第30話 やる事リストと、ラッシュボアと、ゴブリン

 畑でゴブリンが出て来ないか見張る。

 全然、出て来ないな。

 前はもっと頻繁に出て来たのに。

 何でだろうな。


 暇なので、やる事リストを作る事にした。


 火力調整付きコンロ。

 これが出来るなら明るさ調整機能付き照明も出来るな。

 行方不明の生徒捜索。

 順位戦でニオブをやっつける。


 鑑定魔法を使いたい。

 治癒魔法も開発したい。

 嘘判別魔法も作りたいな。

 収納魔法も欲しい。

 防御の紙装甲をなんとかする。


 実家の干渉も良い加減うざいので、なんとかしたい。

 ファラド一族とのケリもつけないとな。


 こんなところか。

 それにしてもゴブリンは出ないな。

 遠くから近づいてくる4足の獣の姿が見えた。

 どうやら、猪のモンスターのようだ。

 体高が2メートルを超えている。


「皆さん注目」


 マイラが指揮を執るみたいだ。


「ラッシュボアは強敵だけど、突進を止めれば問題ない。じゃ手本を見せるから」


 マイラが駆け出してラッシュボアの面前に行く。

 ラッシュボアが後ろ脚をかいて、突進の体制に入った。


 マイラが短剣を抜いて構える。

 ラッシュボアが突進してきた。


 マイラがひらりと身をかわし、ラッシュボアはいきなり停止した。

 どうやらマイラが設置したバリアに突っ込んだみたいだ。


 マイラは死角に入り前足と後ろ脚の腱を短剣で斬った。

 血が噴き出てラッシュボアが倒れる。

 マイラは首筋を引き裂いて止めを刺した。


 何時もながら見事な腕前だ。


「マイラ、お疲れ」

「えへへっ」


「無理、僕には無理」

「何を怖気づいているんだね。爆発を食らわせれば突進は止まるはずだ」

「それより石の壁を出した方が無難だと思うわ」


 突進はそれで止るけどその後はどうするんだよ。

 みんながワイワイ話しているうちにゴブリンがやってきた。


「ゴブリンだよ。誰がやるのかな」

「じゃ僕が。ゴブリンならやれるから【石の薔薇ばら】」


 アキシャルが石の薔薇ばらを咲かせゴブリンを絡めとる。


「アキシャル君は甘いな。こうやらないと。【爆発】」


 ゴブリンの近くで爆発が起こりゴブリンがミンチになった。


「ひっ、美しくない」

「では次は一人でやりたまえ」


「アキシャル先輩は花を咲かすんだよな。じゃあ、血を吸う花なんてどうかな」

「それなら美しいかも知れない。やってみよう」

「少しえげつないと思うわ」

「じわじわ殺すのも悪くない」


 何十分か経ち、次のゴブリンが出て来た。


「【石の薔薇ばら】」


 石英で出来た石の薔薇がゴブリンの緑色の血を吸いあげ、茎や葉脈を緑色に染める。

 なんか小説の猟奇的な殺人事件とかに出て来そうな殺し方だな。


 最初ゴブリンは暴れたが、すぐに動かなくなった。


「美しい」


 さいですか。

 ミンチにする事に比べたら美しい殺し方と言えるだろうな。


「次は私がやる」

「セレンがやるのか。お手並み拝見」


 また何十分かして、やって来たゴブリンに対して、セレンは火球の誘導弾を放った。

 黒焦げになるゴブリン。


 セレンは普通だな。

 みんな1つずつ魔石をゲットしたし、今日は引き上げるか。


「帰るまでが冒険だよ。気を抜かないように」


 マイラの号令のもと帰路に就く。

 俺はラッシュボアを石の板に載せて浮かせ引っ張った。


「ところで皆は何の魔道具を作るんだ?」

「もちろん、爆発に決まっているのだ」

「石の花だね」

「誘導弾を作りたいけど、ゴブリンの魔石では大した物が出来ない。迷うところだわ」

「マイラは俊足になれる魔道具。タイト、作って」


「それは難しいな。身体強化ってどういう仕組みだろう。外骨格みたいなのを作るのか。ドーピング? 補助魔法的な? いいや分からん」

「タイト君、君は賢いのか馬鹿なのか分からないな。早く動くのなら爆発で加速すればいいだろう」


 そんなのやったら、マイラが人間大砲になってしまうよ。

 あれっ、エミッタは火薬を出しているよな。

 銃が再現できるのか。

 やばいな、俺は抜けてた。


「エミッタ会長、火薬は一族の秘伝なんだ。くれぐれも他に漏らさないようにしてくれ」

「分かってる。爆発の力は最強だからね」


 やる事リストに身体強化魔法を付け加えた。

 銃の開発はしない。

 真似される可能性が大だからだ。

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