第6話 ゴブリン討伐と、オーバーキルと、計算

 現在、俺達は畑のそばで森から出て来るゴブリンを監視中だ。


「来るわよ」

「よし、ファイヤーボールいくぞ」


 無詠唱でファイヤーボールを放つ。


「グギャアー」


 ゴブリンに火球がかする。

 惜しい。

 敵わないと思ったのか、ゴブリンは逃げだした。


「逃げるなよ」


 ファイヤーボールをつるべ撃ちする。

 ジグザクに逃げて行くゴブリンに火球は当たらない。

 だが、魔力が減った感じはしない。

 まだまだ、いける。


「甘いわね」


 マイラが駆け出して行った。

 ゴブリンに追いついたマイラは首筋に斬りつけた。


 緑色の血が噴き出してゴブリンは死んだ。

 やっぱりマイえもんとハリ太だな。


 マイラはゴブリンの胸に短剣を刺し込むと、1センチに満たない赤い小石をえぐり出した。


「それは何?」

「魔石よ。ゴブリンの金になる素材って言ったらこれしかないわ。耳は討伐の証拠として持って行くけどね」

「ちなみに魔石は幾らで売れる?」

「銅貨1枚ってところ」

「安いな」

「武器を持っていれば簡単に狩れるから。討伐依頼のお金がなければ、正直やってられないわ」

「魔石を貰っても良い?」

「ええ」


 魔石を手に取って緑の血を拭う。

 これが魔石か。

 魔力を指先に移動して魔石に入れてみる。

 魔力が吸い込まれるように入ったのが分かった。


「魔石は魔道具の材料になるんだよな」

「そうね。作り方は知らないけど」


 後で魔道具の作り方を誰かに聞こう。


 それよりも、ゴブリン相手に苦戦しているようじゃ駄目だな。

 もっと凄い魔法を開発しないと。


extern void fireball(int size_cm,int speed_km);

void main(void)

{

 fireball(100,200);

}


 これでどうだ。

 でも、大きさが10倍って事は体積が1000倍だよな。

 1000倍も魔力を使うと何発も打てない。

 さて、どうしたものか。


 サイズで魔法を考えるからややこしいのか。

 魔力で考えた方が早いな。


extern void fireball(int mana,int Mobile_fuel_mana);

void main(void)

{

 fireball(10,1);

}


 こうすれば、移動に使う魔力も1なので合計11の魔力だ。

 俺の全魔力でファイヤーボールが10発撃てる。


 これでやってみるか。

 しばらく経ってゴブリンがやって来たので魔法を放つ。

 2メートルほどの火球がゴブリンを焼き尽くした。

 意外に何も感じないな。

 焼き尽くしたからか。

 人間じゃないからか。

 どうやら俺はサイコパスの素質があるらしい。


「やればできるじゃない」

「そうなんだけど、後9発ぐらいしか撃てない」


 これだとオーバーキルだな。

 計算すると火球を形作る魔力は、最初の10センチの魔法の8千倍だ。

 という事は単純計算で火球だけだと、10センチサイズを8万発撃てるのか。

 道理で10センチサイズをいくら撃っても魔力が減った感じがしないはずだ。


「私だったら、火種を10回も出せば、魔力がなくなるわよ。あんな大きさの火球を出したら、ミイラになりそう」

「まあ、魔法は俺を頼ってくれても良い」


 ええと半分の大きさにすると魔力は八分の一だから。

 魔力を十分の一にしても、半分より少し小さ目になるぐらいだな。


extern void fireball(int mana,int Mobile_fuel_mana);

void main(void)

{

 fireball(1,1);

}


 これだと90センチぐらいの火球が55発撃てる。

 コスパが良過ぎだ。


 良い分には構わない。

 よし、もう少し小さくしよう。


extern void fireball(float mana,float Mobile_fuel_mana);


void main(void)

{

 fireball(0.5,1.0);

}


 追加要素を説明すると。


extern void fireball(float←小数点を扱う時に指定する mana,float Mobile_fuel_mana);

void main(void)

{

 fireball(0.5,1.0);

}


 0.5の魔力だと70センチぐらいの火球になる計算だ。

 このぐらいが丁度いい。


「何を地面に書いているの?」

「どのぐらいの魔力が丁度いいか計算しているんだ。魔力が半分になると2の立方根の逆数倍になっていくんだ」

「もういい。頭が痛くなってきた」

「簡単に言うと魔力が半分になると約8割の大きさになるって事」

「それなら、なんとなく分かる。2割ずつ減っていくのね。これって魔法の真理よね。凄い頭が良いのね」

「まあ、これぐらいなら、筆算で出来る」


 計算した表とかが欲しい所だな。

 依頼をやった金で紙と筆記用具を買おう。

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