第79話 ゴブリン農場と、毛長ゴブリンと、ぬいぐるみ

 ゴブリン農場が生まれ変わったと言うので見に行った。


 あれっ、飼育されているのがゴブリンじゃない。

 雪男の小さい版みたいなのが歩いている。


「可愛いい。もふもふ」


 マイラがそれに抱きつき、じゃれる。


「どうです。わしらのゴブリンは。見事な毛並みでしょう」

「えっ、その俺達の背より低い雪男はゴブリンなの」

「ゴブリンの肌がツルツルなのは、激しく動き回るからなんでさぁ」

「へぇ、知らなかった」


「わしらも知りやせんでしたが、敵が居ないと判ったら寝てばかりで、こんなになったんで」

「肥満の肉が毛の方に行くのか。謎生態だな」

「おまけに寒くなくなったのか、食べる餌の量も減っとります」


「で、俺を呼んだって事は相談事かな」

「この毛長ゴブリンを、ペットとして売り出そうか考えている最中ですが……」


 急に黙る飼育員。


「問題がありそうだね」

「こいつら普段は大人しいが、たまに野生に戻るんでさ」


「ありがちだね。猿も一年に一回ぐらい飼っている人間に、反抗するらしい。群れの順位を確かめるための行為なんじゃないかな」

「良く考えたらわしらも似たようなもんだ。たまに上とやってみたくなるってもんで」


 奴隷化の魔法は、魔導師の魔法だから、ちょっと不味い。

 でも、そういう安全装置がないとな。

 気を許して一緒に暮らしていたら、寝込みを襲われたなんて事になったら、洒落にならない。


 中途半端に頭も良いのが難しい。

 檻を自分で開けるぐらいしそうだ。

 道具も使うからな。

 猿より頭が良い。


 奴隷化の魔法は作りたくないな。

 魔導師に知られたらややこしいのもあるが、倫理的にあまりやりたくない。

 奴隷の首輪なんてものも、ちょっとどうかと思う。

 人間に悪用される危険性が大だ。


 大人しくさせるのだったら、リラックスの魔道具なんてどうか。

 いや、魔道具の魔力が切れていたのに気づかず、やられていたという事態も考えられる。

 上手くいかないな。

 いっそ、性格を変えてしまおうか。

 魂を弄ればできない事もない。

 この方法は恐ろしいな。

 これじゃマッドサイエンティストだ。


「無理だね。毛を刈って何かに使った方が良いかもしれない」

「やっぱり、そうですか。そんな気はしてたんです」

「毛を刈っちゃうの」

「マイラ、もふもふはエレクで我慢するんだな」

「うん、我慢する」


 ゴブリン牧場の人が総出でゴブリンの毛を刈り取る。

 そして一人が毛で玉を作り、毛長ゴブリンのぬいぐるみを作った。


 やっぱり、子供に与えるのならこういうのがいいよな。

 これなら反抗して人間を殺しにもこない。

 付属の魔道具を考える。


extern MAGIC *button_make(float mana);

extern int touch(MAGIC *mp);

extern void speak(char *ss);

extern int mclose(MAGIC *mp);


void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法の定義*/

 mp=button_make(0.00005); /*ボタン生成*/

 while(1){

  if(touch(mp)==1){ /*ボタンに触った*/

   switch(rand()%5){

    case 0:

     speak("くきゅう"); /*音声を流す*/

    break;

    case 1:

     speak("くぷ?"); /*音声を流す*/

    break;

    case 2:

     speak("きゅうきゅう"); /*音声を流す*/

    break;

    case 3:

     speak("くんくん); /*音声を流す*/

    break;

    case 4:

     speak("ぷった"); /*音声を流す*/

    break;

   }

  }

 }

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

}


 この魔道具をぬいぐるみにつける。

 5つの鳴き声がするようにした。

 子供に受けるに違いない。


「これでこいつらを、寿命以外に殺さなくてもいいんで、良かったです」


「殺す必要がないなら。殺す事もない。必要があれば、容赦はしない。魔石は必要だよ」

「いやマイラ、必要があってもよく考えないと」

「うん、考える」


 少しでも平和な世界になってくれるといい。

 でもなぁ、状況が許してくれなさそうだ。

 偽ニオブは何かやらかしそうだし、魔導師も黙っていないだろう。

 殺しはモンスターぐらいにしときたい物だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る