第47話 動く死体と、連続殺人と、バックアップ

 マイラがスラムに用事があるというので付いて行く。

 着いた場所は何の変哲へんてつもない袋小路だった。

 いや、石が並んでいる。

 俺は意味を悟って手を合わせた。

 マイラは花を置いている。


「面白い動作ね」

「本で読んだんだ。異国の作法さ」

「帰りましょ」


 俺達は袋小路を出てしばらく歩いた。


「血の匂いがするわ」

「どこだ?」

「あっちよ」


 現場に駆け付けると、死体と思われるものがあって、死体はぶよぶよとうごめいていた。


「アンデッドか」

「何それ?」

「生きている死体さ」


 雑談しながらも死体からは目を離さない。

 死体は激しく動くとやがてぴくりとも動かなくなった。


「止ったわ」

「止ったね。話なんかだと、このあとに襲い掛かって来るんだけどな」

「そうなの。でも動かないわよ」


 俺はつま先で死体を突いた。

 うん、大丈夫のようだ。

 死因を探る。

 腹に傷があり、奥に何か見えた。

 ナイフで取り出して、手に取って血を拭きとる。

 それは真っ黒い6センチの石だった。

 魔力を当てると、魔力を吸いこむ感覚がある。

 魔石なんだろうけど、魔石の色は普通、赤だ。


「この石は何だと思う? 魔力を吸いこむから魔石だと思うんだけど」

「私に聞いても分からないわ」


 この黒い石を誰に見せたら良いかな。

 ランシェ辺りが無難のような気がする。

 俺も王族なんだけども、王宮は敷居が高い。

 だが、仕方ない、行くか。


 王宮の門の前に立った。

 門番に名前と用件を伝えると案内役が現れてランシェの執務室まで連れていかれた。


「遊びに来た様ではないな」

「これなんだけど」


 黒い魔石をテーブルに置く。


「これであるか。これならば知っているぞ。スラム一帯で今起きている連続殺人の被害者に、必ず埋め込まれている物だ」

「連続殺人って事になると何かの実験かな」

「そうであるな。その見立ては正しいだろう」

「国が把握しているのなら良い」


「もう行くのか。つれない奴だな」

「色々と忙しい」

「であるか。気を付けるのだぞ」

「そっちもね。そうそう、ファラド一族がニオブを使って王家転覆をはかっている」

「公爵家が取り込まれそうであるか。通達しておこう」


 さてと退散しよう。

 門の所に戻ってマイラと合流した。


「連続殺人みたい。何かの実験らしいよ」

「スラムの人達で実験するなんて許せない」

「マイラの知り合いには、気を付けるように言っておいた方が良いかもな」

「うん、そうする」


 連続殺人をしてる実験は何の実験だろう。

 首を突っ込むべきではないような気がする。

 組織みたいなものがバックに潜んでいそうだ。


 もし、尻尾をつかんだら、ランシェに報告だな。


 さてとサージの所でやっていた体のバックアップを取るとしようか。


#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>

void main(void)

{

 system("copy カニキクカ.body カニキクカ.bbak"); /*体のバックアップを取る*/

}


 実行してみたが異変はない。

 針で指を突いてと。


「痛っ」


 この魔法を実行した。


#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>

void main(void)

{

 system("copy カニキクカ.bbak カニキクカ.body"); /*体を治す*/

}


 指の血が止まって痛みが嘘の様に消えた。

 この魔法って不老不死なのか。

 そう言えば記憶は戻ってないな。

 記憶の管轄かんかつたましいということみたいだけど、脳は何の為にあるんだ。

 脳の上位の存在として魂があるのかも知れない。

 仕様に文句を言っても仕方ない。


 魂のバックアップを取ってみよう。

 うん、普通に出来たな。


 逆をやると空白の時間が生まれた。

 記憶の管轄は魂なんだな。

 魂のバックアップは頻繁に取るとしよう。


 色々と試してみて、不老不死はどうやら駄目な事が判明した。

 なぜなら体と魂の日付と時間が何もしなくても進んでいるからだ。

 もちろんバックアップもだ。

 日付と時間を変更してみても良いが、無駄な気がする。

 これも仕様なんだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る