初めての部活見学、生物部②
部活は一階の生物室であるということで、放課後、薄暗い廊下を無量くんと歩いた。
「無量くんって不思議な名前だね。お父さんかお母さんがつけたの?」
わたしはなにか話題をつくろうと、無量くんに声をかける。
無量くんは少し優しい目をして笑う。
「お母さん、だよ。カラスみたいに綺麗な髪の。僕はお母さんと暮らしてるんだ。お父さんとお母さんがリコンしたから」
離婚、という重たい言葉なのに、ふんわりと言った。
無量くんは生物室のドアをガラガラと開けた。
「あ。桃子ちゃん来たよー。部長」
スバル先輩がわたしの手に自然に触れて、部室の中にエスコートしてくれる。
年代物のソファが置いてあって、テーブルもある。結構、お洒落な空間。カフェか喫茶店みたい。
なんだけれど、すごく残念なことに、「枯れかけた観葉植物」があるんだ。パイナップルとかかな。
「桃子ちゃん。なにから説明しようか。まず、ちょっとした『手品』見せるから。それからゆっくり質疑応答タイムね」
スバル先輩が言った。坊主頭の先輩が壁際で、パチパチと拍手している。上履きの先が紫色だから、三年生。部長さんなのかな、と思った。
スバル先輩はパイナップルの鉢に手をかざす。その時、彼の体がうっすらと緑色に発光していた。
え? パイナップルは萎れていたはずなのに、ぐんぐん茎を伸ばしてる。小さな実までつけ始めたよ。
「今のは。なんの手品ですか」
若干、頭が痛い。
「実はね、手品でもなんでもないよ。俺は、人とか動物、樹木の傷まで癒せる。『癒しの力』を使う。戦いだとヒーラー。俺の名前はスバルだけれど、星の名前を持つのは陰陽師の家系なんだ。
安倍晴明ってわかる?」
「俺もそういう異能者の家系だし、無量にいたってはお母さんが烏天狗(からすてんぐ)の血を引いてる家系なんだ。いくらか、妖怪寄りだよ」
坊主頭の先輩まで、そんなことを言ってきた。
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