第2話 あの性格の悪い美人はお母さん!?
かなりの腹痛で眠りから覚めるように意識が浮上する。
目を開けると俺はまだムチムチ感の残る小さな手でお腹を抱えてうずくまっていた。
おいおい、なんだよ異世界に来てはじめは親の顔か授乳で複雑な気持ちになるのがセオリーだろう。なぜに腹痛なんだ、冷や汗出てきたしこれはやばいかも。
(おい!大人!親とか誰か近くにいないのか!赤ちゃんにこれはちょっと問題じゃないのか!?)
俺は助けを求めて縋る様にあたりを見渡した。そこには冷たい目で俺を見下ろすヨーロッパ系の美人とその数歩後ろに心配そうに見ているスーツの様な恰好をしたおじいちゃん名づけるなら“セバスチャン”。あ!あの人、執事か。
俺の後ろにも誰かいてようだ。すぐ後ろに誰かが屈んだ気配がするが体を起こせないから広報の確認ができない。
『奥様、そろそろ限界でございます。やはりまだ1歳にならない子供にこの訓練はあまりにも…。』
奥様と呼ばれた美人は“ふん”と鼻を鳴らし少し顎を上げると後ろに振り返り部屋から出て行った。そのドアの装飾や執事がドアを開きエスコートしたことから身分の高いであろうこと、あの美人が俺のことを微塵も心配していないどころか嫌われている事を理解した。
もしかしてあの性格悪そうな美人って俺のお母さんって事はないよな、、、。
美人の姿が見えなくなると同時に白い光が僕を包んだ。
(なんだこれは!?暖かい…。お、お腹が痛いのが収まっていく!)
俺が白い光を不思議に思い光の発生源である背後にいる人へ視線を向けるとそこには涙目の可愛いお姉さんが僕に向けて手をかざしていた。
おそらく魔法であろうこの光とお姉さんの頭の横についている、垂れた大きい耳とちょこんと生えている二本の角どちらもファンタジーを感じる要素ではあるがどうしてもお姉さんの大きな・大きな胸元を凝視してしまった。
寄せている訳では無いのに大きく谷間ができるほど密着しているボリューム感を持ちながら、明らかに細いであろう足腰。しゃがむ膝に乗っかりぽよぽよする二つの山に赤ちゃんでありながら男の本能がこれは人類の宝だと語り掛けている。
「ブラッド様、痛みは治まったでしょうか?痛いところはありますか?私が奥様から庇いきれなかったせいで申し訳ありません。」
ん?ブラッド様って俺の事かな?俺の名前はブラッドか良いね~中々かっこいいじゃん。
それにやっぱあの美人が奥様って事は俺の母親になるのかな?それより目の前の人類の宝をこれ以上落ち込ませてはいけない。
俺は慰めようと言葉を話そうとしたが舌をうまく使えずに「ぬんぬん~んな~」になってしまった。仕方がないから頑張って立ち上がり頭を撫でてみた。
足に力が入りにくいだけでなく頭の重さと足の小ささでバランスがうまくとれなくそのまま大きな胸に抱きつくように倒れこんでしまった。
ぽにょ~ん。 なんという事でしょう。この至高の緩衝材、包み込むように受け止めるように暖かく良い匂い。ふむ、最高である。
「あら、ブラッド様はお腹すいたのですか?今毒耐性の訓練で微毒入りミルク飲ませられたのに、元気いっぱいでよかったです。よいしょッ、はいどうぞいっぱい飲んで早く大きくなってください。」
な、っな!!なんとあなたは私の乳母でしたか。なんという役得。人生の何割の運をここに使ってしまったのだろうと心配になってしまうほどの服をたくし上げて露になる美しい先端。こんないい事があってよいのでしょうか。
では、いざ実食。もきゅもきゅもきゅ。う、う~くるひい。ストップ!ギブ・ギブ!!
はぁ、はぁ、はぁ。あのレベルになると授乳で窒息しそうになるのか、、、ちょっと浮かれてがっつき過ぎたかな。
では、気を取り直して。もきゅもきゅ・・・
コンコン「マリーです。失礼いたします。」
ドアの開く音が聞こえ、至高の時間を研ぎせさせないように少し首を曲げ目を動かすことで入ってきた人物を確認した。
な!見た目18歳くらいの(もきゅ)スレンダー系美人ハーフモデル(もきゅ)って感じの美女だ!
