第83話 元締めと、100個限定と、転売対策

 久しぶりに元締めに呼ばれた。


「何か用?」

「魔道具を作る数が増えて一人じゃ手が回らん」

「種類は減らせないから、数を制限したら良いんじゃ。儲けは十分でしょ」


「十分だが、十分なんだが、儲けられる時に儲けておかないと」

「元締め、賭けに嵌った奴の態度だよ。そういう奴は破滅する」

「マイラ、お前はそういうが、濡れ手に粟なんだぞ」


「転換点に来ているのかもな。魔道具の生産をする人間を増やすか」

「そいつは上手くねぇ。信用できる奴なんぞおらん」


 魔道具を作る魔道具さえあれば、高性能の魔道具が作り放題ってのが不味いんだよな。

 持ち逃げされる危険もあるし、色々と考えられる。

 打開策を考えてみた。

 魔道具を作る呪文を改良する。


extern MAGIC *magic_tool_init(void);

extern void magic_tool_write(MAGIC *mp,char *spell);

extern int mclose(MAGIC *mp);

int make_counter_get(void); /*今まで作った数を獲得する*/

void make_counter_increment(void);


void main(void)

{

 MAGIC *mp;


 if(make_counter_get()>99) return; /*今まで100個以上作ったらストップ*/

 make_counter_increment(); /*今まで作った数を一つ増やす/


 mp=magic_tool_init(); /*魔石に呪文を書き込む準備*/

 magic_tool_write(mp,"extern MAGIC *magic_tool_init(void); extern void magic_tool_write(MAGIC *mp,char *spell); extern int mclose(MAGIC *mp); void main(void){ MAGIC *mp; mp=magic_tool_init(); magic_tool_write(mp,\"ここに呪文を入れる\"); mclose(mp); } "); /*魔石に呪文書き込み*/

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

}


 これで魔道具が100個しか作れない物が出来た。

 これなら持ち去られても被害は限定的だ。

 再び使えるようにするリセットの呪文はこうだ。


#include <stdio.h>

#include <string.h>


extern MAGIC *magic_tool_init(void);

void make_counter_reset(MAGIC *mp);


void main(int argc,char *argv[])

{

 MAGIC *mp;


 if(strcmp("パスワード",argv[1])!=0) return;


 mp=magic_tool_init(); /*魔石に呪文を書き込む準備*/

 make_counter_reset(mp); /*今まで作った数をゼロに/

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

}


 100個作ったら元締めの所に持って来てリセットして貰えば良い。

 これなら危険なのは元締め一人だ。

 今までの状況と変わりがない。

 それにパスワードを付けたから、リセットの魔道具を持ち去られても、元締め以外には使えない。


「これでどうだ」

「いいな。これで頭の痛い問題が幾つか消えた。特に頭が痛かったのが転売だ」


「量産が進むと安くなって転売が無意味になるのか」

「それだけじゃない。数が多いって事は田舎まで正規の販売ルートで売れる。転売してた奴らは魔道具が安くなって大慌てするぞ。どこに持って行っても転売の方が高い。うはははっ、ざまぁ見やがれ」


 大笑いする元締めに犯罪組織だった頃の面影を見た。


「バリアブルの奴らに更に恨まれるな」

「生きていくには仕方ない事だ。笑う奴がいれば、泣く奴がいる。あぶれた奴は可哀想だが、仕方ない」

「なるべくバリアブル出身の流民は雇ってあげてよ」

「おお、俺も鬼じゃねぇ。飴も必要だと承知しているぜ」


 転売か。

 そういう奴らが出てくるとは思ったけど、対策が出来てよかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る