第100話 テイマー?

 片付けも終わり家に入る。


 サクラさんは村長の子供たちにかなり気に入られてしまったようで、村長の家に遊びに行っているそうだ。


 ジーンさんは今日使った道具の手入れをしていてまだ戻ってこない。


 おれはさっそくテーブルにサーブロさんの材料・素材の記録を引っ張り出し、鬼兎オーガラビットの内臓のページを開いて、こちらの言葉で紙に書き写していく。

 今日の下処理は正直、をしているようなものだからね。誰にでも出来るようにしっかりと書き写しておかないと。


 おれが鑑定で見たことも追加で書いておこう。滋養強壮に効果のある肝臓と心臓。毒素排出効果のある腎臓、精力増強効果のある精巣きゃんたま。これは開拓団ラドサでも使える知識だ。ちゃんと加工しておけばよい値段で買い取ってもらえるはずだ。


 一通り書き写すと、ジーンさんが戻ってきた。明日以降の予定を確認しておこう。


「ジーンさん、今後の予定はどうなりますか? 追跡者も排除できましたし…」


「明日一日はクワルに滞在しましょう。ナジルからの連絡も来るでしょうし。その報告を確認してから出発ですね。」


「わかりました。荷物ですけど、このままマジックバックに保管して置いて構いませんか? 先ほどみたいに他に必要なものがあれば出しておきますけど。」


「私の方は問題無いですね、お嬢には聞いてみないとわかりませんが。」


 サクラさんが戻ってきたので、荷物の件を聞いたけど問題ない様だった。


「ソーヤさん、仔狼あのこたちなんですけど、首輪とかありませんか? 縄で縛るだけなのは少し可哀そうなんですけど。」


「明日クワルの人たちに聞いてみましょう。この村なら革製品を作っている方も居るかもしれませんし。」


 そんな話をして就寝時間になった。




 --------------

 翌朝は昨日走り続けた疲れせいなのか寝坊をしてしまった。もうすでに朝食の準備が出来ていた。


「おはようございます、寝坊しました。」


「おはようございます、昨日かなり長い距離を走られたのですから… もう少し寝て頂いてても良かったんですよ。仔狼あのこたちのお世話は私がしても良かったんですから。」


 サクラさん、その最後の一言が本音ですよね。ともあれ、朝食だ。


「いただきます。美味しい。これ中に挟んであるのは鬼兎オーガラビットのジンジャ焼きですか? 開拓団ラドサのみんなにも食べさせてあげたいな。そういえば、二人は向こうでの仕事はどうするのですか?」


領都ラドを発つ前にお嬢と話をして決めたんですけど、しばらくは開拓団ラドサの料理番をしようかと。皆さんにもお手伝いはして頂きますけど。」


「よっしゃぁ! 毎日美味しい料理が食べれる!!」


「ソーヤさん、随分うれしそうですね。」


 食事が終わると、仔狼のご飯の時間。昨日残さずにちゃんと食べてたから、あの量を半分にして朝と夜に分けてあたえるぐらいでいいかな? 台所でレバーとハツを切り分けてボウルに入れる。


 玄関を出ると。すでに尻尾がちぎれんばかりの勢い。怪我していた方もゆるゆると尻尾を振っている。良かった。立ち上がれるなら大丈夫そうだな。

 一喝して姿勢を正させる。二頭の前にボウルを置く。 


「まだだぞ! まだだぞ! よし!」


 相変わらず全く警戒もしないで顔を突っ込む、もう一頭はゆっくりと味わうように食べている。こいつらの名前も考えてやらないとな。

 水を入れたボウルもそれぞれの前に置いておく。


「サクラさん、村長の家に寄って革製品の加工をしている人がいないか聞いてみましょうか。」





「おはようございます。ソーヤです。村長さんおられますか?」


「おはようございます。ソーヤさん。昨日はごちそうさまでした。今日はどういったご用件で?」


「これどうぞ、内臓の下処理をまとめたものです。」


「ありがとうございます、もうご用意していただいたんですか。さっそくこの村でも内臓料理を試してみます。」


「あと、お伺いしたいのですけど、革製品の加工をしている方はこの村におられますか? あの仔狼たちの首輪を作ってもらいたいのですけど。」


「革製品…首輪ですか… 革を扱っている防具職人ならいますが… 少々お待ちを、デニー!ちょっと来なさい! お客さんをザレイさんのお店までご案内しなさい。」


「えぇ~…めんどくさいぃ… サ… サクラおねぇちゃん! こっちです!で、あんたはだれぇ?」


「こら!デニー! 昨日ごちそうになったじゃないか! すみません。ソーヤさん、サクラさん。」


 分かりやすい反応だな。気にしませんよ。あと、デニー君。威圧するならもう少し鍛えなさい。


「サクラおねぇちゃん、こっちこっちー!」


 さっさとサクラさんの手を引っ張って行ってしまう。


「すみません、ソーヤさん。」


「あはははっ…」


 二人を追いかけて、村の入り口近くまで行く。

 お店には防具だけじゃなくて武器も置いてある、訓練用の木剣もあった。


「ザレイさん! お客さん連れてきた!」


「デニーの坊主か、珍しいな。いつもと違って、そんなに正しく入ってくるなんて。」


「しー! しー!」


 顔の前で指を一本立てて必死に… サクラさんの前で格好つけたいんだねぇ。


 それはともかく。


「すみません、開拓団ラドサのソーヤと言います。先ほど村長から紹介されて伺いました。実は革であるものを作っていただきたいのです。」


「おぉ! あんたかぁ、昨日いきなり村の中にストライプウルフと一緒に入ってきた時は、一体何事かと思ったぞ。でも開拓団ラドサにテイマーがいたなんて初耳だったが…」


「テイマー… ではないんですけど、仔狼あのこたちの首輪作っていただきたいんです、首周りはこの縄の長さです。」


仔狼あのこって… 一頭だけじゃなかったのか?」


「実はもう一頭いるんです。怪我をしてたので昨日は抱きかかえていました。」


「そうか、じゃぁもう一本作らないとな。昨日見かけた時にそうなるんじゃないかと思って一本は造ってあったんだが、まさか二頭とは… 昼前までに作っておくから取りに来てくれ。こいつが首輪と、使役獣テイムプレート。二頭分で銀貨一枚だ。

 一応決まりだから、登録はしておいてくれ。騎士団に控えた番号と名前を書いた書類を出せば正式登録が出来るはずだ。ちょうど騎士団もいるし、あとで聞いてみな。」


「ありがとうございます。手続きまで教えていただいて助かりました。」


「あぁ、あとでもう一頭分取りに来てくれ。」


「え? にいちゃん、あのストライプウルフのあるじなの?」


「行きがかり上、そうことになったけどな。」


「昨日の鬼兎オーガラビットはストライプウルフが倒したの?」


鬼兎オーガラビットはおれが仕留めたよ。」


「すげぇー! ひょろくて、ぼーっとした兄ちゃんだと思ってたのに。」


 なんだかいきなり尊敬の眼差しに変わったぞ、最後の言葉は余計だがな。




 --------------

 なんとか 本篇 100話 まで継続してきました。

 この物語を読んで頂いている皆さまのおかげです。


 これからもPV・いいねの増加を 燃料はげみ にさせていただきます。


 まだまだ書き続けます。...φ(ÒㅅÓ;*)

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