「あれ?もう毒耐性訓練は終了したの?相駆らずアンの胸はでかいわね」
「訓練は終わったわ。こんな赤ちゃんに毒を盛るなんて悪趣味にも程があるわよ。メアリー様の子供だってだけでこんな仕打ち酷過ぎるわよ。普通なら死んじゃうわよ。」
ほうほう、この人類の宝はアンって名前なのね。それに今の会話を聞く限りあの性格の悪い美人は俺のお母さんではないみたいだ。良かった。けど役1歳児に毒を盛るって俺って命を狙われたりしてるのか?一応訓練ってみんな呼んでるし、回復魔法使いであろうアンがそばで待機していたことから殺す意図はないって捉えていいか。
「ブラッド様を産んで亡くなったメアリー様には申し訳ないのだけど、メアリー様が居なくなった分がブラッド様に向かっているからね、あの人の性格の悪さと癇癪はメアリー様が一番理解しているのにブラッド様を一人残すなんて正気じゃないわよ。」
「もともとは・・・」
その後、俺が眠くなるまで二人の陰口は止まらずに僕の現状の理解を進めてくれた。
なるほど、マリーとアンの話をまとめると。
・俺の母メアリーは俺を産んで亡くなった。
・俺の父は政略結婚であの性格悪い美人を正妻に、母メアリーを側室にし、俺は家では3男だがメアリーお母さんの一人息子であること。
・貧乳であることから正妻なのに父の夜の相手をほぼ母が担当していたため虐めの様にメアリーは嫌がらせを受けていた。
・父はメアリーの死亡原因である俺を毛嫌いしている。
・父は強さを認められて伯爵までの仕上がり、二人の兄の才能が足りなかったときの予備戦力として俺を育てている。
ざっとこんな感じでした。
マリーとアンの愚痴の途中で寝落ちしてしまった俺は下半身の不愉快な感覚に目を覚ました。あ、これ漏らしてる。小漏らしじゃなく大漏らししてる。
うわー、気持ち悪いし恥ずかしいし。早く誰かにオシメ変えてほしいけど前世の記憶から大漏らしを誰かに見られて後始末をしてもらうのはかなり心に来る…。どうしよう。
ん~ん。無理!「だーどっぅ!あぁ~だあ~だ。」だれか~ウンチ出ました~!!気持ち悪いので早くオシメ変えてくださ~い。
俺の半分鳴き声のhelpを聞き駆けつけてきたのはマリーだった。
「ブラッド様、どうちたのでちゅか~?あらあら、うんちっちでたの~。ふきふきしましょうねぇ~♪」
なに!マリーは他の人がいないとそのタイプでしたか。美人ハーフモデルの見た目にそのギャップはかなりぐっとくるね、最高だよマリー君。
そんなことを考えながら俺は服を脱がされてお尻を拭くために両足首を片手で頭の方に持ち上げられ中々屈辱的なポーズをとらされていた。
さて、下半身もすっきりしたし。目も覚めたし少し部屋の中だめでも情報収集しておこう。
ふむ、部屋の広さは12畳あたり・内装はよくある洋風のお金持ちの部屋って感じ。
茶色ベースの暖炉に一枚の豪華な額縁で飾られた絵画、隠し扉の仕掛けがありそうな木製のクラシックの本棚に日本では図書館の歴史書でしか見ないような表紙が単色の本が収納され、一部には謎の水晶や大中小の剣が壁に飾られていた。
俺が今寝かされているベッドはセミダブル程度のサイズでかなりのボリューム感のある羽毛布団と無駄に置かれたクッション。
ソファーはひじ掛け部分が外側にカールしている重厚感のある白い生地で床には今の赤ちゃんの足では指が埋まるほどの毛の長いふかふかなラグが敷かれていた。
この部屋を赤ちゃんの俺に割り当てるんだから伯爵ってのはやっぱり金持ちなんだな。
やっぱり気になるのはあの謎の水晶と壁に掛けられている剣だよな。
ベッドに上半身をつけながら足から滑るように降りるとバランスを取ながら棚の近くまで歩いていく。
近くに行くと俺の届く範囲にもいくつかの本や魔物であろうぬいぐるみが置いてあることに気が付く。
本を一つ一つ確認すると“建国記の絵本”と“勇者の魔王討伐物語”と“魔物図鑑”と“勇者流剣術・王国式剣戦術の指南書“と”魔法学入門“と日本語で書かれていた。なるほど、日本のゲームを元に作られただけあって日本語が使われてんのか。
それにしても転生者にしては何て都合のいいラインナップなのだろうか。ここにある本を読むだけで後は自由に鍛錬に励めそうな充実感。さて、まずはやっぱり魔法がいいかな~。
よいしょ!ふんっ!ぐぅぅう~っだぁ。だめだ、本が重すぎて棚から引き出せない。
みっちり入っているから本の上部に指をひっかけて前に倒すように出そうとするけど、本の構造上指をひっかけるための表紙の段差がなくきれいに切りそろえられているし、赤ちゃんの手ではうまく下に押し付けて引っ張り出すことも出来ない。
まさかの目の前に情報があるのに力が足りずに読めないとは。
・・・まさか!これは“ステータス不足につきアイテムの使用不可”ってやつか!!
ゲームの世界を参考に作ったって言っていたからな。そこまで忠実に再現しなくてもとは思うが細かい再現にわくわくしている自分がいる。くそぉ、面白れぇじゃんかよ。
てことはステータス的な数値設置があるってことだよな、まさか、まさかあの言葉でウィンドウが現れるなんて事は無いよな・・・
「とぅてーたう、おーてんー!」(ステータスオープン!)
“ウィン♪ ”
ん!?今どっかから音が鳴ったぞ?さすがに目前の空中にウィンドウが出てくることは無かったけど音が鳴ったって事は何かが反応してるはず。
当たりを見渡すが特に変化している場所がなく上がったテンションが下がっていくことを実感し、長い間部屋を歩いたり立っていたため疲労を感じ始める。
ベッドに戻るか・・・。結局部屋の中を歩き探検しただけで特に何もなく所詮赤ちゃんであることを今更になり実感した。
ベットまで歩くとベッドの高さが想像以上に高く、顎を上げれば乗せられる程度の高さで高級品であるのだろう。よじ登ろうにもふかふか性能があたかも登るそばから崩れるかの様に変形し取っ掛かりを作ってくれない。
誰か来るまであきらめようと振り返ってベッドを背もたれにう割り込むと離れた壁際の棚に置かれていたあの謎の水晶が光を発し斜め上にウィンドウを表示していることに気が付いた。
さっきの音ってもしかしてあれか!てことはあの水晶って鑑定系のアイテムだったのか!
今俺のステータスがあそこに表示されているのか、めっちゃ気になるけど俺の身長的に近づいても棚の上は見えないし、離れていると何て書いてあるのか読めないし。あきらめるしかないか。
目の前でお預けを食らった気になった俺は気が抜けてそのまま夢の仲に旅立っていた。
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