第80話 無くなった毒薬と、毒探知と、出て来たクッキー

「ない、ないのだ! 大変なのだ!」


 おも研でお茶会をしていたら、エミッタが騒ぎ始めた。


「会長、何がないんです? 錬金術のレシピでもなくしました?」


 アキシャルが何時もの事と気軽に声を掛けた。


「毒薬が一瓶消えたのだ。たぶん砂糖の瓶と間違えてクッキーに入れてしまったのだ」


 クッキーを食べていた全員の手が止まる。

 そして、クッキーを凝視。


「もしかして、この俺達が食べていたクッキーではないですよね?」


 俺は恐る恐る聞いた。


「分からないのだ」

「ええっ! 管理しとけよ! 会長職をはく奪するぞ!」


「タイト、落ち着いて。毒ならもう死んでる」

「マイラ、遅効性というのもあるんだ。致死量ってのもね」

「僕は今日、花の様に美しく散るのだね。めまいがしてきたよ」


「解毒剤をみんなで飲みましょう」


 そう言ってセレンが解毒剤を探しにいった。

 落ち着け。

 こういう時こそ、魔法だ。


#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>


extern int poison_check(char sample);

extern void speak(char *ss);


char taste; /*味*/

char main(void)

{

 if(poison_check(taste)==1){

  speak("毒発見"); /*音声を流す*/

 }

 else{

  speak("安全"); /*音声を流す*/

 }

 return(taste); /*味を返す*/

}


 よし、これで良い。

 クッキーに照準を合わせて、魔法実行。

 安全の言葉が発せられた。

 良かった。

 安全だ。

 じゃあ、毒入りクッキーはどこにいった。


「エミッタ、クッキーを誰かにあげた?」

「あげてないのだ。でも寮の厨房を使ったから、誰かが持って行ったかも知れないのだ」


 うがぁ、仕方ない。

 学園の人数に合わせた毒検知の魔道具を作って、配布しよう。

 間に合わないかも知れないが、やるしかないだろう。


 魔道具を作る魔道具で毒検知の魔道具を量産。

 手あたり次第、配りまくった。


 生徒会にも声を掛け、事情を説明して協力を仰いだ。


 後は待つだけだ。

 生徒会の毒対策本部に発見の通報がなされる。


「あの、ジュースに入ってたんですけど」

「なんだって。クッキーに入れたと言ったじゃないか。エミッタ、ボケたのか」


 俺はエミッタにアイアンクローをかました。


「痛い。痛いのだ。ギブアップなのだ」


「あの、チョコレートに入ってました」


 女生徒がチョコレートを差し出す。

 なぬ、どういう事?


「私に任せたまえ。ふんふん、ジュースのは下剤だな。チョコレートは媚薬の一種だ」


 生徒会長のアノードがそう判断した。


「詳しいですね」

「なに、貴族の嗜みという奴だよ」


 それから、続々と報せが入る。

 アキシェルがクッキーを持って現れた。


「いやあ、心中でも狙われたのかな。美しい女性が僕が差し出した花の代わりにクッキーをくれたんだ。魔道具を使ったら大当たりさ」


「良かった。被害がなくって」

「嫌、良くないのだ。このクッキーに見覚えはないのだ」


「ふんふん、このクッキーは貴族が暗殺に使う毒だな。ある植物から採られる」


 またしてもアノードが毒を当てた。


「違うのだ。私の毒は鉱物から抽出した物なのだ」


「あのう」


 女生徒が毒と書いてある瓶を持って現れた。


「昨日、厨房に毒が置いてあったので、ネズミ駆除用かと思って片付けておいたんです。騒ぎがあったので、気になって人に聞いたんですけど、誰も置いてないって」

「それ、それなのだ。なくなった瓶なのだ」


 うわっ、収拾つかないぞ。


「大儀である。皆の者。事件の捜査はアヴァランシェが全て引き継ごうぞ」

「ランシェ、お疲れ様。お願いします」

「任せろ」


 こうして毒事件は、収拾する事になった。

 それにしても毒が飛び交っているなんて、なんて物騒な学園なんだ。

 まあ下剤とか媚薬とかは、ほとんど効果がない物だったけれど。



Side:ダイナ

 失敗した。

 タイトの知り合いのチャラチャラした青年に、皆さんで召し上がって下さいと、クッキーを渡したが。

 見事、見破られた。

 それどころか毒感知の魔道具を持って近衛兵がウロウロしている。

 不味い事態になった。

 毒は全て放棄せざるを得ない。

 こうなったら近接戦を挑むしかないか。

 今しばらく機会を窺おう。

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