第84話 追跡魔法と、牢屋飯と、震える手

 やっちまった。

 マイラが出かけている時に不用意に扉を開けたら、猫のエレクがするすると脇から飛び出した。

 あっと、思った時には遥か彼方。

 逃がしてしまった。

 腹が減れば戻ってくるような気もするが、追跡魔法を作るべきだろうな。



#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>


extern char *direct_convert(int area);

char mana[1000000]; /*空気中の魔力*/

void main(int argc,char *argv[])

{

 FILE *fp; /**/

 int i; /*カウンター*/

 fp=fopen("カニキクカ","w"); /*結果の送り先。この場合は俺に*/

 for(i=0;i<sizeof(mana);i++){ /*範囲を全て調べる*/

  if(mana[i]==*argv[1]){ /*空中の魔力と探し物比較*/

   fprintf(fp,"方向は%s",direct_convert(i)); /*方向を伝言として送る*/

   fclose(fp); /*閉じる*/

   return;

  }

 }

 fclose(fp); /*閉じる*/

}


 出来た。

 エレクの魔法を実行する時にエレクの魔力を思い浮かべれば良い。

 空気中にあるエレクの魔力の痕跡を追う。


 俺は痕跡を追ってゆっくりと歩きだした。

 痕跡は寮を出て校舎の方に続いている。


 校舎の食堂の裏手に出た。

 何だ腹が減ってたのか。

 そういえば餌をあげてない。

 エレクごめんよ。


「白い猫を見ませんでしたか」


 食堂の人がいたので聞いてみた。


「来たよ。おばさんが餌をあげてたな」

「ありがとう」


 さて追跡、再開だ。


 痕跡は講堂の方に続いていた。

 角を曲がると白い猫が見えた。

 エレクだろう。


 俺は駆け出した。

 逃げるエレク。

 ちょっと待て。

 逃げるなよ。


 魔法の力場で柵を作る。

 もう袋の鼠だぞ。


 俺は両手を広げエレクに近寄った。

 するすると逃げて行くエレク。

 降参するもんか。

 仕方ないあれを使おう。

 暴徒鎮圧用の魔法の力場で、物を吸い寄せるタイプの力場だ。


 吸い寄せられると動けなくなる。


extern MAGIC *gravitational_point_make(float mana);

extern int mclose(MAGIC *mp);

void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 mp=gravitational_point_make(1.0); /*重力の点を作る*/

 while(1);

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

}


 スペルブックを開き、前方に力場展開。


 エレクが力場に吸い寄せられる。

 俺も吸い寄せられて、距離が近づく。

 捕まえた。


「にゃー」


 嫌がっているふうもないな。

 力場魔法を解除。


「エレクとお散歩?」


 マイラが俺達を見つけて駆け寄ってきた。


「警備兵ごっこさ。エレクには牢屋飯をだすぞ。玉ねぎ抜きの、薄塩だぞ」

「それは恐ろしいね」

「だろ」



Side:ダイナ


 タイトが一人で出かけた。

 チャンスだ。

 何かを探しているようだけど、関係ない。


 追跡していたら、講堂の近くに辿り着いた。

 ここで仕留めよう。

 物陰に隠れて機会を窺う。

 私は投げナイフを構えた。

 あれはエレク。


 外すとエレクに当たるかも。

 そう思ったら手が震えた。


 大丈夫、絶対に外さない。

 投げようと思った瞬間。

 体が吸い寄せられた。

 不味い。

 出て行くと正体がばれる。

 私は地面に投げナイフを突き刺し、耐えた。


 タイトがエレクを捕まえて魔法は終わった。

 ここで仕留めよう。

 頭を狙えばエレクはきっと大丈夫。


 私の手がまた震えた。

 視界にマイラの姿が映る。

 ちっ、運の良い事だ。

 今回の襲撃は諦めよう。

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