第8話 超絶魔道具と、先生と、キス
種火の魔道具を作る事にした。
extern void ignition(float mana);
void main(void)
{
ignition(0.0001);
}
こんな呪文だ。
一万分の一魔力があれば、大体4センチの炎が出る。
1魔力で1万回起動できる。
3秒も点けっぱなしにすると、魔力は3倍食うから、実際は3千回ぐらいかもしれないが。
ゴブリンの魔石だと、体感で10魔力ほど入ったから、一回の充填で3万回だ。
既存の魔道具の効率がどれだけいいか分からないが、何にも工夫しないで俺が種火を唱えると10魔力だ。
仮に魔道具屋が工夫して、十分の一の消費魔力になったとしても、1魔力になる。
1回の充填で10回しか使えないのと比べて3万回では、勝負にもならないだろう。
だが、俺は更に効率を求める男。
extern MAGIC *fire_make(float mana);
void main(void)
{
MAGIC *mp;
mp=fire_make(0.0001);
}
こんなのでどうだ。
簡単に説明する。
extern MAGIC←返答に魔法の情報を返す *fire_make(float mana←使用魔力);
void main(void)
{
MAGIC *mp;←魔法の情報の格納場所
mp=fire_make(0.0001);←火を作ると共に、魔法の情報を取得する
}
実行してみたところ、炎が二回りほど大きくなった。
と言う事は半分の魔力で良いという事だ。
extern MAGIC *fire_make(float mana);
void main(void)
{
MAGIC *mp;
mp=fire_make(0.00005);
}
これで良い。
一回の充填で6万回も使えるということはほぼ無限じゃないか。
よしゴブリンの魔石に書き込もう。
書き込みが終わった。
魔石に魔力を充填して触ると4センチぐらいの火が出た。
成功だ。
試しに一つ売りたいが、どうなんだろうな。
俺は作り方を教えてくれた魔道具屋に行った。
「魔道具が出来たんで、買い取ってくれない」
「素人の作った物なんか買い取れるか」
「無限に種火が
「はったりなら、もっとましな嘘を言え」
「試してみても良いよ」
「何か
俺は作った魔道具を渡した。
「ふん、ゴブリンの魔石から作った魔道具か。貧乏人らしい材料だ」
店員は魔道具を起動して、置き時計をちらちら見ながら炎を20秒ほど眺めていた。
「ふん、なかなかやるな。感心したぞ。弟子にしてやっても良い」
そして、40秒経ち。
「馬鹿な。こんな事があって良いのか。子供に負けるなんて俺は今まで何をしてきたんだ」
そして、1分が過ぎ。
「小僧、どんな呪文を書き込んだ!? 教えるまでこの店から一歩も出さん!!」
そして、2分が過ぎ。
「先生、先生と呼ばせて下さい。その知識と技を是非お教え下さい」
「もうちょっと見てからにしてよ」
そして、10分。
「ははははっ」
店員から乾いた笑いが出て来た。
「もう良いかな。金貨10枚ぐらいで買い取って貰いたいのだけど」
「先生、それは安すぎです」
「服を見て分かると思うけど、お金が無いんだよね。とりあえず買い取ってよ」
「分かりました。家宝にします。金貨10枚ですね。ただいま」
奥に入った店員が金貨10枚を持って現れた。
「本当にいいのですか。後で返せといっても返しませんよ」
「いいから、いいから」
「そうですか。先生はもしや老賢者で、幻影の魔法でもお使いになられているのではないですか」
「見た目通りだけど」
「いけませんな。人さらいにでも捕まったら大変です。どうです、今晩、私の家においでになりませんか」
「遠慮しておくよ」
俺は逃げるようにその場を後にした。
「あっ、先生。待って……」
魔道具をちょくちょく売りに行く予定だったけど、あの様子だと危ういな。
実力行使されても返り討ちに出来る自信はあるけども、殺人で指名手配は勘弁してほしい。
スラムに帰るとマイラが帰って来ていた。
「タイト、やばいかも知れない。今日の上納金が払えない」
「何だそんな事。ここに金貨10枚ある。足りるだろ」
「銀貨10枚もあれば十分よ」
「ええと銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚だったよな」
「そうだけど、どうしたの。色々と賢いのに常識を知らないのね」
「屋敷から出た事がないもんでな」
「でも今日は貴族の底力を知ったわ。金貨10枚も稼いでくるなんて」
「元貴族だ」
「それはどうでも良いでしょ。とにかくありがと」
抱きつかれ、ほっぺにキスをされた。
子供にやられても嬉しくない。
まあ仲良くなれたと思っておこう。
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