第154話 木炭が出来ました。

 翌朝は 体操~散歩~2匹の朝ごはん のルーティーンをこなし食堂へ、朝食はテポサラとローストボーアのサンデッチ。


 食器洗いをしているとさっそくジーンさんはすじ肉と骨の下処理を始めていた。

「骨のスープは骨を割って煮込む」というのを昨日伝え忘れてたのを思い出し伝えると、ジーンさんは背中を向けたまま左手の親指を立てて、判ったと合図を返してきた。

 食堂の隅に置いてあった、古い調理器具一式をマジックバックに詰め込み、トイレ掃除や洗濯をさっさと終わらす。


 炭焼き窯に向かい、番小屋に調理器具一式を取り出して置く。

 炭窯の側面の覗穴の石をどけて中を確認。熱気はこもっているが、いきなり着火するほどの温度ではなさそうだ。

 意を決して、側面入り口の石をどかしていく。もちろんマジックバックを使ってです。皮手袋をして入り口のすぐわきに置いて石灰石を触ってみる。表面がぼろぼろと崩れる。石灰石はうまく出来上がったみたいだ。

 窯壁の石を触ってみる。火傷するほどではないがそれなりに熱くなっているのでしばらく放置して温度が下がるのを待つことにした。

 その間に、テポートの確認。石灰水のテポートは完全に毒が抜けている、灰を使った物は両方ともまだまだ時間がかかりそうだ。


 石鉢で先ほど窯から取り出した石灰石を砕きすり潰して生石灰の粉末を作る。やはり中心までは熱が加わっていないようで、全体の半分ぐらいが石灰石のまま。それでもかなりの量がとれた。

 使わなくなった蓋付きの壺に入れて保管しておく。壺と蓋の間には、湿気が入り込まない様に鬼兎オーガラビットの皮の端切れを挟み込む。上に重しを乗せ密着させて、番小屋の隅に保管する。


 次の作業は、ジーンさんに頼まれたバンブ串作り。

 昨日に引き続き解体場でバンブの油抜きをしているビラ爺からバンブを貰い、番小屋で短剣を使って節を目安に30cmほどに輪切りしてから3mmほどに細かく割っていく。


 この短剣の切れ味はやばいよ、スパスパ切れすぎる。


 ササクレを短剣の刃を立てて削り取り、最後に節と反対側を斜めに切って尖らせてバンブ串を作り上げる。作り上げた串はコップ状にしたバンブをケースにしてしまい込む。

 400本ぐらいか? 結構時間がかかったな。

 毒の抜けた皮付きのテポートとバンブ串をジーンさんに届ける。皮を剥いて毒抜きしたテポートはトーラたちのご飯用にする。


 炭窯の温度も落ち着いてきた、いよいよ炭の取り出し作業だ。シーツ大まで育ってしまったあの布を手ぬぐいサイズに切りマスク代わりにして口元を覆う。

 入り口にむしろを敷いて手前から炭から取り出してみる、ちゃんと炭になっていて生焼けの部分も無い。これなら上々だ。

 折れていない物を入り口右側のむしろ、折れ・砕けているのは左側のむしろに置いていく。最初は3:7で折れ・砕けたものが多い。どんどんと奥の炭を取り出していく、さすがに暗いので魔法灯ランタンを点灯。中はまだかなり熱い、額から汗がどんどんと流れ落ちる。駄目だ…ちょっと休憩しよう。


 炭窯から這い出して来ると、子供達とサクラさんそれにトーラとシーマが居た。おれの顔を見て一斉に大笑いする。


「ソ…ソーヤさん、その顔…なんですか~? ぷっ…ぷぷ~っ…」


「キャハハッ!!! ソーヤの顔が、トーラになっているのよ!」


「「「「「「「「 ほんとだー!

  トーラになってる~~!! 」」」」」」」」


 人の顔を見て笑うなんて… 桶に汲んである水を鏡にして見てみる……


 た…確かに… これじゃあトーラじゃないか!


 顔の汗を拭いた時に、煤がついて額から目じり辺りまで汚れが、口元を覆った手ぬぐいもちょうど鼻すじの部分だけ黒く染まって… トーラそっくりの模様に。

 おいトーラ、お前はなんでそんなに得意げな顔しているんだ?


 とりあえず、桶の水で顔を洗い休憩する。


「炭が出来たんですね。これで全部ですか?」


「まだ1/3ぐらいです、中が熱くて長い間作業できないんです。狭いですし、折らないように取り出すのが結構大変で… そうだ、マルコ君使わなくなった木箱ってあるかな? 炭の保管に使いたいんだ。」


「聞いてくる。」


「折れないようにしているんですか、大変ですね。あ…ソーヤさん。それなら、マジックバックに入れて運び出せばいいんじゃないですか?」


 た…確かに。マジックバックにぶち込んで持ちだして、仕分けすれば…


「そ…そうですね… 全く思いつかなかった…」


 流れる汗も落ち着いたので、マジックバックを炭窯に持ち込んで一気に運び出して、むしろの上に取り出す。あっという間に炭の山が出来上がる。


「ソーヤ! 団長が倉庫の空き箱を使っていいって。」


「マルコ君、ありがとう。ちょっと倉庫に行ってくる。」


 倉庫の中を探していると… あった、このサイズの箱でいいか。5箱ぐらいでいいか? 一辺が60cm、高さも60cmの箱を5箱をマジックバックに入れる。あとは底に詰める麦藁だな。3束もあれば足りるか。


 番小屋に戻り、箱を取り出して、刻んだ麦藁を下に敷き詰める。

 仕分けして、箱に詰めるのを子供達が手伝ってくれることになった。だけど…


「手伝ってくれるのは嬉しいけど、手が汚れちゃうよ。使い古しの手袋とかないかな?」


「聞いてくる。」


 そういって今度はガルゴ君が走っていった。


 しばらくすると、麻袋をもって戻ってきた。


「これなら使っていいって、汚れたら捨ててもいいって言ってた。」


 中を見ると、薄くなって穴が開きそうだったり、すでに開いていたりしている皮手袋がいくつも入っていた。


「じゃあ、この中から使えそうなのをはめて手伝ってくれるかな?」


 マルコ君やガルゴ君は少し大きいけどなんとか普通にはめて手伝いを始めた。一方アマル君、ハンザ君や女の子にはさすがに大きいようで選ぶのに苦労をしている。

 これはさすがにお手伝いは無理そうだな… そう思っていたら、アマル君が


「ソーヤ! 麦藁細かく切ってぇ。」


 いいけど、何するの? まぁ、子供たちが何か思いついたらとりあえずやらせてみるのが一番だな。そう思って、麦藁を切り始める。


「アマル君、これくらいでいい?」


「もっと細かく、今の半分くらい。」


 最終的に、こんもりと1cmほどにみじん切りにした麦藁が。

 何をするのかと見ていたら、皮手袋の詰め始め半分ぐらい詰め終わり、おもむろに自分の手にはめた皮手袋ごと突っ込む。


「みんなみてー! これならブカブカしないよ!」


 アマル君考えたな。詰め物をして2重にするのか。確かにブカブカにはならないけど、それだと指先に力が入らなくて掴むの難しいよね。


 そう思っていたが、意外と器用に炭を掴んで仕分けしながら箱に詰めた。それを見た他の子も一斉に同じように始める。 

 あっ! 持った炭を抱え込んだら、服が汚れちゃうよ!

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