第2話 相談者
「あの…ここに来れば、問題を解決してくれるって聞いて来ました。浅島 凛です」
おどおどした威厳の無い女子生徒が少し緊張気味に口を開く。
「はい、解決しますよ。お悩みは何ですか?」
優しい眼差しでニコッと笑って見せる水島に、相談者は少し肩を落として落ち着きを見せる。
「実は、私の犬が逃げ出しちゃって…」
暗い表情をして顔を下げる相談者。
「そうでしたか。その犬を探すことが相談、依頼内容ですね」
「はい」
そして相談者は何十枚もの写真を机に置き、こちらに向ける。
そこには茶色の体毛をした可愛げなトイプードルが映っている。
「これは私が今まで撮ってきたこの子の写真の全てです」
「首輪もしてますね。わかりました、探しましょう」
写真を漁りながら水島はそう話す。
「お、お願いします。私の家は学校から近くなので、近くにいると思います」
「では、あとは私たちに任せてください!!」
自信満々に胸を張る水島に相談者は頭を下げて再度お願いをする。
相談者と連絡を交換し、相談者は部屋から立ち去った。
「さあ!行きましょう!!」
「いや、少し気がかりな点がいくつもあるんだが…」
「なんですか?」
やる気満々の水島とは対照的に、蒼汰は不満げな顔を浮かべながら言葉をつなげる。
「ここはミステリー研だよな?」
「はいそうですよ」
「じゃあ何で相談窓口みたいなことをやってるんだ」
「相談窓口…とも取れますけど、私は探偵のつもりです」
「探偵?だからこんなことをしてるのか?」
「ダメですか?」
あきれた口調に変わっていく蒼汰だが、水島は当たり前だと言わんばかりに自分を疑わない。
「ダメ…ではないが、、、分かった、この部活について少しだけ理解した。ただ、今回の相談内容についてだが、これは明らかに無謀すぎやしないか?」
写真を見せられようが犬を探すなど、この広い世界に解き放たれた傍若無人の生物である犬を探し出せることは不可能に近いだろう。
また、相談者と合わせて三人の人手では完全に不可能、無謀に近い。
そして”能力”を使うわけにもいかない。
ただ…
「そういえばお前、いや、水島さんは何かの能力を使えるのか?」
この世界には一人一人に不思議な力が宿っている。
剣術や武術、魔法や様々な特殊な力など種類は様々だ。
「私は…今回の件で使えるような能力は持ち合わせていません」
はぐらかされた、、
何かタブーに触れてしまったか…
「あぁ、そうか…」
そう返事を返し、鎮まる空気。
嫌な空気が教室に流れ、差し込んでいた太陽の光は雲に閉ざされ暗くなる。
そこで初めて、教室の明かりを点けていないことに気づいた。
「じゃあ、探しに行くとするか」
まだ言い足りないことが山ほどあるが、今はやめておこう。
ここで引くのが和平への一歩である。
「はい!探しに行きましょう!!」
張り切る水島に感化されたのか、教室は太陽に照らされる。
立ち上がって太陽の光に充てられる水島はどこか神秘的で、神々しく、魅かれるものがあり、目を惹かれた。
「どうかしましたか?」
「あ、いや、何でもない。それより行くか」
見惚れていたのだろうか。
まさか…この俺が?
無意識に女性に目線が向くのは、好意があるということなのか…
いやまさか。
蒼汰は考えを改め、一同は教室を後にした。
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