第73話 お墓と、変装と、復讐

Side:???


 憎い、こんな事になった原因の貴族が憎い。

 僕は母さんのお墓の前で怒りに震えた。


「復讐したくはないですか」

「誰です!? したいよ、できるならばね」

「手を貸してあげますよ」


「僕は何をしたらいいんです?」

「まず魔法で顔を変えてもらいます。それから公爵家に行ってニオブのふりをしてもらいましょう」

「ニオブというのはどんな人物なのですか?」

「公爵家の嫡子です。貴族です」


「僕に憎い貴族のふりをしろって言うのか」

「ええ。復讐にはそれが早道だと分かるでしょう」


 母さん、復讐の為に憎いあいつらの身分になる事を許してほしい。


「分かったよ。やるよ」


 姿の見えなかった相手が姿を現した。

 ローブを着ていてお面を被っている。

 相手は本を開いて、何かの準備をした。

 分かった、これから魔法を使うんだね。

 まさか僕を殺すつもりじゃ。

 でも信じてみよう。


「では行きますよ【顔面変形】」

「くあああっ」


 僕を激しい痛みが襲った。


「どうですか。新しい顔になった気分は」


 僕は鏡を差し出され自分の顔をまじまじと見た。


「ふぅふぅ、あまり元の顔と変わらない」

「そうでしょう。そういう人を選びました。肉を変えるのはいいんですが、骨まで変えるのは大ごとです」

「そういう魔法の事は分からないけど、あれより痛いのは勘弁してほしい」


「これを見に着けて下さい」


 差し出されたのは7センチぐらいの魔石。

 職業柄これは知っている。

 Aランク魔石だ。

 こんな高価な物を。

 僕はそれを懐に入れた。


「【鑑定】。うむ、魔力が3万を超えました。成功です。この魔道具に毎日、魔力を注がないといけません。あなたの魔力では少ないでしょうから、手の者を派遣します」

「好きにやってくれていい」

「さあ、行きましょう」


 僕は打ち合わせをした後に、公爵家の城に連れていかれた。


「ニオブです。名前以外の記憶はありません」


 打ち合わせ通りの台詞を吐いた。


「この声と顔つきニオブ坊ちゃんに違いありません」


 僕はニオブに声が似ているらしい。

 不思議だ。


「トロイダル男爵を呼び出してくれる」

「その者が何か?」

「特別に世話になったから、お礼を言いたい」

「はい、ただいま」


 しばらくして、男爵が入って来た。

 こいつだ。

 こいつが母さんを殺した。

 憎い、憎い。


「【太陽火球】」


 僕は魔法を行使した。

 この魔法は魔道具でブーストしていないと使えない。

 良い物を貸してもらった。


「な、何を。ぎゃああああ」


 トロイダル男爵は燃え尽きて灰になった。


「坊ちゃん、どうされたのですか? 世話になったと仰っていたのに」

「世話になったというのは、酷い扱いを受けたという事だ」

「そうでしたか。トロイダル男爵の家族には、男爵は無礼討ちになったと言っておきましょう。たぶん病死と届けが出されるはずです」


 みんなが後始末に奔走する中、僕は自室にこもり一息ついた。

 ふぅ、復讐があっけなく終わった。


「僕はこれからどうやって、生きていけばいいんだ。誰か教えてくれ」

「貴族を殺しまくればいいではないですか。そして王族を手に掛けるのです」


 あの仮面の男の声がした。

 そうだね、貴族は山ほどいる。

 それを任命した王族もね。

 殺してあげないと、母さんが浮かばれない。


「何から手をつけたらいい?」

「力を蓄えるのです。そして、反乱を起こすのです」

「思っていた事があるんだ」

「何です?」

「それは……」


 僕は計画というか思っていたアイデアを話した。


「素晴らしい。指示しなくてもここまで考えられるとは」

「じゃあ、実行に移すよ」


 新しい目標も出来た。

 でもなんか虚しい。

 トロイダル男爵をあっけなく殺したからかな。

 拷問とかもっとひどい目に遭わせればよかったのかもね。

 まあいいや。

 そのうち貴族は沢山殺す。

 数を殺せば気も晴れるよね。

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