第16話 買い取りと、おかしい実力と、魔法学園

 王都よ、俺は帰って来た。

 道中、毛皮が臭い事と言ったら、処理用の薬品はちゃんと使ったんだけどもな。

 その薬品自体も臭い。


 門をくぐった所にある冒険者ギルドの買取所に、毛皮を持ち込んだ。


「おっ、ウルフの毛皮だな。しかし、この分厚い毛皮はなんだ?」

「キングウルフのだよ」

「まさか。そんなはずは。だが」


「早く査定してくれ」

「これは、キングウルフなのか! おい、何で細かく切った! もったいない!」

「丸ごとで、解体できなかったんだよ。子供なんでな」


「討伐は子供の癖によくやった。解体もな。しかし、何で魔導師のポーターを雇わない?」

「高いから」


「うわっ、キングウルフの毛皮だって」

「凄いな。あの子供が狩ったのか」


 うげっ、野次馬が集まって来た。


「早く、買い取りしてよ」

「前例がないのでキングウルフの査定は出来ん。受け取り証文を書くから持っていけ」


 野次馬から逃げるようにして冒険者ギルドに行った。


「また、あんた達やったわね」


 受付嬢に会うなりそう言われた。


「何の事?」

「さあ」


 マイラにも心当たりがないようだ。


「とぼけるのね。キングウルフの事よ」

「情報が早いね」

「ギルドお抱えの魔導師が通話の魔法で報せたのよ」


 さいですか。


「それで、キングウルフになんの問題が?」

「あれは昔、軍隊を出して討伐が出来なかった個体なの」

「そんなに強くなかったけど」


「君、少しおかしい」

「タイトだから」

「そうね。タイト君だから」


「何、納得してるんだよ。俺ってそんなにおかしいか」

「おかしい」

「おかしいわ」


 さいですか。


「納得してないようだから聞くけど、どんな魔法でキングウルフを倒したの?」

「ええと、10メートルぐらいの電撃を、誘導弾で撃ちこんだ」


「10メートルなんてドン引きよ。そこもおかしいけど誘導弾って高等技術よ」

「ほへっ。火球を敵に誘導したまえとか唱えたら出来そうだけども」

「そんな事をしたらあっと言う間に魔力が枯渇するわ」


「じゃ、どうやるんだ」

「火球を生み出すまでを一つの魔法で。誘導は別の魔法で何回も分けてやるのが普通ね」

「なるほどね。火球を生じさせろとやってから、右に行けとか左に行けとかやる訳だ」

「そうね」


「お姉さん、魔法に詳しいね。後で教えてくれない?」

「駄目よ。こう見えて忙しいの」


「えー、けち」

「それなら良い依頼があるわ。魔法学園の生徒が1人が行方不明になったの。その捜査に学園に潜入する依頼よ」


 魔法学園は今居る王都にある。


「いいね、魔法学園。その依頼やりたい」

「私はどうするの?」

「マイラは護衛として付いていったら良いわ。貴族の子弟が通う学園だから、護衛は目立たない」


「依頼の受託をお願い」

「条件が1つあるの。入学試験には実力で通ってもらわないといけないわ」


「何だ、そんな事」

「難関よ」

「でも、タイトだから」

「そうね。タイト君だから」


 よし、次は魔法学園だ。

 入学案内書には試験は来年と書かれている。

 だいぶ間がある。

 俺は本屋で過去の試験問題を立ち読みした。

 試験の科目は計算、真理、情報と実技だ。


 計算はいける。

 真理、これは科学と化学だからいける。

 問題は情報。

 これは地理と社会だ。

 暗記問題だな。


 情報の参考書を手に取る。

 試験の範囲は広い。

 試験の開始に、勉強がギリギリ間に合うかどうかだ。


 それと最後は実技だけど、これは楽勝だろう。


 しばらく経って、キングウルフの査定が出た。

 魔石と合わせて、金貨157枚だった。

 おお、大金だ。

 これで当分働かずにすむ。


 半分をマイラに渡すと。


「タイトが勉強している間、私は道場に通うわ」

「それは良いな。来年までは2人とも勉強だ」

「ふふっ、お揃いね」

「ああ、そうだね」


 はにかむマイラが可愛い。

 言っておくが、ロリコンちゃうわー。


 なんか虚しくなってきた。

 いっその事、ロリコンだと認めようか。

 いや、駄目だ。

 そんな事は出来ない。

 そこは譲れない一線だ

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