第2章 実家ざまぁ編
第72話 ニオブ登場と、偽ニオブと、噂好き
ニオブの死から一ヶ月、ニオブは行方不明とされた。
なぜなら、サージのスペルブックを回収したランシェが、事を秘密裏に処理する事になったのだ。
秘密裏にした利点は色々とある。
魔導師の魔法を学んでも魔導師が殺しに来ない。
もし、サージのスペルブックを読んだ王族が、一人でも殺されたら、魔導師と全面戦争になる。
国を二分する争いになるから、これは不味いと思ったのだろう。
魔導師敵対組織レジスタの仕業だと偽情報を流したらしい。
レジスタには迷惑だろうが、あの組織は元々魔導師と敵対している。
何とかするだろう。
それにまるっきり嘘ではないらしい。
サージのスペルブックの写本をレジスタに渡したとランシェは言っていた。
ニオブとバリスタはレジスタとサージの戦いに巻き込まれたとされたのだ。
生死不明という事になった。
この方針だと、サージから奪った書類で処刑される魔導師が処刑されなくなる。
こちらは王家の影が処理する予定らしい。
この辺が大人の落としどころなのだろう。
学園の廊下が騒がしい。
教室まで喧騒が聞こえてくる。
有名人でも来ているのかな。
教室の扉が開けられ中学生ぐらいの少年が入って来た。
俺はその姿を見てうっと息を飲んだ。
「あなたに会っておきたかった」
「お前はニオブ。生きていたのか?」
「嫌だなぁ。幽霊でも見たような顔をして」
「行方不明だって聞いたもんでな」
「記憶喪失になっていたんですよ。結局、記憶が戻らないので学園に戻ってきました」
ニオブの雰囲気から粗暴さが無くなっている。
まるで普通の平民が平民に接するようだ。
「喋り方と雰囲気が違うんだけどな」
「ええ、記憶を失ったせいですね。挨拶も済みましたし、ではこれで」
何者だ?
ニオブなのか?
確かに遺体はこの目にしてない。
してないが、あの攻撃で灰になったはず。
「マイラはどう思う?」
「偽物。歩き方が違う。記憶を失っても歩き方は変わらない」
なるほど、偽物か。
魔法で顔を変えたという線が濃厚だな。
魔導師の手の者だという推論が一番ありそうだ。
魔導師はどうしても公爵家を手に入れたかったのだろう。
一波乱ありそうな話はこれぐらいにして。
「三日後、サイラが王都に来るらしい」
「ほんとう! どんな子かな。会うのが楽しみ」
「性格は文通で分かっているだろ」
「あんな短い文章じゃ分からないよ」
「マイラにちょっと似てるから、気が合うと思う」
「それは少し心配。ううん、大丈夫」
「優しい子だから、きっと大丈夫だ」
何時間かして、授業が終わり、俺とマイラはおも研に行く事にした。
部室へ、ノックをせずに入る。
「聞いたか? 行方不明のニオブが戻って来たのだ」
エミッタが入るなり聞いてきた。
部屋には俺達の他はエミッタしかいない。
話したくてうずうずしてたんだろう。
「ああ、会ったよ」
「不思議なのだ。話に聞くけど、記憶喪失の人は初めてなのだ」
「性格から喋り方まで変わってたな」
「私が思うに超古代魔法文明が関わっているのだ。その末裔に手術を施されたのだ」
たぶん手術をしたのは魔導師だがな。
迂闊なことは言えない。
偽物だと言うと本物はどうしたって話になる。
俺が殺したと言うと騒ぎになる。
マイラが人数分のお茶を淹れてきて、それをテーブルに置いた。
さて、どう誤魔化そう。
「会長、火薬の配合比率はどうなりました」
「聞いてくれるか。8対1対1が今の所、いいのだ」
「そこまで分かれば、錬金魔法で調合できるなぁ。でも、秘術なんで、他の人にほいほい火薬を渡さないでくれよ」
「分かっているのだ」
「爆竹って言うのが欲しい」
マイラがそう言ってきた。
「作ってあげて。くれぐれも火薬の分量を間違えないでよ」
「任せるのだ。ところで舞踏会で言ったリニアの消息は掴めたのかね?」
「王家の人に任せているから分からないな。サージも行方不明だし」
「ふむ、陰謀の匂いがするのだ」
「くれぐれも首を突っ込むなよ」
「耳に色々と入ってくるのまでは、防げないのだ」
エミッタは耳が早いから重宝するけど、好奇心旺盛で危なっかしいんだよ。
偶然知った偽ニオブの秘密を喋って、魔導師に殺されないかひやひやする。
マイラはそういう点では口が堅いから安心できる。
エミッタにマイラの爪の垢を煎じて、飲ませてやりたい。
マイラも良く考えたら、情報収集に失敗して、バリスタに捕まったんだった。
行動力があって無謀な所がマイラらしいが、ここら辺はエミッタの方がましだ。
エミッタは行動的というわけではないからな。
結局、二人を足して2で割るとちょうどいい。
それだと個性が無くなるか。
上手くいかないな。
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