第96話 再会
そう言えばこのシャツ…熱さ寒さを防ぎ、多少なら呪いや毒なども防ぐことが可能…そう言ってた気がするけど、もしかしてこれって…
”鑑定!”
[長袖の上着]▽
△名称 アルトゥの服▽:耐熱性 〇:耐寒性 〇:防御力向上 ▲:防毒性 ▲:耐呪性 ▲:サイズ自動調整
△【
おれに肉体的ダメージは無かったが、精神的ダメージが加わった。転生神様… また説明を
ともかく噛まれても
血と土で汚れた毛皮をなでていく。汚れが落ちて艶のある毛皮になっていく。噛付いているこいつもおれが何をしているのか気が付いたみたい。おれを噛むのをやめて離れると母狼の鼻先に行って、キューンキューンと鳴いている。
とりあえずきれいになった。もう一頭の仔狼はだいぶ出血したようでかなり弱っている。傷口に水をかけ、たわしで軽く汚れを落としてやる。
「人用の薬は効くのかな? 変な材料は使っていないはずだから大丈夫だろう、このまま放置していたら確実に死んでしまうだろうし。」
「母狼の死体は説明の為、持っていくとして…問題はこいつらだ。
もともと野生でも今のこの状況で放置したら
母狼の死体を
ヒャン!!
仔狼が驚き後方に飛び跳ねる。そして母狼をきょろきょろと探している。
「言葉がわかるとは思わないが、付いてくるなら付いてこい。」
「行くぞ!」
そう掛け声をかけ、おれは走り出した。母狼の匂いを追いかけて、テトテトと仔狼が付いてくる。
「まったく… おなかに怪我したストライプウルフ、背中にスライム、
すぐに林の中の野営地に到着する。幸いなことに誰もいない、見られる心配は無いな。
グゥゥゥ~~……
そういえば、朝飯も食ってなかった。
ヘッヘッヘッヘッ…
おい! 仔狼! よだれ垂らしながら見るんじゃねぇ! 喰いづらいだろ!
ヘッヘッヘッヘッ…
「おい… お前! 人間から餌をもらっちまったら、もう野生には戻れなくなるんだぞ!」
ヘッヘッヘッヘッ…
「あ~~っ! ったくもう! しょうがねぇ!!」
最悪の場合…人を害するようなら、おれの手でこいつの命を刈り取るしかない。
「ダメダ! 肉はもうやらん! 行くぞ!」
おれと一頭はクワル村に向かってまた走り出した。
街道の右脇が少し開けていて見通しが良くなっている。反対側はススキの藪になっている。
「これで水場があったら、
この何気ない一言でフラグを立ててしまったようだ。
ススキの藪の脇に来ると、ガサガサと音がして
一匹だけじゃないよな、あと二匹か? 仔狼はいきなり現れた
茂みからさらに二匹現れた。角の大きさからすると最初のやつがオス、あとから出てきたのがメスか… 視線を外さない様に後ろに下がり、抱えていた仔狼をビビリ君の脇に下ろす。
一歩前に出て
「さぁ!どいつからだ!」
声に出して、己を鼓舞する。
ゆっくりと
手前のメスの
そのまますれ違いざまに首筋にナイフで切りつける。致命傷、血を流しながら倒れると痙攣する。
すぐに後ろに向き直る。左側の
残ったのはオス。そう思っていたら、斜め後ろの仔狼の唸り声が聞こえた。振り向くともう一匹藪から出てきた。四匹いたのかよ…
手早く
跳びかかりの予備動作を始めている。間に合うか?
怪我をしている仔狼の前で守るように唸る仔狼。
これで残りはあのオスだけ。振り向いた瞬間に飛び込んできやがった。態勢を崩しながら何とか避け。のっそりと方向転換している間に首筋にナイフを叩き込む。
よし、さっさと回収して、移動だ。
仔狼をもう一度抱えて、
「よく逃げなかったな。えらいぞ!」
そう言って仔狼の頭を撫でる。
ん? 今度は噛付かないんだな。
「行くぞ!」
キャン!
…途中何度か仔狼に水を飲ませる。その時に身体を わしゃわしゃ とするが噛付ことも無く。腹を見せて服従状態だ。
なんとか夕方前にクワル村の入り口が見えるところまできた。あれ以降人影は見かけていない。追跡者はあれで終わりみたいだ。
入り口近くに何人かの人影が見える。あれ? もしかして…
「ロイージさ~~ん!」
手を振りながら近づいていくと。おれを見て次の瞬間大声で叫ぶ。
「ソーヤ! 早く逃げろ!」
「え? この村… やばいの?」
立ち止まると、今度は
「立ち止まるな! 早くこっちにこい!!」
なんだよ、逃げろって言ったり、早く来いって言ったりさ…
「ソーヤ!! 早くしろ! 後ろにストライプウルフだ!!」
そう言う事か… 確かに見ようによってはストライプウルフに追いかけまわされているように見えるよなぁ。
「ロイージさ~~ん! こいつなら大丈夫ですよ!」
ゆっくりとロイージさんの目の前まで行くと、仔狼の頭と喉をわしゃわしゃとしてやると、仔狼はごろりと横になってお腹を見せて、ヒャンヒャンと鳴く。
「仔狼とは言え、野生のストライプウルフを手なずけるなんて…」
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