第150話 出張2

 翌朝、日の出とともに西門に向かうとちょうどローク・ドージョー食品商会の荷馬車が到着するところだった。


「すみません。皆さんお待たせしました。ローク・ドージョー食品商会のドルナルドです。」


商業組合トレードギルドのベンリルを申します。道中よろしくお願いします。」


「ギダイです。こちらが弟のゼシトです。よろしくお願いします。」


「では早速出発しましょうか。今日はドゥラ村まで行く予定です。途中アンジ村で休憩をします。皆さん乗ってください。」


「え? この量の荷物で4人も乗ったら馬がすぐにへばってしまいますよ。僕と兄貴は走っていきますけど?」


「あー、問題ないです。この仔たちはうちの商会が管理している中で一・二をを争う優秀なウーマですから、それに最新式の荷馬車ですからいろいろとあるんです。いろいろとね。」


 3人が乗り込むとに馬車は朝もやの中を進み始めた。


「ベンリルさんでしたっけ? こんな時期にわざわざ開拓団ラドサに行くなんて仕事とはいえ大変ですね。」


「えぇ、でも楽しみです。実は初めてなんですよ商業組合トレードギルドに勤めてから領都ラドの外に出るのは。」


「その最初の行き先がが開拓団あそこなんて、随分と酔狂ですね。」


「あはははっ、そうかもしれませんねギダイさん。まぁこれも仕事のうちですからね。彼のサインを貰わないと商会が動けませんから。」


「彼? 商会? なんですか? それ。」


「まだ公表されていませんでしたね。開拓団ラドサの方々と辺境伯様で商会を設立することになったんですよ。耳の速いドルナルドさんはもうご存知ですよね。」


「ええ、大まかな事だけですけどね。ソーヤさんが魔道具を貸し出すというアイディアを思いついて、それを商売にしたということぐらいですけど。」


「えぇ? ソーヤが商会を作るの? まずいな…また差を付けられたらあの娘が…」


「どうしたんですか? ゼシトさん。」


「え…いや… すごいなと思って。算術台やソーロバンもすごいけど商会なんて… そんなに年が変わらないから…」


「ゼシトはゼシトで練兵所で自分の実力を磨けばいいんだよ。周りばかり気にしていたら、足下掬われるぞ。とは言っても、ストライプウルフを使役テイムしてたのには驚いたな。」


「「「 ストライプウルフを使役テイム! 」」」


「そうなんだ、騎士団の巡回でクワルにいた時に、開拓団ラドサに戻る途中の彼らに出会ってね、その時に連れてたんだよ、2頭もね。クワルに向かう途中で親が死んでしまった子供のストライプウルフと出会ったと言ってたな。一緒に鬼兎オーガラビットも討伐してきてたよ。あの内臓肉は旨かったなぁ…」


「子供とはいえ、ストライプウルフですよね… 全く相変わらず人を驚かすことばかりしていますね。」


「それより、ギダイさん。その内臓肉の件もっと詳しく教えてください。」


 さすがはローク・ドージョー食品商会の跡取り、操車しながら食いつく視点がそことは。でも私もどんなものか気になりますね。


「そういえば、ローク・ドージョー食品商会は開拓団ラドサまで何を運んでいるんですか? それもソーヤさんがらみですか?」


「正解です。彼が開拓団ラドサでミーソを作りたいと言い出しましてね。ある人を介して連絡があったんです。商会としても、ちょうど追加の生産拠点を探していたのでね。試験生産をする資材・機材を運んでいるんです。」


「ミーソの製造ですか… それはローク・ドージョー食品商会の秘中の秘では?」


「確かに製造方法に秘密はあるんですが、それ以前に製造に適した気候の土地がなかなかなくて、いろいろと調査していた候補の一つが開拓団ラドサだったんですよ。ただ開拓団ラドサは通商ルートから外れすぎていたのでね。流通には不向きすぎてね。」




--------------


 大型七輪の後は火鉢だな。穴を開ける必要もないから簡単だ。粘土の空気をしっかり抜いておけばひび割れも心配ないだろう。

 時々薪を追加しながら火鉢も三つほど作り終わる。粘土も無くなったし、時間がある時にまた回収してこよう。


 テポートを入れた桶も見張り小屋の脇に持ってきた。

 石灰水に漬けた物から… バンブで作ったトングで取り出し、井戸水を入れた桶で洗い鑑定して調べる。

 皮付きの物の外見はかなり緑色が薄くなっているな、共生細菌はまだ残っている。

 皮を剥いた物は… やった! 共生細菌が無くなっている。半日でこの効果なら期待できそうだ。

 次は炭窯の灰を使った奴だな…

 皮の色は薄くはなっているが、まだまだの様だ。剥いた方も共生細菌が残っている。

 最後は炭を焼いた灰を使った物…

 昨日新たに漬け込んでいるのでそんなに変化はないだろうな、うん、やっぱり最初の時と変わらないか。使いまわした分だけ殺菌作用が無くなっている感じかな?


 そういえば毒抜きの終わったテポートをジーンさんに渡して無かった。ちょっと焼いてみようかな?

 BBQコンロを取り出して、炭窯から火のついた薪を拾い出して放り込む。バンブ炭を追加して鉄板を乗せ加熱する。

 鉄板が温まってきたところで、ダッシュボーアの脂身を少しだけ切り取って鉄板に乗せて脂をなじませる。5mmほどに薄切りにしたテポートを乗せてじっくりと焼いていく。しばらく焼いてからひっくり返して反対面も焼く。きつね色のいい焦げ目がついている。

 竹串を刺すと、すっと中まで入る。焼けたようだ… そのまま竹串で持ち上げて一口で…


「あふぅ… はふっほふっ…」


 間違いなくじゃがいもだ。これなら… ビラ爺にも試食してもらおう。

 木皿を取り出して、解体場でバンブの油抜きをしているビラ爺の所に持っていく。


「ビラ爺! これ試食してみて。熱いから気を付けてね。」


「毒抜きしたテポートか、どれ。 ハフゥ ハフ ハフ…

 驚いたの、これがテポートか… 見た目は蔦芋を焼いたものに似ておるが、蔦芋の様な青臭さが無い、普通に美味いのぅ。」


「でしょ。毒抜きの方も、昨日作った石灰水を使ったのはかなり時間も短くなりそうなんだ。毒抜き終わった物をジーンさんに渡してくる。」



「ジーンさん、毒抜きの終わったテポートもってきた。これだけあれば夕食に使えるかな?」


「ちょっと待ってくれ… 

 これか? 今度のは皮が付いたままだけど問題ないんだな。ちょっと切ってみるか… 中も緑色になっている部分が無くなっているな。匂いは… 無いな。これならいろいろ使えそうだ。よし、夕食で試してみるか。

 ソーヤ… お前食ったろ。脂の焼けた匂いがするぞ。どんな食べ方だ?」


 速攻でジーンさんにバレてる。


「ダッシュボーアの脂を引いた鉄板で、5mmぐらいに薄切りにしたのを両面焼いたんだ。」


「まだ、その焼いたやつ残ってるか?」


「まだ残ってるよ。炭焼き窯の所に先に戻ってるね。」

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