第101話 魔力印と、魔力抜き取りと、ざまぁ

 さて、まずは賃貸契約書の確認だ。

 俺は商業ギルドで閲覧許可をとって契約書の魔法印に触った。

 ぼやっと光る魔法印。


「この魔法印を剥がすとどうなる?」

「契約書が燃えます」

「それを新しい契約書に付けると」

「やっぱり燃えます」


 なるほど、セキュリティはある程度はあるみたいだ。

 俺は帰りがけにカウンターに行き。


「魔力の入ってない魔法印付きの紙はあるか。5枚ほどくれ」

「ございます。契約に使われるのでしたら、ギルドの者が立ち会いますので、その時はお声がけ下さい」


 よし、これで実験ができるぞ。

 寮の部屋に帰って実験を開始した。


「マイラ、これに魔力を込めてくれ」

「うん」


 マイラが魔法印に魔力を込める。

 さてここからだ。


「【マイラの魔力よ移れ】」


 空白の魔法印に魔力を移そうとしたが駄目だった。


「普通の手段では魔力は認識できないんだって」


 マイラも良く勉強してる。


「プログラムを組まなきゃ駄目か」


 俺は魔力を移すプログラムを組んだ。


char magic_signature_mana1[1000]; /*魔力印の魔力1000*/

char magic_signature_mana2[1000]; /*魔力印の魔力1000*/

void main(void)

{

 int i; /*カウンタ*/

 for(i=0;i<1000;i++){

  magic_signature_mana2[i]=magic_signature_mana1[i]; /*魔力を移す*/

  magic_signature_mana1[i]=0; /*元は無くなる*/

 }

}


 実行してみると、駄目だった。

 他人の魔力と魔法は反発する。

 そういう理屈だったな。


 じゃあ魔力同士はどうなんだ。

 空気中では他人の魔力も混ざり合っているはずだ。

 反発するなら何かしら現象が起こるはず。

 マイラの魔力がある魔法印に俺の魔力を入れる。


char my_mana[1000]; /*俺の魔力1000*/

char magic_signature_mana[1000]; /*魔力印の魔力1000*/

void main(void)

{

 int i; /*カウンタ*/

 for(i=0;i<1000;i++){

  magic_signature_mana[i]+=my_mana[i]; /*魔力を混ぜる*/

  my_mana[i]=0; /*元は無くなる*/

 }

}


 上手く混ざったかな。

 魔法印に俺が触るとぼやっと光った。

 マイラが触っても光る。

 成功だ。


 よし、魔力を移すプログラムを実行。

 今度は上手くいった。

 混ぜた事で反発が無くなったんだな。


 やつらのからくりが分かった。

 魔力を混ぜてから移したんだ。

 ただ、魔力を認識するのが難しいので普通の奴では駄目だ。

 たぶん魔導師でも特殊な奴がやったんだろう。


 まだやる事がある。


char magic_signature_mana; /*魔力印の魔力*/

char my_mana; /*俺の魔力*/

char main(void)

{

 return(magic_signature_mana-my_mana);

}


 これを賃貸契約の魔法印に対して使うのだ。

 やってみた。

 よし、誰が魔力を混ぜたか覚えたぞ。


 宿の前で姿を隠して張り込み。

 空気中の魔力を混ぜられた魔力と比べる。

 驚いた事に魔力は偽ニオブのだった。

 てっきり魔導師がやったと思ったんだがな。


 からくりは見抜いた。

 後は対決するだけだ。


 一週間後、俺は商業ギルドに行った。

 そして、俺は賃貸契約書を確認するふりをして魔力を持って来た契約書に移した。

 それから少し小細工した。


char my_mana; /*俺の魔力*/

char magic_signature_mana[1000]; /*魔力印の魔力1000*/

void main(void)

{

 int i; /*カウンタ*/

 for(i=0;i<1000;i++){

  magic_signature_mana[i]-=my_mana; /*俺の魔力を抜く*/

 }

}


「あれっ、賃貸契約書の魔法印が光らないぞ。偽物じゃないのか」

「そんな馬鹿な」

「ニオブ、どうなっておる」


「ほら」


 俺は触ってみせた。


「ぐっ、インチキしたな」

「何の事かな」


「だが、売買契約書は手元にはないぞ。登記が出来ないはずだ。あの屋敷は僕達の物だ」

「これは何かな」


 俺はさっき魔力を移した契約書を見せた。


「そんなのお前が魔力を込めたんだからいくらでも作れるだろう」

「そうか。じゃ触ってみろよ」


 俺が作った契約書に偽ニオブが触る。

 ぼんやりと光る魔法印。


「お前が魔力を込めたんじゃないか。やだな忘れたのか」

「嘘だ。こんな契約書知らない。そうだお前の魔力が混ざっているはずだ」

「そうか」


 俺が触るが光らない。


「なぜだ!」

「もう1枚ある」

「それは……詐欺を証明する証明書だと」

「ほら触れよ」


「くそっ、光った。どうなっている」


「ギルドではこういう場合はいかがしますか?」

「詐欺の証明書がある以上いたしかたありませんな。売買契約は成立している物とします。ですが、まだ終わっていません。詐欺の手引きをした商業ギルドの職員がいるはずです。喋ってもらいましょうか」


「僕は知らない」

「そうですか。では詐欺の証明書を証拠にバリアブル公爵を処分致します。資産を凍結させてもらいます」

「ニオブ、どうなっておる」

「知らない。知らないんだ」


「凍結してもよろしいですか」

「駄目だ。それは不味い。破産に等しいではないか。ニオブ、なんとかしろ」

「くそう。示談だ。示談すれば問題ないだろう」


「じゃあ、慰謝料金貨2万枚とバリアブル邸な」

「仕方ない」


「示談は成立しましたが、規約違反である事は間違いありません。ギルドとの取引を全面停止にします。口座は解約して下さい」

「ぐぬぬ。ニオブ、帰るぞ」

「はい、父上」


 肩を落としてタンタルと偽ニオブが帰っていく。

 ざまぁみやがれ。

 金貨2万枚とバリアブル邸は俺の物となった。

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