第7話 依頼達成と、スペルブックと、魔道具

 ゴブリン退治を終えたので、王都に帰って来て、冒険者ギルドのカウンターに並ぶ。


「はい、次の方。ちっ」


 俺達を冒険者登録した受付嬢だ。

 だが、舌打ちはないだろう。


「依頼のゴブリン討伐をやってきたわよ」

「耳が全部で23個。依頼金と合わせて銀貨1枚と銅貨23枚ね」

「ありがと」


「ところでゴブリンの魔石はどうしたの?」

「俺が記念に貰った」

「スリ集団が魔石の売り買いを、始めたんじゃないでしょうね」

「ないわよ」


「あら、おかしいわね。スリが掏った魔石が出て来たためしが無いんだけど」

「俺らはスリグループとは関係ない。ほら証拠だ」


 俺は小袋の口を開けて中を見せた。

 中に魔石が入っているのは言うまでもない。


「でも、これからスリ集団に売りに行く可能性もあるわよね」

「信じないなら良い」


 俺は突き放すように言った。


「信じるわよ。闇商人に売るよりギルドに売った方が儲かるから」


 一転して逆の事を言う受付嬢。

 この受付嬢性格が悪いな。


「闇商人なんてのが居るんだな」

「盗品でも何でも買ってしまう輩よ。マイラも闇商人の名前を知っているでしょ。白状するならブラックリストから消してもいいわ」

「遠慮しとく」

「そう。でも、そういう態度が足を洗ってないと思わせるのよね」


 今、喋ったらスリグループから殺し屋が送られてくるのだろうな。

 先の事は分からないが、今の段階ではスリグループの情報は漏らせない。

 マイラもそう思っているに違いない。


「じゃ、俺達は行くから」

「情報を喋ってくれる事を待っているわ」


 次に向かった先は文房具屋だ。

 文房具屋に入るとインクの匂いが漂ってきた。

 真っ先に紙を見る。

 わら半紙みたいな茶色い紙が、1枚あたり銅貨10枚で売られている。

 高いな。


「坊主達は冷やかしだろう。帰った帰った。汚い手で紙を触られると汚れちまう」

「冷やかしじゃない。タイトは大魔導師よ」

「ほう、スペルブックでも買いに来たと言うのかい」


「んっ? スペルブック?」

「坊主、大魔導師の癖にスペルブックも知らないのか。こいつはお笑い草だ」

「いいから、早く話せ」


 俺は店員を睨んだ。


「何だよ。気味の悪いガキだな。スペルブックというのは無詠唱をする時に使う物だ」

「そんな物を使わなくても出来るけど」

「はははっ、やっぱり素人だな。呪文を頭に思い浮かべる時に、暗唱していたんじゃ、詠唱しているのとそんなに変わらない。ところが紙に書いておけば、見ただけでイメージ出来る」

「おおっ」


 俺はポンと手を打った。

 そうだな、紙に書いておけば、見ただけでイメージが一瞬だ。


「スペルブック下さい」

「一番売れている奴で、鍵付きのだと、金貨1枚だな」

「買えるかよ!」


「さあ、冷やかしは、帰った帰った」


 仕方ない、わら半紙でスペルブックを作ろう。


「わら半紙2枚下さい」

「ちっ、結局は、安いわら紙かよ。まあ、これでもお客だな。まいどあり」


 ペンとインクも買って今日の俺の稼ぎはなくなった。

 そうだ、魔道具の作り方を教わらないと。

 魔道具屋に行って教えて貰えるかな。

 聞くだけは無料だし。


 魔道具屋に行くと店員が鋭い目つきで睨んできた。


「忙しいところすみません。魔道具の作り方を教えて下さい」

「スラムの住人が来たと思ったら、弟子入り志願かね」

「いえ、弟子になりたくて来た訳じゃないんです。作り方が知りたいだけで」


「ほう、物怖じしない子供だね。いいさ、教えてやるよ。魔石を用意して、かの呪文を魔石に刻みたまえと言うだけさ。その後に刻み込む呪文を詠唱する」

「簡単だね」

「馬鹿言っちゃいけない。刻む呪文の効率が悪いと、ヘボな魔道具しか出来ない」

「呪文の文字数に制限はあるのかな?」

「ないから、厄介なんだ。いくらでも工夫の余地がある。魔道具は呪文が長くても詠唱する訳じゃないからね」


「ありがと、参考になったよ」

「もう、終わったの」

「お待たせ」


 やった、これで勝つる。

 プログラムで魔道具を作って稼ぎ放題だ。

 帰ったら早速やってみよう。


「マイラにも良い思いをさせてやるぞ」

「やっぱりタイトは大魔導師ね」


 俺の予想では、普通の魔道具が自転車だとすると、俺の魔道具はF1並みの物が出来るはずだ。

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