第3話 鋭い眼光

本学の校門は二つあり、一つはプール近くに、もう一つは第一校舎の正面に位置してる。

第一校舎の正面に位置する校門では剣道部の発声や陸上部が走っている姿が伺える。


「頑張ってますね、皆さん」


「そうだな」


水嶋が感心しているのに対し、蒼汰は活力ある部活動に対しあまり関心はない。


「そういえばですね、最近奇妙な事件があったんですよ。動物が攫(さら)われる事件が」


携帯画面をスクロールしながら水島がそう話す。


「なぜそれを早く言わん」


「今思い出しました」


蒼汰はネットで検索をかけ、情報を確認する。


「魔物の仕業だとか…」


水嶋は推測する。

それに対して蒼汰も返事をする。


「ありえるな」


しかし、、、今更ながら女子と隣でいる所なんて、海斗に見られたら…

いや、別に恥ずかしいとかそんなんじゃないが。

あいつに見られると厄介なことになりそうな気がする。


「ところであの方はお知り合いですか?」


「え?」


水嶋の指さす方向には木の陰に隠れてこちらを伺っている海斗の姿だった。


「おい海斗!なにこそこそ見てるんだ!」


「ごめんごめん、別に盗み見てたわけじゃないよ」


海斗は手を横に振って笑いながら蒼汰の発言を否定する。


「じゃあ何だってんだ」


「邪魔になると思って隅で見てたんだよ。それよりもまさかあの蒼汰に女の子がねえ」


「べ、別に私は!…」


「本気で言ってんのか?」


「いや」


「そうですか…」


ホッと胸を下ろす水島。

そこまで焦らないでもいいじゃないかと様子を見ていた蒼汰は少しムッとする。

そして蒼汰は誤解のないようにこれまでの事情を海斗に説明する。


「へぇ~、そんな部活動だったんだ」


「お前、手伝ってくれよ」


すると海斗は難しい顔をする。


「手伝いたいのは山々なんだけど…」


「海斗!」


すると海斗を呼ぶ声が後方に聞こえてくる。

振り返るとそこには見覚えのある女子生徒がこちらに接近していた。


「げっ、蒼汰もいる」


「いて悪いかよ。で、麻衣とデートってか?」


「そうなんだ、ごめんね」


麻衣は海斗の腕と腕組をすると、こちらを威嚇するように睨みつけてくる。

一体俺がなにしたってんだ…


「こっちも出来ることはしておくよ」


「頼んだ」


「よろしくお願いします」


蒼汰はあっさり礼をするのに対して、水島は深く礼をする。


「えっと、僕は狩山海斗、こっちは石川麻衣。ちなみにお名前は?」


「水島美鈴です。今後、よろしくお願いします」


その後、海斗たちと別れた俺たちは学校の敷地から出て、本格的に犬探しを始めた。

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