第10話 年上の女房と、人さらい組織と、電撃の魔法

「マイラ、ちょっと来て!」


 冒険者ギルドの受付嬢がそう言って、俺達を呼び止めた。


「何?」

「マイラ、スリ集団が取り締まる側になったようだけど、何か知ってる?」


「知らない」

「そう。不思議というか気味が悪いのよ」


 どういう事なのか大体は分かるが、一応聞いてみるか。


「どういう事?」

「今朝からはぐれ者のスリとか物取りが、スリ集団に捕まっているのよ。盗られた財布や物を取り返して金銭を要求するみたい。盗みをやった犯人も突き出しているのよ。最初は縄張りを主張するためにやっていると思ったけど、スリや物取りの被害が皆無なの」

「冒険者ギルドに関係ないんでは」


「街中の警護依頼が減るわ。それと盗品を取り返す奪還依頼がね」

「へぇ、平和になって良い事だよ」


 元締めは奪還屋の商売を始めたようだ。

 蛇の道は蛇ってところだろう。


 カウンターから離れマイラと依頼を眺めながら、話をする。


「なあ、マイラ。こういう商売が出来るなら何故もっと早くやらなかったんだ」

「それだけでは食っていけないから。前はよそ者のスリを見つけると金品を巻き上げて、タコ殴りにした」


「なんで元締めは廃業したんだろ」

「やりたくて犯罪者はやってない奴も多い。出来る事がないから仕方なしにやっている」

「そうか。俺が支援を打ち切ると、スリグループはまた元に戻るんだろうな」

「ええ、そうね」


 俺がやっている事の意味はあるんだろうか。

 一時しのぎだし、犯罪者を養っているとも言える。


「タイトは偉いと思うよ」


 マイラに心を読まれたような事を言われた。


「そうかな。でも思うんだ。彼らを完全に真っ当な人生に引き戻す事は出来なかった」

「私は真っ当になったわ。断言できる。一人でも真っ当になったのなら、意味があるんじゃない」

「そうだね。マイラを救う事が出来た」

「そうよ。救われたわ。胸を張っても良いと思う」

「ところでマイラって何歳? 俺は6歳だけど」

「10歳よ」

「えっ、4つも上。同い年ぐらいに思ってた」


 そうか、栄養が足りなかったんだな。

 タイトはご飯だけは十分に貰ってたみたいだし。

 マイラは小柄なのかも知れない。


「私の方がお姉さんなのね。ちょっとショック。男は若い女の子が好きだって言うし」

「そんな事ない。年上の女房は金のわらじを履いてでも探せって言うよ」


 マイラの顔が真っ赤になった。


「馬鹿」


 なんとなく甘酸っぱいものが流れたような気がした。

 前世の歳を加えると俺の方が年上だ。

 マイラの歳だと犯罪行為になる。

 ロリコンちゃうわ。

 女房のくだりは慰める為に言っただけだ。


「入口の所の男は見覚えがある」


 マイラの顔が急に険しくなった。


「どこで?」

「薬を盛られたレストランの従業員よ」

「じゃ、人さらい組織の一員かな」

「そうね。そう考えないと」


 俺達は男に見つからないように隠れた。

 男が去って行ったので、マイラは情報収集を始めた。


「あの男は何か言ってなかった」

「鎌鼬のマイラを探しているとか」


 不味いな。


「マイラ、作戦を立てよう」

「そうね」


 宿を取って作戦会議を始めた。


「取引って訳にはいかないよな」

「金を払えば私達のやった事はチャラに出来るわ。でも、あいつらに金を払いたくない」

「どうして?」


「いい、奴隷にするって事は、その人の人生を破壊するって事なの。殺すのも同然の行為だわ」

「そうだろうね」

「スリとか物取りとかは、怪我は負わせるけど、命までは取らない。裏切り者の処分以外はね」

「じゃあ、更生の余地なしって事だね。でも、殺さないで犯罪を取り締まっている機関に突き出したいな」

「殺しは控えるわ」


「じゃ、方針は決まったね。突き出すって事で。秘密兵器を作るよ」


 さて秘密兵器だ。


extern MAGIC *electric_make(float mana);

void main(void)

{

 int i;

 MAGIC *mp[1000];

 for(i=0;i<1000;i++){

  mp[i]=electric_make(0.00005);

 }

}


 新しい要素を解説する。


extern MAGIC *electric_make(float mana);

void main(void)

{

 int i;←俗に言うカウンタ。回数を数える時に使う

 MAGIC *mp[1000];←魔法情報が千個

 for(i=0;i<1000;i++){←千回繰り返す

  mp[i]=electric_make(0.00005);←電撃を出す

 }←繰り返しの終わり

}


 千個の電撃の球をばら撒く魔法だ。

 室内の全員を気絶させる事が出来るはずだ。

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