第１５３話 レシピの相談
サクラさんが大皿に載った肉を運んでくる。そうだ、ダッシュボーアの肉もあったよね。ジーンさんはテポートの炒め物？ を運んでくる… ジャーマンポテトだよ。
「みんなも知っていると思うが、ソーヤがテポートの毒抜きに成功した。
試食をしたが、全く問題ない、今日はみんなに食べてもらおうと思う。ジーンもいろいろと調理法を考えてくれている、口に合わないなら無理して食べなくてもいい。
その分はおれが食べるからな。・・・・冗談だ。
明日には、ダルベの新居と風呂… 魔道具が無いから沐浴場だが、それも完成する予定だ。子供達のシチリーも出来上がり、炭も作れた。これで
「「「「「「「「「 おおー！ 」」」」」」」」」
「だが、つまらない怪我なんかしないように気を引き締めてくれ。では食事にしよう。」
美味そうな料理を目の前に、団長の演説。お預けを喰らっているトーラの気分が少しだけ理解出来た様な気がする。
取り分けてもらった皿の上の肉を一口頬張る、ダッシュボーアの肉うめぇ！！
フライパンで焼き上げたピタパン風の薄いパンをちぎって、皿に残る肉汁を染みこませて口に放り込む。幸せの味だな。
テポートの方は… 燻製肉とニオラを一緒に炒めたジャーマンポテト風。黒コショウのピリッとした風味がアクセントになり全体の味が引き締まる。燻製肉とニオラの旨味がテポートに染みこんでいて絶品だ。
ジーンさんに、マーヨウで和えたら？ と耳打ちしたらさっそく炊事場でごそごそと… ポテサラならぬテポサラを作って持ってきた。
さっそくピタパンに挟んで一口。 これも幸せの味だよ。
皆、夢中で食べている。
自然と笑顔があふれる。
バルゴさんが酒が飲みたいと溢すまでは…
一部の人を除き、みんな満足しているようだ。
みんなが食事を終え帰宅していく中、ジーンさんとおれ、そして何故かサクラさんが居残ってダッシュボーアの料理の相談を始める。
「今日の夕食に出したダッシュボーアの肉、柔らかかったろ。実はなあの料理かなりいい部分の肉だけを使って作ったんだ。思った以上に筋が多くてな、だいぶ下処理に手間取ってしまった。
ここからが本題だが、すじ肉やくず肉が大量に出てしまってな、この素材を生かして何か作れないかなと思ってな。レシピ集や素材記録に何か載っていないか？」
「ちょっと待ってください。持ってきます。」
日本語のレシピ集と素材記録をテーブルの上に出して、レシピと素材について調べ始める。
サクラさんは、おれが読み上げるのを記録しようと筆記具を取り出し準備万端で待ち構える。
まずはレシピ集から…
「ジーンさん、すじ肉が大量にあるんですよね。ちょっと調べます。
最初は …すじ肉のソルイ汁煮込み丼、甘く味付けして焚き上げたメコーにのせて丼にしたもの。
…すじ肉と根菜の煮物… 白ラディやキャロと煮込むようです。味付けはソルイ汁や塩ですね。
次は…どて煮… すじ肉とニャック、根菜などをミーソで煮込む。
次は… ゼリー寄せ… 長時間すじ肉を煮込んだ茹で汁に味付けして、野菜やほぐした肉なんかを混ぜて、冷やし固める。
素材集の方には、すじ肉は… 下茹でして具材としての利用ですね。
すじ肉を串に刺して、オーデンの具材として中に入れる。そのまま串焼きとも書いてありますね。
味付けしたすじ肉をコーノーミヤーキの具材に出来るとも書いてありますね。
あと、骨も利用法が書いてありますね。
骨も煮込んで、スープの素に使う。ラーゥメンのスープとかに使用できると書いてありますね。こっちも低温で固まるみたいです。」
いくつかレシピを探しだして口頭で伝えたものを、サクラさんが書き留めていく。
ボーア丼… 豚丼！
骨のスープ… 豚骨スープだよな。豚骨ラーメン！！喰いてぇ…
「丼と煮物はなんとなくわかるな、だけどゼリー寄せ？ 聞いたことが無いな。冷やすと固まる… カテンみたいなものか？」
カテン？ 寒天か、確かに似ているけど、固まる温度の違いだっけ？ 素材集に書いていないかな…
「えっと…ありました、カテンは常温で固まりますが、すじ肉や骨から取った物は冷やさないと固まらないみたいです。温度は書いていないので分からないですけど、口の中で溶けるそうです。」
「口の中で溶けるのか、それで細かくした野菜や肉… なんとなく想像できた。面白い料理が出来そうだな。
宴会の時に串焼きもやる予定だから、すじ肉を煮込んでみるか。
あとは骨か… 確かにコッケルなんかは丸ごと煮込んで旨味を引き出すことも有るが… まぁやってみるか。」
やったぜ！ 豚骨ラーメンに一歩近づいた！ 家系の豚骨醤油… 想像しただけでもう…
「それで、ソーヤの相談とは？ どんなことだ？」
「実は、例の血を使ったトーラたちのご飯の件で、テポートを摩りおろす道具や蒸し器とかの調理道具なんかをお借りしたかったのと…
…調理で出てくる屑肉やすじ肉を分けてもらおうと思ったんですけど… 食材で利用する方法が見つかった以上は、そっち優先になりますよね。」
「いや、大丈夫だぞ。調理器具もそうだが、くず肉の方は問題ない。
むしろ使ってくれた方が助かる。あの大物だ、正直なところ食糧庫に保管しきれない。
それもあって加工しておこうかと思ったんだ、何しろ前足一本だけで８０ｋｇ近くあったんだからな。それ以外の肉がまだソーヤの
「よかった。でも、あいつらにたらふく食わせるのはなしです。丸くなったストライプウルフを想像してみて下さいよ。」
「かわいいかも！」
サクラさん… その反応はちょっと…
「それにあいつらも
「ソーヤ… 昼間つまみ食いをした所を、子供達に問い詰められていた人間が偉そうにそれを言うのか？」
「あ…あれは、生産者責任というか、製造者責任というか… ちゃんと確認するために必要だったんです。」
「まぁ、そう言う事にしておくか。あの試食のおかげで、おれも閃いたしな。」
「それと、調理器具はしばらく借りたいので古くなったもので構いません。お願いできますか？」
「ちょうど交換しようと思ってた調理器具があるから、それを使ってくれ。明日の朝食堂の隅に置いておくから。」
「ありがとう、ジーンさん。」
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