第34話 アースと、薔薇の庭園と、グラインダー

「ところでカソード、電撃を消したよな。あれはどういう魔道具?」

「ああ、あれね。左手の皮手袋に針金を仕込んである。それで電撃に触ったのさ」

「何だ、ローテクかよ」

「そんな事はないよ。被覆して体に当たっても、感電しないようにしてある。凄い発明だろ」


 この世界にしては凄い発明なんだろな。

 被覆線とアースの仕組みか。

 カソードが考えたとは信じられない。


「お前が考えたのか」

「いいや、兄貴だ」

「やっぱりな。そんな気がしたよ」


 そして試合は進み。

 俺の出番となった。

 対戦相手はアキシャルだった。

 トーナメント表を見ると俺の知人とばかり当たるようだ。

 意図してと仕組まれたのか。


 いいや、偶然だろう。

 みんな勝ち残っているのが、奇跡みたいなものだしな。


「シャル君、頑張ってぇ」

「君達に花をプレゼントしよう【石英の花束】。見ててくれ。僕は君達に勝利を奉げるよ」


 アキシャルは余裕だな。

 花を作って配っている。


「きゃー、アキシャル君、こっち向いて」

「ずるい。あなた花を2本とったでしょ」

「絡まってくっついたのよ。無理にはがそうとすると壊れるわ。まるで私とシャル君みたいに」

「うわっ、寒っ。あんた言動が寒いのよ」


 女の子同士で喧嘩なんかも発生している。


「対戦相手の男の子、良くない?」

「ええっ、あんたショタだったの!? お付き合いお断りだわ!」


 俺のファンもいるようだ。

 別にファンなど欲しくないが、俺は醜男ではないようで安心した。


「準備はいいか。では始め」


「【薔薇の庭園】。タイト君、君に僕の花を散らせるかい」


 始めの合図と共に、アキシャルの周りに石英と鉄の花で庭園が出来上がった。

 防御の構えと言ったところか。


「【火球】」


 手始めに火球を撃ってみた。


「【薔薇よ防げ】」


 石英の薔薇が火球を受け止める。

 駄目なのは分かってた。


「これでどうだ。【電撃発射】」


 電撃は鉄の花に吸い込まれた。

 そうだな、金属に電撃は効かない。

 近くに金属があると電撃は吸い寄せられる。


 仕方ない、切り札を切るか。


「【グラインダー】」


 石をディスク状にして回転させて、石英と鉄と薔薇を刈り取る事にした。

 この魔法は牢屋などに閉じ込められるのを想定して作った。


 石のグラインダーが石の薔薇に接触すると火花を上げた。


「手折られるのも花の宿命。火花を伴って手折られるのは美しい」


 アキシャルまで射線が確保された。


「【電撃発射】」

「はうっ」


「そこまで、勝者タイト」

「きゃー」

「気絶するシャル君も素敵」


 使った魔法はこれだ。


extern MAGIC *stone_disk_make(float mana);

extern void magic_spin_move(MAGIC *mp);

extern void magic_tracking_move(MAGIC *mp);

extern int mclose(MAGIC *mp);


void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 mp=stone_disk_make(0.0001); /*石の円盤を作る*/


 while(1){ /*無限ループ*/

  magic_spin_move(mp); /*回転させる*/

  magic_tracking_move(mp); /*体に合わせて動かす*/

 }

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

}


 俺がアキシャルのそばに行くとアキシャルは目を開けた。

 気絶なんかしてなかったんじゃないかな。

 手を出して引っ張って、アキシャルを立たせた。


「負けちゃったね。でも美しく散れた」

「さいですか」


「残りの花も全て刈ってくれないか。記念に彼女達にプレゼントしたい」

「ええ、いいですよ」


 俺は花を刈って、アキシャルに手渡した。


「僕を応援してくれてありがとう。また来年も応援よろしくね」


 アキシャルは女子一人一人に花を手渡した。

 ふと疑問に思った。

 魔法おもしろ研究会は何で寂れているのだろう。

 アキシャルを好きな女の子が沢山入りそうだ。


「おも研って何で人気ないんですか。アキシャル先輩の魅力でなんとかなりそうだけど」

「ああ、それね。昔、色々とあって、戦争になったんだよ。それで休戦協定が出来たって訳なのさ」


 休戦協定の中身は分からないが、なんとなく想像がつく。

 たぶん、アキシャルのファンの子はおも研に入れないんだろう。


 寂れているのは、野郎だと嫉妬して入らない。

 こんな所か。

 順位戦4日目が終わった。

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