第144話 やることリスト

 ジーンさんも仕込みに戻ったので、食堂に置いてある乾燥中の作品を確認していく。ひび割れとかが有ったら、素焼き中に割れちゃうからね。


「よかった… ひび割れは無いな。みんな羨ましいぐらいに器用だよ。」


 丁寧にマジックバックに収納して解体場まで戻ると、ジェス君以外はみな作り終わっていた。

 トーラの置物は適当でいいのに… そんなことを思ってたのがばれたのか、トーラが振向いて首をかしげる。


 簡易窯に行き、子供たちの力作をセットしていく。9個の作品だと流石に隙間が取れない。焼いている最中に割れたら、隣の物まで巻き込んでしまいそうだ。何度か配置をやり直してようやく終わった。置き直している間、子供たちも興味津々で覗き込んでいた。


「明日焼くけど、一日がかりにで火の番をしないといけないんだ。僕も他の仕事があってずっと火の番が出来ないし、みんなもバラーピカの見回りとかもあるけどお願いできるかな?」


「「「「「「「「「 いいよー! 」」」」」」」」」


「じゃあお願いするね。あと今日作ったのは食堂に置ききれないから、夕方になったら自分の家に持って帰って乾かしてくれるかな? 宴会で酔っ払った人たちに壊されちゃうかもしれないからさ。」


「「「「「「「「「 はーい! 」」」」」」」」」


「あれ? そういえばシーマはどこに行った?」


「サクラおねーちゃんが紡ぎ小屋に連れてったよ。」


 まぁ、シーマなら心配ないか。トーラこいつと違って賢いから…

 そんなことを考えつつも、慎重に新しい石で蓋をする。これで明日の火入れの準備は出来た。




 しかし、思いつくままにあれこれ手を出して、やることが多くなりすぎてしまった。さすがに一度整理しないとまずいな…


 マジックバックからノートとえんぴつを取り出し、思いつく限りを書きだし、今後の方針や気になることを書き連ねていく。


 まずは日々の洗い物や洗濯、そしてトイレの掃除。これは問題なくこなせている。

 次に、子供たちの勉強… これも粗方問題ない、数日に一回程度の復習は… サクラさんに任せっきりだよ。

 ソーロバンの使い方もそろそろ教えることが出来るだろう。掛け算も問題ないからすぐに使いこなすんだろうな…。


 その次は、ベルデさんの精力剤の作製。

 体調を整えるのに飲んでもらっている山ジンセンも今の消費量なら問題はない、山ジンセンもトーラが見つけてくれたおかげで材料的には充分にある。

 …問題はあの薬をいつ使うかなんだけど… かなり強力だったからなぁ…


 次は七輪、ジーンさんから大型の七輪を作ってくれと頼まれてた。不器用低DEXでも簡単に作れる方法を模索しないと。型枠を作って粘土を簡単に成形できるかな?


 そして残るのが、バンブの採取と炭づくり、テポートの毒抜き。そしてビラ爺と一緒に西の森の調査…


 バンブの採取は、雪が降らなければ往復2時間もあればそこそこの量を取ってこれる。足りなくなったとしても半日かからずに補充ができる。明日多めに採ってくれば問題ないだろう。


 炭づくり。明日簡易窯で素焼きをしている間に、一度火入れをして問題点を確認しておかないと。問題が無ければ明後日から炭焼き開始だな。だた丸一日拘束されて火の番をしなくてはならない。これが一番の大仕事かな?

 炭焼きは木の切断と詰め込みから着火~完成まで、丸2日…3日か? 窯が大きくなった分時間が読めないな。こればっかりはぶっつけ本番だよな。

 その合間に… 待て待て、炭用の木材も準備しておかないと、マジックバックの中にある分では足りないかもしれない。

 順調にいけば、みんなが風呂を作っている間に終わりそうだけど… 今夜ビラ爺に相談してみるか。

 練炭づくりは当分先になりそうだな、そもそもの炭の量が足りない、細かく砕く方法も考えていないし。


 テポートの毒抜き… 時折様子を見て鑑定で確認するだけだ。これも数日の間に結果は出るだろう、そこれから今後の予定を考えても遅くはない。


 あと何か忘れていないか?

 …そうだ、ダッシュボーアの解体があった、ビラ爺一人でもできるのだろうが、あの大物はさすがに手伝わないとまずいと思う。それとトーラたちの親の毛皮も…

 



--------------

「ラベスさん、商業組合トレードギルドのベンリル氏が面会にお見えになりましタ。小会議室でお待ちいただいてまス。」


「ありがとう、ゼナッタ。すまんがこの決裁の終わった書類を各部署に戻してくれるか、控えの方は文書保管庫に、あと緊急の件があれば呼び出してくれ、ベンリル氏と打ち合わせをしているから。」


「わかりましタ。」



「ラベス様、お忙しいところをお時間を頂き申し訳ありません。先日の商会設立手続き書類を一式お持ちいたしました。ですが規約上、商会長の自署サインを頂く部分が何カ所かありまして…商業組合トレードギルドの上層部に掛け合いましたが、例外は認めないとのことで…」


「たしかに、商業組合トレードギルドが契約に関して例外を認めるわけにはいかないだろう。私も失念していたな… 彼のサインが無いと商会の設立が出来ないと言う事で間違いないな。」


「少し誤解を招く言い方でした。商会の設立登録自体は問題なく終わっておりますので、商会の資産となる魔道具等の購入や資産登録に関しては問題ありません。

 ただサインが無いと商会口座が開設できません、売り買いや貸付けの代金回収などが現金のみの取引しかできないのです。

 開拓団ラドサに送る魔道具はすべて揃って、現在は商業組合トレードギルドが管理しています。口座からの振り替えではなく現金と引き換えとなってしまいますが。」


「わかった、その分の支払いは当初の予定通り辺境伯の出資分からだそう。請求書を提出してもらえればすぐに処理する。魔道具の輸送手配はこれからなのかな?」


「ではこの請求書をお納めください。輸送手配は魔道具購入代金の支払いが確認を取れてからになります。」


「三日後、ローク・ドージョー食品商会からも開拓団ラドサに向けて荷物が送られることになっている。その荷物と一緒に送ることができないか? 実はローク・ドージョー食品商会からは一緒に載せて輸送する了解を得ているのだが。もちろんあなたの同行もお願いしてある。」


「願っても無いことです。再生の日リボーンの前のこの時期は、荷馬車の手配を取るのが難しく探そうとしていたところです。」


「では、早速支払いを済ませてしまおう。二日後にローク・ドージョー食品商会から受け取りに行ってもらうように話をしておく。」


「商会登録の書類については、開拓団ラドサから戻った後に改めてお持ちいたします。」


 ベンリルは管理局から商業組合トレードギルドに戻っていった。


「さて、さっさと支払調書を作ってしまうか。時間が許せば私も開拓団ラドサに行ってみたいものだな。」

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