第48話 親族見学会と、パーティと、オルタネイト伯爵

 今日は親族見学会の日。

 まるで授業参観だ。

 小学生かよと思わないでもない。

 違うのは、授業が終わった後にパーティがあるって事だ。

 そう言えば小学校もPTAが集まったりしたっけな。

 変わらないのか。


 授業は何の波乱もなく終わった。

 俺とニオブでは受けている授業が違うので接点はない。

 魔法学園は単位制だ。

 必要な数の単位を取得して、卒業論文を出せば卒業できる。


 パーティの時間になった。

 帰りたいが、顔を出さないと不味いらしい。

 ニオブの野郎は両親といるな。

 バリスタを紹介しているようだった。


 バリスタの親も貴族なんだろうな。

 名前が3つあり、ファラドの名字を普段は隠しているようだったからな。


 貴族の中に一定数のファラド一族が隠れているに違いない。

 あーあ、ニオブ親子がこっちにやってくるよ。

 首を貰いに行く宣言をしたのをタンタルは忘れたのか。


「タイトではないか。元気だったか。今からでも遅くない、クラッド商会の利権を譲るようにしてくれないかね」

「お断りだ」

「おほほ。まあ、泥棒猫の産んだ子はしつけがなってない事」


 そう言ったのは中年というにはまだ若い女性でニオブの母親だ。

 彼女はノンポーラという名前で、表立って直接は俺と母さんを虐めてはいないが、陰でいじめを画策してた奴だ。

 主犯格と言っても過言ではない。


 ニオブはこいつの影響を強く受けている。


「おばさんの出る幕じゃないよ」

「誰がおばさんですか。あなたビシッと言ってやって下さい」

「これ、お義母さんに対して失礼だぞ」

「親子の縁は切れているものだと思ったが」


「まあなんだ。あれは無しだ。あれはお前に対する叱咤激励であってだな。本気じゃない。こうして立派に出世したからには、片意地張らずに言う通りにしなさい」

「覆水盆に返らずという言葉を知らないんだな。もう遅いんだよ。何もかもがな」


「父上、こんな奴は放っておきましょう。所詮奴はスペアです。代替品です」

「しかし、……こんな奴でも我が子だ。タイト、気が変わったらいつでも言ってきなさい。受け入れの準備は出来ている」

「お断りだ」


 タンタルの思惑は透けて見える。

 魔道具の利権がほしいだけなんだろう。

 ニオブを廃嫡して俺に跡を継げと言わないのがその証拠だ。

 嫡子にすると言われてもお断りだが。

 俺は別れも言わずにその場を離れた。


「君がタイト君かね? 私はパーマロイという者だ」


 品の良い紳士に話掛けられた。


「はい、タイトです」

「娘のアルミナから色々と話は聞いているよ」


 この人はオルタネイト伯爵らしい。


「この度はお悔やみを申し上げます」

「娘の事は運命だと思っているよ。分かるかね、時代の変化が迫ってきているのだ」

「娘さんの死と時代の変化は関係ないような気がしますが」


「いいや、これからは平民の時代なのだよ。貴族は時代遅れなのだ」

「平民が力をつける時代だと」

「その証拠が君ではないか。魔力が100少ししかないのに学園で優秀な成績を修めている」


 俺を調べたのか。

 だが、クラッド商会から辿れば、俺が怪しいというのは誰もが思うところだ。


「俺の後に続く人間は現れないかも」

「確かに天才の真似は出来ない。しかしだ、私には君が凡人に映るのだよ」


「天才を気取るつもりはないよ」

「そう、そういう所だ。天才は周りの評価など一顧だにしない。気取るつもりはないという事は、周りの評判を気にしているという事だ」


 天才ではないと自分が一番分かっている。

 プログラムの知識が少しあるだけの凡人だ。

 俺は人を一人殺しただけで震えて眠れなくなるような人間なんだ。


「俺は自分がどれだけ出来ないか知っている」

「やはり、君は天才ではないな。しかし、偉業を打ち立てている。そこが分からない」

「そこは俺の個性だと思う」

「才能ではない個性。実に興味深い」


 話が俺の核心に入ろうとしている。

 それは不味い。

 話をそらさないと。


「平民の時代が来ると言ってましたね」

「ああそうだ。貴族とて、矢で射抜かれれば簡単に死ぬのだよ」


 魔法に耐性があっても物理ではそうはいかない。

 確かに言う通りなんだが。


「平民が反乱を起こす。何かそういう兆候でも?」

「いや、兆候はない。いや、あるのか。今は話せないな」


 それからは話をはぐらかされてしまった。

 中途半端で終わったな。

 何だか事件に巻き込まれそうなフラグなんだが。

 オルタネイト伯爵も死ぬんじゃなかろうか。

 厄介事は勘弁してほしい。

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