第25話 行方不明と、商会と、紐スイッチ

 やる事も終わったので行方不明になった生徒を探す事にする。

 もう生きてはいないだろうけど、遺骨ぐらい墓に納めてやりたい。


 まずは今いる魔法おもしろ研究会、略しておも研のメンバーからだ。


「会長は去年行方不明になったリニアって女生徒を知ってる?」

「叫び声だけを残して消えた彼女かね?」

「そうだと思う」


「寮の生徒が何人も叫び声を聞いている。しかしだ、血痕も争った形跡もまるでなし。大規模な捜査が行われたが結果は何もわからずというところだね」

「噂とかないかな」

「当時は色々な噂が立ったが、いずれも事件解決するようなものではなかった」


「そこの所を詳しく」

「いわく、恋人に振られた。成績に悩んでた。カンニングしているらしいとかだね」


 なるほどな。

 詳しく噂とやらを聞いたが、どうなんだろう。

 捜査機関が調べたのなら、俺の出る幕はないと思う。


 引っ掛かるようなものはない。

 学生ならどれもありそうな噂だからだ。


 これは手間取りそうだ。

 未解決で終わる可能性もあるな。

 在学中に頑張って分からなければ、諦めよう。


「マイラ、元締めに会いに行ってから寮に戻ろう」

「うん」


 元締めの家に行き、いつもの奥の部屋に入る。


「おう、待ってたぜ」

「魔道具はマイラが納品しているけど、何かトラブル?」

「いいや。本格的に堅気になる事にした。商会を起こすんだ。クラッド商会と名を付けた」


「よく、商業ギルドが許可したね」

「そこは蛇の道は蛇よ。鼻薬を嗅がせりゃ、大抵はなんとかなるってもんだ」


「なるほどね」

「おかげさまで、スリグループはみんな真っ当な店員だぜ。ところでよ種火の魔道具があるが、あれで煮炊きする奴がいるって知ってたか?」

「たしかに50時間ぐらい連続で火が持つけど」


「少し、使いづらいんだよな。丸い炎だろ、鍋の底と形状が合わない」


 そう言えば、前世のコンロはリング状の炎だったな。

 作るか。


 こんなのでいいな。


extern MAGIC *ring_fire_make(float mana);

extern int mclose(MAGIC *mp);

void main(void)

{

 MAGIC *mp;

 mp=ring_fire_make(0.00005); /*環状の火を生成*/

 while(1); /*無限ループ*/

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

}


 後で火力調整の機能付きのを作ろう。

 今は火力の違う別バージョンを作って使い分けてもらおう。

 コンロ台は元締めに作らせればいいな。


「後よ、灯りの魔道具あるだろ。あれも使いづらい。手元で点灯できないとな。何か考えてくれ」


 前世だと灯りは手元か天井に設置だな。

 スイッチの紐がいるな。

 待てよ。


「魔石を粉にして紐を染めて魔道具に付けられないか」

「出来るな」

「天井に魔道具を設置して紐に触れば点灯が出来る」

「そりゃいいな。しかし、その工夫は既にありやがる。真似したと言われるのは業腹だ」


 そうだよな。

 普通に考えたらそういう魔道具を作るよな。

 これと別バージョンは、扉の脇にスイッチか、リモコンかという所だな。


「扉の脇にスイッチを作るのはどうかな。小さい灯りをスイッチに付けてやるのも良いな」

「それなら紐の先に、小さい灯りをつけりゃいい。新しい工夫だと胸を張れる」


 おう、そうだな。

 前世では照明の灯りは扉脇のスイッチでLEDの小さい灯りが付いていたやつだった。

 田舎に行った時の記憶だと、紐の先に蛍光塗料を塗った物が付いてたっけ。

 何だ、簡単だ。


extern MAGIC *light_make(float mana);

extern int mclose(MAGIC *mp);

void main(void)

{

 MAGIC *mp;

 mp=light_make(0.000001); /*灯り生成*/

 while(1); /*無限ループ*/

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

}


 この魔道具を紐の先に付ければ良い。

 104日も光り続ける。

 問題は紐のスイッチを操作しようとして、先端の灯り玉を操作してしまう事だ。


 104日も魔力の補充で触らなくて良いのなら、カバーで覆って触れないようにしてしまえば良い。

 これで解決だ。


 試作品を作ってみた。

 天井の灯りには傘をつけた。

 暗い中で紐の先端が光る。

 紐に触って魔道具を起動すると天井の灯りがともる。

 もう一度紐に触って停止をすると灯りが消えた。


「画期的だ。これならどんな商品にも負けないぜ」

「壁のスイッチも試してみてくれ。人によっては部屋の中央に紐があると邪魔な場合もある」

「あんた、何もんだ。子供とは思えねぇ」

「ただの本の虫さ」

「タイトはタイトだよ」


「あんたが何者であろうとも。こちらとしちゃ、食っていけるのなら文句はねぇな」


 前世の知識をまた一つ使ってしまった。

 でもこれぐらい良いよな。

 灯りに紐スイッチのアイデアは前からあるみたいだし。

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