。
ランシェは現在、人に会えないと侍従に言われた。
そこをなんとかと言うと、タイト様だけならと。
ランシェの執務室に行くと大騒ぎだった。
書類で足の踏み場もない。
「すまん、今は相手は出来ない」
「いいよ、勝手に喋るから。バリアブルの友人から、税率が上がったとの報せが来た」
「何だと、わらわがやっていた苦労はなんだったのだ」
ランシェの書類を書く手が止まった。
「そう言うと思った。密偵が入れないんでしょ」
「そうである。税率の報せは、どうやったのであるか?」
「通信の魔道具を使ったんだよ」
「何っ、そんな便利な物が。くそっ、魔導師は全員がバリアブルに魔報は使えませんと言っておったぞ」
「たぶん嘘だろうね」
「これだから、魔導師は信用ならん」
「でどうするの?」
「誰か行かねばなるまい。行ってくれるか?」
「仕方ない。行くよ」
「おおそうか。大儀である」
次の目的地はバリアブル領だ。
色々と準備が必要だな。
「レクティ、ダイナ、今から二人に色々とする」
「何ですか?」
「エッチな事をするには日が高いですよ。いやん、犯される」
「具体的には収納魔法の空間の付与と、体の複製だな」
「凄いですね。空間付与は空間魔法使いの技だった気がします。空間魔法使いになられたのですね」
「体の複製作って、本人の知らない所で隅々まで」
「ダイナ、これをしないと回復魔法が掛からないんだよ」
「どっちも、やりたいですね」
「やりたいなんて、レクティはちょっと下品」
「ダイナ、おふざけは、ほどほどにしとけ。エレクのお触りを禁止するぞ」
「エレクと会えなくなるので、怒られたら居残りされないかと」
「するわけないだろ。マイラに匹敵する戦力だぞ。首に縄をつけても連れて行く」
「仕方ないですね」
二人に空間を付与して、体のバックアップを取った。
魔力アップと常時回復の魔道具も持たせた。
これで準備は出来たと思う。
後はどうやってバリアブルに入るかだ。
街道は当然封鎖されている。
仕方ない。
二人にも姿隠しの魔道具を与えよう。
これなら街道から入れる。
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