欲望に素直な異世界転生~どうせ転生するなら強いイケメンになってモテモテになりたいじゃん~

折れた綿棒

第1話 世界の浄化


俺の目の前には3メートルほどの巨体で見下ろしているおじさんが立っていた。


自分の記憶ではついさっき病院のベッドで両親に先に死ぬことへの謝罪と感謝を告げて、眠りについたところで終わっている。

眠りから覚めるように目を開けるとこの状況である。


はっきり言ってパニックだが思いっきり目が合っているため騒ぐことも逃げることも出来ずこうやって冷静になるまで見つめあっている。


この体格差まず敵対したくない。この時間おじさんも行動していないことから向こうも現状を理解していないもしくは何らかの俺のアクションを待っているか…仕方ないそろそろ声をかけてみようかな。


『ふむ。この状況においても自力で冷静になり自ら現状の把握のために行動に出ようとする的確な判断と行動力、気に入った!おぬしはなかなかの逸材じゃ!』


ッ!しゃべった! しかも俺が今頭の中で考えていたことを理解しているかのような言葉。


『ふぉう。さっきの言葉で儂が思考を読めることまで連想するか、やはり優秀じゃ。』


『な!本当に思考が読めるのですね。ちょっと理解が追い付きませんが俺が読んでた漫画や小説によく死んで転生する前では神様との会話でこう言うシーンがあるんで、とっさに連想してしまったというか…。てことはおじさんもしかして神様なんですか!?あ、おじさんとか失礼な呼び方してしまい申し訳ありません。』


俺はおじさんが神様である可能性に気が付いた瞬間に土下座の体制へと片足ずつ下げながら折り曲げ正座するのではなく、両足同時に折り曲げ前に倒れるように最短距離で土下座をした。


22歳大学4年就活生においては言葉遣いは適切ではないが誠意のこもった最上の謝罪だった。


そのことが琴線に触れたのかおじさんは笑い始めた。


『ふぉふぉ。うむ気にする必要はない、そもそも儂はおぬしが考えているような異世界の創造神ではなく日本で言う所の閻魔じゃからランクが低い“中級神”的なものじゃ。おぬしは気に入ったからおじさんでよいぞ。そもそも敵意や恐怖を向けてこない人間は珍しいしのぅ。』


な!閻魔様って言いました?確かに潔白な人生ではなかったけど犯罪はしてこなかったしちょっと堕落していたけど平凡な人生を送ったと思うのだけど。俺地獄に来たのか…。


『ふむ。勘違いしたら困るから言うが、おぬしの人生は可もなく不可もなくって感じじゃ。天国にも地獄にも行かずに次の人生に送られるような評価じゃ。』


『そうなのですね。よかったぁ、それでは俺は記憶をなくしてまた赤ちゃんから始まるんですか?』


『そこなんじゃがな、実はおぬしに提案があってな、まず前提から説明するからそこに座って聞いとくれ。』


示された方向を見るといつの間にか二つのゲーミングチェア(かなりいいやつ)があり、ひじ掛けのホルダーには黒に緑のエナジードリンクと銀に青の栄養補給のゼリー飲料が完備されていた。


不思議に思いながらもゲームや漫画好きには最高の環境であることに少しテンションが上がり、思考が読めることも忘れ『うぉ!閻魔様チョー分かってんじゃん!』などとものすごく無礼なことを考えながら席に着いた。



閻魔様の話を簡潔にまとめると、


・かつて地球は神様たちが住んでいた。


・より良い環境を作り引っ越したが地球は実家みたいなもので不在の間、代わりに管理させるために人間を作った。


・人間が管理する上で汚れ(悪意や過ぎた欲望など)が目立つようになり汚した罪を償い浄化するための地獄と汚れを出さなかった者への褒美として天国が作られた。


・地獄の管理を任せられた閻魔様は思いつく罰っぽい事をさせて汚れを痛みや恐怖に変換し浄化していた。


・毎日の悲鳴や鳴き声を聞いていると神様でもさすがに気がめいってきて人間の娯楽である漫画やアニメ・ラノベに没頭するようになった。


・オタク仲間の神様と異世界物ゲームの世界を作り、人間の汚れを“魔物”にし一定量の浄化(LV100まで分の魔物を倒す)を成し遂げた者を輪廻に戻せば浄化機能の代用をできるのではないかと考えた。


・一部その異世界に浄化を委託するようになったが、最近の人間が出す汚れが増えすぎて魔物の割合が多くなってしまい度々、あたかも選ばれた風なイメージ通りの異世界転生を装って有能な者を送り魔物の大量駆除をさせていた。


・しかし、知識チートをする者が現れ過ぎた娯楽に堕落する者や失業する者が大量に出てしまった。


・頑張ってバランス調整したが、また魔物が増えてきたので転生させたいがオタク仲間のもう一人の神がもうチートを持たせて転生させて世界を壊されたくないとごね始めたため、“魔物を減らす目標を忘れないために記憶を持ったまま、知識チートをしない・チート能力無し”の条件を飲んで転生してくれる有能な人間を探している。




まぁ、こんな感じかな。うん、チート無いのは残念だけど普通に興味の惹かれる話ではあるんだよなぁ。


『あの、それを仮に俺がうけたとして。記憶を持ったまま違う世界で来世をするだけの話ですよね?魔物を倒すとか世界に影響が出るだけの事を成し遂げることって可能なのでしょうか?』


『ふむ。やはりおぬしも気が付いてしまったか。あやつの条件では地位の高い家庭の赤子・才能や潜在能力が一番高い赤子、既に胎児の状態にある赤子の中からおぬしの転生先を選ぶことしかできん。やはり難しいかの。』


『それって仮に俺が転生するって選んだ赤子の本来の魂はどうなるのでしょうか。』


『ふぉふぉ。なに、赤子はみな記憶が消された魂が憑依することで自我が芽生えるのじゃ。つまりまだただの器ってことじゃ心配するな。』


おー、よくある転生した本来の体の持ち主への罪悪感問題は気にしなくていいのか。


なら、転生してみようかな。どうせ俺死んでいるし、死ぬ気になれば何でもできるって言うけど死んでみたら死ぬことへの恐怖は関係ないし。転生して生を実感したらまた変わるのかもしれないけど正直もう異世界転生したく見たくてしょうがない。


『ふむ。転生するで意思は決まっているようじゃな。』

『はい、できればトップクラスの才能と潜在能力を持った子の中で一番お金持ちでありイケメンがいいのですが。』


ちょっと欲張り過ぎではあるがこの条件下ではこれが理想だよな。


『ふむ。まぁ、そのくらいは考慮しよう。しかし儂にも未来は見えない、才能やイケメンは生まれる段階ですでに決まっておるから約束できるが生まれてくる家の環境に関しては責任が持てんぞ?それでも良いか?』


『はい、お願いします!』


『では決まりじゃな。5年ごと短時間ではあるが儂と話をできるようにしておこう。魔物を減らすことも重要じゃが、おぬしにはチートを授けた訳では無いのでな。異世界を楽しむ事じゃ。次会うまでに儂ももう一人の神とどこまで知識を使ってよいのか聞いておくのでな、間違ってもリバーシなど作るではないぞ。』



その言葉を最後に僕は深い眠りにつくのであった。


あ、まだゼリー飲料飲んでないのに…。


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